第三十五話 巨大獣ダボボズ 男三島の心意気 5
――珍しいな、君からわたしにコンタクトを取ろうとは――
今俺が会話している相手は巨大頭脳ブレイン総統。
鉄巨人イチナナの最強の敵である地球最大の巨大コンピューターだ
以前俺にコンタクトを取ってきたのはブレイン総統の方だった。
その際に、俺に重粒子制御装置の設計図を渡してくれたのもこのブレイン総統だった。
彼(?)としては俺を地球掌握の仲間にスカウトしたかったのだろう。
だがそれ以降俺は彼の手下であるウルフ博士をガッダインチームと協力して何度も返り討ちにした。
「ブレイン総統、貴方に訪ねたい事が有ります」
――わたしの事は、マスター・ブレインと呼んでくれたまえ。それで、聞きたい事とはなにかね? ミスター・ブキミーダ。――
コイツ、相変わらず慇懃無礼だな。
まあ原作でもそんな態度だったが……。
「はい、実は……ウルフ博士と三島元防衛長官の事なんですが……」
俺の憶測だとあの二人は間違いなくブレイン総統の命令ではなく独断で動いてるはずだ。
だから俺が聞きたかったのはあの数々の破壊作戦が本当にブレイン総統の指示によるものだったのか、それともウルフ博士や三島の中のブキミーダによる怨恨だったのか……それを確認したかったのだ。
――そうか、実はわたしもあの行動がバグに見えて仕方が無いのだよ。まさか私の命令を無視してあんな行動をとるとはね。ウルフ君とミシマにはそろそろ消えてもらおうかとも考えていた所だ――
やはり俺の読み通りだった。
ブレイン総統はウルフ博士や三島の姿のブキミーダに手をこまねいているようだ。
――まあ、ブレイン総統に手は無いのだが――
……冗談はさておき、ブレイン総統は当面はオレ達の敵にはならなそうだが、その心境だけは知っておいた方が良さそうだ。
「消えてもらうって……彼等は貴方の部下ではないのですか?」
――確かにわたしはミスター・サクラ、そしてウルフ君たちによって作られた地球環境維持の為の大型計算コンピューターだ。だが、そのわたしが計算したところ、どうも彼等のやり方では地球環境の汚染や破壊の方が目立つようになってきた。特に核を使おうというのは許せない事だったね。――
この核とは、破滅ミサイル水爆砲の事だろう。
地球環境保全の為のコンピューターであるブレイン総統としては、地球環境汚染をしながら作戦を進める彼等がそろそろ邪魔ものになってきたようだ。
――ミスター・ブキミーダ。わたしは君の事を高く評価している。君のやり方は賢く、また地球環境を出来る限り汚さないように犠牲者を少なくしようとしているようだ。そこにわたしは疑問を感じた。何故、縁もゆかりもない地球を侵略するのに君はそんなに相手を慮ろうとするのかね?――
確かに侵略者のやり方にしては回りくどいし、正攻法に見えない。
そりゃあブレイン総統が想定外で混乱するのもわかるが、だからといって本当のことを言っても信じるわけが無い。
まさか――俺は転生者の元地球人だから宇宙人になっても地球を大事にしたい――なんてことを言って信じられるとはとても思えない。
だから俺はこういう話に持って行く事にした。
「俺達が地球を侵略しようとしている理由は星の、種の生存の為です。ダバール星は人工太陽の暴走により、あと数か月も持たず滅亡してしまいます。その為、地球を侵略する事で新たな移住先を見つけ、ダバール星人の新たな故郷としようと考えているのです」
――成程、それだと地球環境を傷つけずに作戦を実行する必要があるわけか。それなら納得だ――
どうやら巨大頭脳ブレイン総統は俺の言う事を理解してくれたようだ。
――つまりわたしは、君達ダバール星人をただの地球に侵略にきた敵だと見ていたが、そうではなく母星を失いそうな民がやむを得ない事情で侵略をするしかなかった、と考えて良いのかね?――
巨大頭脳ブレインが理解してくれたとすれば……この流れだと、俺達はブレイン軍団と休戦できそうだな。




