第三十四話 巨大獣バゾンガ 死者が蘇る怪談話 9
あーあ、ダンダルのせいでこの後の話がぶち壊しだよ。
……まあ、この後の話は、悲しい結末のコーネリアが突風にあおられ、水没し、そのまま溺死してしまう流れだったので、変わったのがむしろ良かったのかもしれないが……。
だとしても、あと数か月で彼女の命が終わってしまうのは変わりないので……サイボーグ手術を受けるのは変わらないのだが。
本編では溺死した分だけサイボーグ手術を受ける時間が早まったというだけの事だ。
結局結果は変わらない。
むしろ、竹千代が悲恋にならなくて良かったのかも。
ましてや今の彼はアクラデスと良い感じの関係になっているので、下手にコーネリアとの淡い恋愛関係が出来なくて良かったのかもしれない……。
コーネリアは旅館というか、バンガローの部屋から外に出、山を散歩していた。
午前中は良い場所があったのでそこで歌を歌っていた彼女だったが、その彼女の気分をぶち壊しにした大男、アイツは一体何だったのだろうと考えているようだ。
「もう少し山の中に入ってみようかしら……」
彼女は山の中の獣道を歩いて奥に入っていった。
だが、日本語の看板には……ある文字が書かれていた。
――クマ出没注意――
その頃、ガッダインチームは……新聞の記事を見て笑っていた。
「何だよこの新聞、よく見てみろよ。寸又峡に60メートルの熊が出没したってよ……。どう考えても新聞記者が単位間違えただけだろ!」
「まあ、あり得ませんよね。生き物でそこまで巨大化すると足にかかる重量は数百トン以上になりますから、ブロントサウルスみたいな足になっちゃいますよ」
まあどう考えても地元猟師が60メートルの熊を見たなんて表現をしているのは、新聞記事によくあるセンチメートルの書き間違いだろう。
――というか、ブロントサウルスって、今じゃ存在しない恐竜の名前だな、流石は昭和。
さて、ガッダインチーム側のバカ話は置いておいて、コーネリアの方を確認しないと。
って、あれはっ! 熊だ!
「ひっ、ひいいぃぃ。何、何なのアレ……」
「グガアアアッ!」
「キャアァァア! 誰か助けてぇえー!!」
「ぬうぅん!」
ボゴッ!
その時、コーネリアを助けたのは、なんとダンダルだった。
ダンダルはパンチ一発で熊をノシたが、その大きさは一メートル90センチを超える大きな熊だった。
「あ、ありがとう……」
「ようッ。お嬢さん、これ、忘れものだぞッ」
「あ、ありがとう……」
ダンダルがコーネリアに手渡したのは、今は亡き母の形見のロケットだった。
彼女の母は歌姫と呼ばれたオペラのスターだった。
だが彼女の母親も白血病で若くして亡くなっているのだ。
つまり、コーネリアの白血病は遺伝によるものだったと言える。
これは……ガッダイン5大百科に書いていた内容だ。
彼女はその不治の病での命がもう残り少ない事を知り、最後の思い出作りの為に父親の旅行についてきたのだ。
「良いって事よッ! 歌好きに悪い奴はいないッ。だから小生は貴女を助けたッ」
「アナタ、先程はひどい事を言ってごめんなさい。ワタシはコーネリア。アナタ、お名前は?」
「小生はダンダルぐ……ダ、ダンダルでいいぞッ!」
「よろしく、ダンダルさん」
コーネリアはダンダルの手を握り、儚げで優しい笑顔を見せた。
「アナタ、見かけによらず優しいのね、また会いましょう!」
コーネリアはそう言うと獣道を再び帰っていった。
その場に残されたダンダルは、今までに感じたことの無いような気持ちを感じたらしい。
「お、ここに居たのかダンダル! お昼にするからとっとと戻ってくるのだ!」
「あ、姉者。まだ小生はあの娘と……」
「やかましいのだ! お前どれだけみんなに迷惑かけたか分かっているのか!? こってりと反省するのだ!」
ダンダルはアクラデスにこっぴどく叱られ、罰ゲームとも言える残り物のチョコ入りとゼリービーンズ入りとはっぱえびせん入りのおにぎりを全部食べさせられていた。




