第三十八話 巨大獣ギョガゴゴ 崩れ行く奇岩島 2
その夜、島では島民全員が集まり盛大な宴が催される事になった。
おタケさんもマグネファルコンの貯蔵庫から材料を提供し、一緒になって料理を作った。
どうやら何名かの島の女性は翻訳機を頼りにおタケさんのレシピを教えてもらっているようだ。
男達は漁をしてきた魚を、新しくできた元大型ロボット基地になる予定だった加工工場に運び、その魚等を改良されて無害化した元ブレインロイドの残ったロボット達が加工している。
――まあ原作の悲惨なラストに比べると全員が助かって本当に良かったと言える。――
本来の三十七話のラストシーンでは、少し斜めに突き刺さったシャールケンソードが墓標のようになり、夕方の誰もいなくなった島をガッダインチームとマグネコンドルのクルー達が見つめていた。
その後夜になり、激しい雨が降り注いだ。
それは亡くなっていった者達の涙雨だったのだろう……。
マグネコンドルは夜の誰もいなくなった島を後にして飛び去り、島にはシャールケンソードの墓標だけが残るラストシーンで終わった。
この雨が降り注ぐ剣の墓標は、後の高畑修輔監督による――機人界バリアン――に出てくる元将軍で主人公の育ての親であるランベルの剣が突き刺さったエンディングが有名だが、このガッダイン5の三十七話の絵コンテは彼が作っていたので、このシーンを参考にあのエンディングを作ったのかもしれない……。
確かに神回の名シーンなのだが、何というか……皆殺しの浜野監督が帰ってきたと当時のアニメ雑誌の読者投稿コーナーで話題になっていたようだ。
当時子供だった俺は成人後にこの頃のアニメ雑誌を古本屋やフリマで見たので、当時の読者コーナーの熱っぷりまでは分からないが、監督への女性視聴者達のシャールケンを殺した彼への恨みはかなり根深いものだったらしい……。
だが、この時間軸では誰一人死ななかった上、雨も全く降らなそうだ。
どうやらあのエルベΩ1のセイレーンストリームの気流が雲の流れを変え、天気が変わってしまったらしい。
まああの大嵐は流石に天候の変更は無理だったが、乱気流の動きが変わった事で雨はどこかに消えたらしい。
――もっとオカルトな事を言うと、あの雨は本当に全滅した島民達の涙雨だったので、誰一人死んでいないから雨一滴もこの宴に合わせて降らないというべきなのだろうか。――
まあいろいろ考えても仕方ない。
今はせっかく用意してくれている宴を楽しまなくては。
マーヤちゃんとダンダルは島民達と何かの歌を歌っているが、あの超破壊ボイスを聞いてもこの住民達は苦しむどころか楽しんでいるようだ。
所変われば……ってヤツなのかな。
ようやく起き上がってきた龍也とシャールケンはお互い背を向けたまま会話をしようとはしない。
どちらもが意地を張っているのだろう。
「アンタ達っ、何子供みたいなことやってんのっ!? 今はいがみ合ってる時じゃないでしょっ」
「そうなのだ、お前達。我らの敵はあのミシマなのだ、今は争っている場合では無いのだ!」
マジで千草とアクラデスが姉妹にしか見えん。
だが、この事で一番驚いていたのは……シャールケンだった。
「だ、誰だお前!?」
「我はアクラデスなのだ。お前が失態をやらかして代わりに地球方面指令をやっておったのだ」
「だ、だが……お前は男では? ダメだ、まるでわけがわからん。オレが混乱しているのか??」
まあいきなりこの状況を受け入れろと言われてもそりゃあすぐには受け入れられないだろう。
シャールケンが離脱していた間の事だが、あまりにも情報ソースが多すぎる。
三島長官の中のブキミーダ、そして俺を本物の三島長官との誤認、更にアクラデスの女体化、彼の中では何が何だか訳が分からないだろう。
仕方ない、後でゆっくりと彼に個室で今の状況を説明するとするか……。




