第三十五話 巨大獣ダボボズ 男三島の心意気 4
とにかく三島長官の中のブキミーダをどうにかしない事には、防衛軍のセキュリティや資源をメチャクチャにされてしまう!
アイツはまだ地方の基地とかなら長官権限のセキュリティが書き換わっていない縦割りだと見抜いてゴッソリと行き掛けの駄賃を奪っていきかねない!
「とにかく荒川長官に連絡してみるぞい。まあこの時間でも通じるとは思うが……」
今は夕方の18時だ。
まあ普通の公務員ならもう退勤後の時間だが、特別国家公務員の防衛軍なら連絡はつくはず。
それも国防軍でも特別扱いの代々木博士なら確実に電話も通じるだろう。
「儂は代々木博士じゃぞい。緊急で荒川長官に電話を繋いでほしい、至急じゃぞい!」
「わ、わかりました。代々木博士ですね、少々お待ちください」
保留音の後、電話は荒川新長官につながった。
どうやらもう防衛庁でも電話のデジタル化は進んでいるようだ。
「あー、わっしが荒川です。代々木博士、どういった御用でしょうかー?」
「荒川長官、いきなりで申し訳ないが、全国の防衛軍基地に緊急事態の戒厳令を敷いてもらえますか?」
「うー、どういう事でしょうか? 話の流れがイマイチよく見えないんですがー」
別にこの荒川長官、知恵遅れとか無能というわけでは無い。
この喋り方は単に彼の口癖というところだろう。
「更迭された三島長官、彼がテロリスト化してしまっておるのじゃぞい! その上で彼はセキュリティの権限を持ったままなので泥棒に錠前を持たせたのと同じ状態になっておるのじゃぞい!」
「あー、それは一大事だー。わかった、明日には全国の防衛隊基地に三島元長官のパスワードを書き換えるように伝えておくー、それで良いですかー?」
このマイペース、代々木博士がイラついてきている。
「それでは間に合わんぞい! ヤツは今晩にもガッダインの予備パーツを強奪するかもしれんのじゃぞいっ!」
「うー、わかったー。どうにか急ぐように伝えておきましょうー」
不安だ、平時になら有能な穏健派長官で通じるかもしれないが、この戦闘時にあの荒川長官はとても任せるわけにはいかない。
「長官!! 副長官の番号を教えてもらえますか、そちらにも動いてもらうとにしますぞい!」
「あー、わかった。岳田大佐ねー、わかったー。それではそちらにも繋ぎましょうー」
マイペースの荒川長官に任せるぐらいなら、まだ人間機関室と呼ばれている岳田副長官の方がまだ話が通じそうだ。
荒川長官は岳田大佐の番号を伝え、代々木博士はそちらに連絡をした。
「はい! 岳田だ! 一体こんな時間に電話とはどなたかな? 自分は忙しいのだが!」
岳田大佐は現場主義の人間だ。
現在は臨時的に剣崎隊長の上官になっている。
「岳田大佐、儂は代々木博士じゃぞい。実は緊急で頼みたい事があり、連絡させていただきましたぞい」
「おお、ガッダインチームの代々木博士殿か、ご活躍はお聞きしております。それで、自分に何の御用ですかな?」
岳田大佐は電話の相手が代々木博士と分かり、態度を改めた。
「先程荒川長官にも連絡したのですが、今三島元長官がテロリスト化して防衛軍の基地から資源やデータを奪う可能性が高いのです、それですので、各防衛軍基地のセキュリティ権限を三島元長官から書き換えて欲しいのですぞい」
「それは一大事だ! 了解しました! 各基地にヘリや夜間飛行機を飛ばし、すぐに対応します! ご協力ありがとうございます!」
岳田大佐は代々木博士の呼びかけにすぐに答えた。
これで今晩には防衛軍のセキュリティは書き換えが可能だろう。
さて、次はブレイン軍団の巨大頭脳ブレイン総統とのコンタクトだ。
こちらは俺がやるしかなさそうだな……。
俺は機動要塞ドグローンに戻り、無線型亜空間通信機のチャンネルセットをした。
確か、ヤツの電波チャンネルは……1977-3-18-11-11 これで通じるはずだ!
――おや、ブキミーダ君ではないか、わたしに何か御用かな?――




