第三十四話 巨大獣バゾンガ 死者が蘇る怪談話 7
代々木博士が電話している相手、それはベルクシュタイン博士だ。
「おい、それは生命倫理に反する実験じゃぞい、儂はどのような事情でも反対じゃ」
「ヨヨギ、ぼくの娘は……もう先天性の病であと数か月の命だ。彼女を救う方法、それが人体のサイボーグ化なのだと……そして、娘は自ら身体を差し出してくれると本人が言っている」
そう、確かベルクシュタイン博士の娘コーネリアは先天性の白血病であと数か月の命だと言われている……。
苦悩に悩む父親に、彼女は自ら身体を検体として差し出すと決意していたのだ。
彼女の歌声が寂しそうだったのは……残り僅かな生身の身体の人生で歌い切りたいと願ったからだ。
「事情は分かった……だが、儂はそれに賛同する事は出来んぞい。だが、ドナーが必要なら儂のツテを辿って必ず見つけ出してやる。だから早まったマネはするな」
代々木博士は人格者だ。
だからこのような科学者同士の相談にも乗るのだろう。
代々木博士が電話していた相手のベルクシュタイン、この声……やはり聞き覚えのある声だ。
今回のシリアスなベルクシュタイン博士の声とはイメージが違うが、タイムドカンの――全国の女学生の皆さーん、今週の見どころー――と言っていた鼻の赤くて大きな天才学者や、マシンダーAの鍬形博士、巨人軍の侍のキャッチャー等の声で有名な人物だ。
思わず声を聞いたら笑ってしまいそうな感じだが、話している内容が内容だけにあまり馬鹿に出来たものじゃない。
この時間軸でもどうやら娘のコーネリアの先天性の不治の病は治せなかったようだ。
そうなるとやはり彼女のサイボーグ手術による生体コンピューター化は遅かれ早かれ避けられない問題なのだろうか……。
とにかく今は紅葉狩りの結果を見るしかなさそうだ。
俺は留守番として機動要塞ドグローンに残り、ガッダインチーム、アクラデスとダンダルの姉弟、マーヤちゃん、ミザーリン、アチャコ、それにケン坊が紅葉狩りに出かけた。
どうやらダンダルはお腹の調子が良くないようだ。どうも昨日作ったあの紫色のヤバい料理を味見してぶっ倒れたらしい。
捨てるに捨てられなかったこの劇物、どうやら蓋を閉めて厳重に密封してここに持ってきたらしい。
まあ川に捨てればどうにか捨てられるという事だろう。
移動にはダインマシンとグローン円盤が使われたようだ。
彼等は原作と同じ流れで寸又峡に向かい、紅葉を楽しんだようだ。
だがアクラデスはどうも不本意といった表情だ。
「うーむ、我どちらかといえば上野動物園に行きたかったのだ……」
「アクラデスさん、見てくださいよ、ほら……綺麗ですよ」
「本当なのだ! こんなに綺麗だとは思わなかったのだ! あ、あそこにタヌキがいるのだ!」
アクラデスは目をシイタケにして喜んでいるようだ。
彼女が竹千代とピッタリくっついているのがどうやらアチャコには気に入らないらしい……。
「フン、何よあんな女、あたちだって大きくなったらあれくらいの美人になるんでちから!」
あらららら、どうやら原作と違う流れはアチャコがアクラデスにジェラシーを感じてしまったようだ。
そんな彼女をなだめているのはケン坊の姿の三島長官のようだな……。
「麻子、どうしたんだ? そんなに不機嫌そうな顔で」
「何でもないわよっ! お兄たんには関係ないのでちっ!」
機嫌を損ねたアチャコだったが、渓谷の方から聞こえてきた綺麗な歌声に気を取られたようだ。
「ラーラーラララーラー……ララララ、ラーラァーラーラァーラー――ラァー」
渓谷の上の方を見ると、そこには原作そのままにコーネリアが歌っていた。
原作だと彼女に一番最初に気が付くのが竹千代で、その後彼女と話をする事になったが……今はアクラデスとピッタリで下の方で動物探しをしていた為、渓谷の上の方に行ったわけでは無く、下から彼女を眺めているだけだ。
むしろ、今回彼女に最初に声をかけたのは……意外過ぎるお呼びでない人物だった……。




