第三十六話 巨大獣バゲゲゾ 追い詰められたブキミーダ 10
代々木博士の説明は三島長官の豹変ぶりを伝えるのに一番わかりやすい例えだった。
まああの中に処刑されたはずの本物のブキミーダが居るなんてオカルト話、誰に言って信じるやら……。
この話で三島長官が現在デスカンダル皇帝の操り人形だという事は説明できる。
むしろそちらの方が話的にはあり得る流れだ。
「それで、代々木博士の俺に頼みたい事ってのは?」
「おお、そうじゃったそうじゃった。実は……海底作業に適したロボットを用意してもらえんかと思ってな。マグネコンドルは試運転までは出来ておるが、まだ海中に沈んだノズルの外側の部分の調整が出来ておらんので、そこをどうにかしたいと思ってるのじゃぞい」
なるほど、長年海に沈んでいただけに、マグネコンドルは貝やフジツボ、海藻に赤錆などの付着物が多く付いているという事か。
それを人的にやるには手間も暇もかかるし人件費も必要になる。
そこを海底作業に特化した巨大獣で一気にやってしまえばロケットノズル部分の掃除、調整が簡単にできるというわけだな。
「わかりました、材料は習志野駐屯地や立川駐屯地からの取り返した資材をお借りしますよ」
俺は防衛軍の資材を使い、巨大獣バゲゲゾを完成させた。
巨大獣バゲゲゾは原作通りに海中に特化した巨大獣だったので、この機体を使いロケットノズルを掃除したら人間が一か月以上かかる作業を一日で終わらせる事が出来た。
「よし、これでマグネコンドルの試運転が可能になったぞい!」
ロケットノズル部分の調整の終わった代々木博士が北原未来要塞ベースの全職員達に緊急警報を鳴らした。
「総員に告ぐ、総員に告ぐ、これより北原未来要塞ベースは呼称を変更、超大型宇宙船マグネコンドルと名称を変更する。また、基地の外にいる職員は直ちに全員近い場所の入り口から内部に搭乗するように」
北原未来要塞ベース改め、マグネコンドルの中のスタッフに向け、代々木博士が緊急放送を流した。
基地内部の様子が慌ただしくなり、各員が全員マグネコンドルの試運転の体勢に入った。
確か……原作では勝手口を開けたままにしていておタケさんが外に放り出されそうになってガッダインチーム全員が手を引っ張って助けるんだったな。
案の定おタケさんは外にゴミ捨てに行っていて、戻って来た時に勝手口を閉めずにそのまま仕事を続けようとしている。
このままでは浮上したマグネコンドルからおタケさんが振り落とされてしまう!
だが俺は今代々木博士と一緒にマグネコンドルの艦橋に居る。
「マーヤちゃん、すぐに食堂に向かってくれ、緊急事態だ!」
「了解です! ご主人様」
マーヤちゃんはダッシュで食堂の方向に向かった。
今のマーヤちゃんはフロートタイプの下半身ではなく、普通の足を取り付けた形なのであの足の速さならあっという間に食堂に到着するだろう。
「ブキミーダさん、それでは試運転を開始しますぞい」
「わかりました、代々木博士」
「こちらも準備は出来ている」
艦橋部には俺、代々木博士、それにベルクシュタイン博士の三人が居る。
これだけ科学者が居れば何か不具合があったとしてもすぐに対応可能だ。
「超電磁エンジン点火! タービン回転開始じゃぞい!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
代々木博士がスイッチを入れると、基地全体が大きく振動を始めた。
ついに、大型宇宙船マグネコンドルが浮上する時だ。
原作でもこのシーンは迫力があったが、実際中に乗っているとそれとはまるで迫力が別物だ!
「超大型宇宙船・マグネコンドル! 浮上じゃぞいっ!!」
グゴォオオオオオンン!
ついに、二キロ近くの巨大基地、マグネコンドルが浮上した!
その姿は、まさに空を飛ぶ白銀のコンドルと言うのに相応しい姿だった。
「成功じゃぞい! 超大型宇宙船マグネコンドル、浮上成功じゃぞい!!」




