第三十七話 巨大獣ゾーゲン シャールケン最後の戦い 6
絶体絶命の大ピンチ!
巨大獣ゾーゲンの両手の剣が島民達に振り下ろされようとしていた!
――その時、巨大獣ジャガジャガが高速スピンをし、巨大獣ゾーゲンを吹っ飛ばした。
ドゴォオオン!!
激しい音を立て、建設途中の基地の壁が崩れた。
「な、何だと!? ワシの新しい基地が!」
三島長官の姿のブキミーダは突如の乱入者に狼狽えていた。
「う、こ……これは」
「シャールケン様、お久しぶりでございます。さあ、ここは危険ですからすぐに逃げてください!」
「そうはさせんぞ、シャールケン。この娘の命が惜しければ、こちらに来るんだ!」
「くっ……」
あのシャールケンが素直に三島長官の姿のブキミーダの命令に従っている。
そして彼はグレートシャールケンの前に歩いた。
「さあ、乗れ。そしてキサマがあの巨大獣を倒すのだ!」
「くそっ……オレがこんな事で……」
シャールケンは悔しそうな表情で、グレートシャールケンのコクピットに乗り込んだ。
そしてグレートシャールケンが動き出した。
「ケカカカカカカッ! さあ、良いものを見せてやろう、これを見るがいい!!」
三島長官の姿のブキミーダが何かの装置を取り出した。
――あれは! まさかっ!?――
アイツの持っていた装置は……デビル回路の発動マシーン!
そうか、グレートシャールケンも俺がアンチシステムを組み込む前のロボットだ。
操ろうと思えばあのデビル回路の電波で自由に操る事が出来る。
動き出したグレートシャールケンは、シャールケンソードを構え、島民目掛けて剣を振り下ろした!
「な、何故だ? オレが動かしていないのに……何故勝手に動く!?」
「ケカカカカカッ! 驚いたか。これはキサマへの見せしめだ!」
「どういう事だ!」
「簡単な事よ、キサマの大事に思うものを踏みにじってやるだけのことよ」
どうやら三島長官の姿のブキミーダの狙いは、この島の住人を苦しめてシャールケンを追い詰める事のようだ。
「何故だ! 自動で動くならオレが乗る必要は無いだろう!」
「キサマにはそのコクピットの中で何も出来ずに大事なモノ達がメチャクチャにされる無力感と絶望を味わせたかったのだよ!」
「何だと! 何故オレをそんなに憎むのだ!?」
三島長官の姿のブキミーダがおぞましい声で答えた。
「何故……だと、キサマにわかるか……! いつもいつもバカにされて見下された者の気持ちが、なまじ天才なんぞに生まれた為に他人と比べられ、ある面では評価されても他の面が一般人、それも下手すれば召使いや学の無い無能以下だと言われる屈辱……生まれながらに何もかもに恵まれたキサマには想像すらつくまい!!」
そうか、ブキミーダが歪んでしまったのはなまじ頭が良いのに常識やモラル、一般的な社会での生きる術を持たない悲しい天才のコンプレックスだったのか。
また、見た目的な嫌悪感もそれに輪をかけてしまったのだろう。
だが……だからと言って同情するわけでも許すわけでもない。
アイツは大量殺戮を喜んで行っていた狂人だ。
今の時間軸では俺がほぼ阻止しているから全て未然に防げているが、本来の物語では、アイツのせいで何万人、何十万人の人間が犠牲になった事やら。
だからアイツだけは生かしておくわけにはいかない。
今はまだ大きな被害が出ていないが、この後アイツを生かしておくと、どれだけの大惨事が起きるのかがまるで想像がつかないからだ。
「フ、フハハハハ。笑わせるな! 何が天才の苦悩だ! 苦労しているのが自分だけだと思っているのか!」
「何だと!? キサマに何が分かる!」
「今になってオレもキサマの正体が分かったぞ、どうやって地球人に成りすましたかは知らんが、ブキミーダ、キサマの仕業だったのだな!」
どうやらシャールケンは、方法はわからずとも……今、三島長官の中にいるのが本物のブキミーダだと見抜いたようだ。




