第三十五話 巨大獣ダボボズ 男三島の心意気 9
巨大頭脳ブレイン総統は俺からの連絡を待っていたらしい。
――実はあの後セキュリティロックを全部のブレイン軍団基地にかけたのだが、一か所どうも出来ない場所があってね、まさか一度壊滅した基地をそのまま使うとは誰も想定するまい。――
一度壊滅した基地? ひょっとしてあの館山海底基地の事か!
なるほど、そこからなら習志野駐屯地もそう遠くない。
そしてあの千葉エリアなら、誘致合戦で工事中だったはずが巨大獣の襲撃でテーマパーク建設計画の止まったままの沼もそう遠くはない……。
――盲点だった! まさか今までの移動範囲内でブキミーダが自分の為の秘密基地を用意しているとは!
これだと確かにどこからアイツが攻めてくるのか、本編を見ていた俺ですら想定外だ。
つまり、我孫子、柏、習志野、木更津、館山、勝浦といった千葉県の辺りは俺の居た時代でこそショッピングモールがあちこちにあり、観光に適した場所だが、70年代中盤はどこに行くにも不便で、また開発もほとんど進んでいない未開拓地がほとんどだった。
ココならいくら巨大獣でもブレイン軍団の破壊ロボットでも置き放題の作り放題。
そして辺りに音が漏れたりレーダーで感知されるといった事も無い。
また、船橋あたりは第二次世界大戦時には今で言う三沢基地のようなレーダー基地だったのでここの辺りを拠点にすれば関東近辺なら何処にでも攻め込む事が出来る。
まさかこの辺りを拠点にしているとは……、俺はむしろ佐山貯水池だけでなく、栃木や群馬、または東京の奥多摩近辺にアイツのどこの勢力にも属さない秘密基地があると思っていたが……まさか壊滅した館山や我孫子近辺の沼地がアイツの基地だったとは。
今、ウルフ博士は巨大頭脳ブレイン総統に相当お仕置きされたらしく(シャレではないが)今は軟禁状態で秩父の本拠地から外に出れないようだ。
つまり、三島長官の姿のブキミーダは文字通り孤立無援で、手下としてはブレインロイドを改造したアンドロイドかロボットくらいしかいないというわけだ。
それなので大規模な強奪や破壊作戦は実行できないはず。
しかしまさか習志野駐屯地の倉庫を丸々一つ分奪っていくとは流石に想定外だ。
それだけの資源があれば十分偽ガッダイン5を作る事が出来る。
これは早く代々木博士に伝えなくては!
「代々木博士、困った事になりましたね。三島長官の姿のアイツが習志野駐屯地の資源を全部ゴッソリ持って行ってしまったという事は、それを使えば偽ガッダイン5を作る事が十分可能だという事です」
「うーむ、まさかあの基地が狙われるとは……あそこは防衛軍でもトップシークレットのガッダイン5の為の予備パーツや弾薬を積み込んでた場所じゃからのう。困ったもんじゃぞい……」
そんな代々木博士や俺の想定していた悪い事が実際に起きてしまった!
「代々木博士、お電話が入っております」
「何じゃぞい、儂が代々木ですが」
「あー、代々木博士、わっしです。荒川ですー」
どうやら電話先の人物は荒川長官だったようだ。
「一体どうしましたぞい?」
「うー、わっしも訳がわからんのですが、街でガッダイン5が暴れていると大勢の市民から通報がありましてなー、今ガッダイン5はどうなっているのか確認したかったのですー」
やられた! 既にブキミーダは偽ガッダイン5を作り、街で破壊活動を始めたらしい。
「ミザーリン、今すぐに街に向かって避難指示を出してくれないか?」
「わかりましたわ!」
とりあえず彼女には青木大尉として街の避難誘導指示をしてもらおう。
「ガッダインチームはまだ今待機状態ですぞい。今そこで暴れているのは偽物と考えて間違いありませんぞい!」
「うー、わかりました。とにかく後の事は頼みましたよー」
この荒川長官という人物、マジで頼りないな……。




