第三十三話 巨大獣オゾルゲ 拷問される千草 7
どうやら三島長官の姿のアイツとウルフ博士が何か言い争いをしているようだ。
こういう会話がスピーカーから流れてくるというのもシュールなものがある。
「ミスターミシマ、お前はワタシを裏切るのデスか!?」
「いや、誤解だ、ウルフ博士。勿論貴方もデスカンダル皇帝についてしまえば良い」
「そんな事が出来るか! お前はマスターブレインの恐ろしさを知らないんだ。あの恐ろしさを知っていればそんな事言えるワケがない!」
三島長官の姿のアイツがデスカンダル皇帝の所に行こうとするのに対し、ウルフ博士は巨大頭脳ブレイン総統が怖くて逃げる事が出来ないらしい。
まあ実際、ウルフ博士の中にはブレイン総統に逆らうと痛みが全身に伝わる手術が成されていて、ブレイン総統から離れる事が出来ない。
実際本編でもウルフ博士がブレイン総統の怒りに触れ、罰を与えられるシーンは何度もあった。
だからウルフ博士はブレイン総統を裏切ってデスカンダル皇帝に付くという選択肢を選ぶ事は出来ない。
下手すればブレイン総統のコントロール範囲外に出た場合に体内に仕掛けられた爆弾が爆発する可能性すらあるからだ。
だがそんな事を知っているのは鉄巨人イチナナの本編を見ていた俺だけであり、三島長官の中のブキミーダは単にウルフ博士が、ブレイン総統が怖くて逆らえない臆病者としか見ていないのだろう。
「ミスターミシマ! お前はブレインの恐ろしさを知らないのだ! だからそんな事が言える。お前との縁もこれまでダナ!」
あーあ、所詮悪人同士の同盟なんてこんなもんだな。
三島長官の姿のアイツはウルフ博士と決裂したようだ。
「フン、ウルフ博士。そんな事を言っていられるのかな?」
「何だと!? キサマ、一体何をしたのだ!」
「ケカカカカカッ! このロボットは頂いたぞ!」
何だ! 佐山貯水池の中から巨大ロボットが出現した。
アレは……ガスタンクマシーン!
どうやら三島長官の姿のアイツは飛行能力のあるあのロボットを選んだらしい。
まああのロボットを使って奇岩島基地まで行って宇宙船を奪う算段だったのだと思われれる。
まあ不幸中の幸いといえば、俺が三島長官の姿のアイツとウルフ博士の居場所をすぐに見つけ出した事で、千草の拷問が行われる前だったという事か。
まあアイツがいっている千草の秘密とは、今拷問の末に手に入れた情報ではなく、本編中でブキミーダが千草を拷問した際のデータによる記憶だったと言えるだろう。
「やい、テメェ! 千草を返せ!」
「ミシマ、チグサを返すのだ!!」
「おやおや、その声……アクラデスか。まさか地球人の軍門に下るとはな」
「キサマに偉そうに言われる筋合いは無いのだ!」
ガッダイン5はガスタンクマシーンを相手に戦闘を開始しようとした。
「おっと、下手に手を出せばどうなるかな? この女も一緒に吹き飛ぶぞ」
「何だと!」
これは困った事になったな。
あのガスタンクマシーン、下手に攻撃を加えると大爆発を起こしてしまう可能性がある
それを避けるには、どうにか千草を無事に助け出した上であの破壊ロボットを倒さないといけないのだ。
さて、どうやってあのガスタンクマシーンから千草を助け出すか……。
「ご主人様、ワタシに任せてもらえますか?」
え? マーヤちゃん……一体何をしようというの?
だが今は方法を選んでいる場合では無い、こうなったら巨大獣オゾルゲにマーヤちゃんを乗せて動いてもらう事にするか……。
「マーヤ、失敗は許されないぞ。本当に大丈夫なんだな?」
「はい、今のワタシにはこの自慢の足がありますから!」
そうか、そういえば今のマーヤちゃんは下半身をきちんと調整した最強の等身大マーダーロイドの機能をフルで使えるんだな。
こうなったらマーヤちゃんに任せてみるか……。




