第三十五話 巨大獣ダボボズ 男三島の心意気 1
エルベΩ1、原作でもこの必殺技はあったが、これ程強力な技では無かった。
むしろこの必殺技を使う前にマグネティックランサーで喉を切り裂かれた為、本来の力を発揮できずに爆発していたからだ。
だが、本気を出したフルパワーのセイレーンシステムによるこの必殺技――セイレーン・シュルスリート――この破壊力は前作の王者エメラインの禁忌の必殺技デウス・ボイスに匹敵する破壊力だった。
あれもただの音波兵器というよりも音波を質量を持ったエネルギー波にする事で敵の全身を共鳴させて内部崩壊させる恐ろしい技だったが、原理的にはこのセイレーン・シュルスリートも同じだろう。
これはあの高音の声量を出せるコーネリアだから使える技だと言えるだろう。
むしろ……サイボーグ化してしまうとあの威力は出せないと思う。
それは――いくら高音で同じ音を再現しようとしても、作り物の域を超えないからだ。
だがやはりあの技はコーネリアの命を削るような技だ、簡単に何度も使えるような技ではない。
実際、もうコーネリアはこの技を使い、全身がもう立っているのもやっとだろう。
仕方ない、俺が機動要塞ドグローンで迎えに行ってやるか……。
「ガッダインチーム、お疲れ様。とりあえず今はコーネリアさんの体に負担を駆けないようにしてやってくれ。今からワシがドグローンで全員を迎えに行く」
「ブキミーダのオッサン、ありがとうよ! 助かるぜ」
どうやら今の俺はガッダインチームにも信頼されたようだ。
これでもうダバール星人と地球人の地球上での争いは終わらせることも出来るだろう。
その為にはまだやるべき事が残っているが……。
そう、それは……あの三島長官の姿をしたブキミーダを完全に無力化する事だ。
アイツ、タチの悪い事に今はブレイン軍団からも地球防衛軍からもダバール星からも孤立しているはずなのに全部の勢力の基地の場所を把握している。
つまり、アイツは廃棄された基地や、トップシークレットで入れないはずの場所のフリーパスを持っているのと同じで、どこからでも資源やエネルギーを調達可能なのだ。
しかも各陣営の基地を全部知っているだけに、どこに出没するかがまるで見当がつかない。
今までならどこかの陣営に属している状態だったのでその軍勢の基地のどこかから調達していただろうが、今は文字通り神出鬼没だ。
下手すればアイツ……ガッダイン5の予備マシーンを持ち出す可能性もある。
これは防衛軍トップシークレットだったが、まだ基地のセキュリティー開錠権限が荒川長官では無く三島長官になっているのだ。
――これはかなりマズい!
実際、次の話に出てくるのは……偽ガッダイン5だ。
これで本物の予備パーツを使われると……偽物がガッダイン5と全く同じ、もしくはそれ以上のポテンシャルの有る敵として出てくる可能性もあるのだ!
とにかく偽ガッダインが出てくる前に打てる手を打たなくては。
俺は寸又峡に向かい、ミザーリン、マーヤちゃん、アクラデスとダンダル、ケン坊とアチャコ、それにベルクシュタイン博士とコーネリアとエルベΩ1を回収した。
ガッダイン5は自力で飛行できるようなのでそのまま帰還してもらう事にした。
今ドグローンの中ではコーネリアが高熱を出し、メディカルポッドの中で治療中だ。
それを見守っているのは父親のベルクシュタイン博士だが、このメディカルポッドでも流石に白血病の治療は無理だ。
だが……これだけドナー候補がいるならば、誰かコーネリアと型の合うドナーがいるかもしれない。
さあ、急いで北原未来要塞ベースに帰還だ。
急がないとコーネリアの命が危ない!
俺達が北原未来要塞ベースに到着した時、時間は既に夜中になっていた。
代々木博士は俺の連絡を受け、医療班が集中治療室に集められていた。
これからコーネリアの命を救う緊急手術が始まるのだ。




