第三十三話 巨大獣オゾルゲ 拷問される千草 4
代々木博士が俺に聞きたい事はブキミーダに関するどの話なのだろうか?
本編におけるブキミーダの事なら、最終回近くまでの話をした方が良いかもしれないな。
「そうですね、俺が知っているのは……アイツは勢力渡り鳥といったところでしょうね」
「ほう、それはどういう事ですかな?」
俺はありのままに知っている事を話した。
「そのままですよ、アイツ……本物のブキミーダはデスカンダル皇帝の手下でしたが、最初はミザーリンに、そしてシャールケンにすり寄り、シャールケンが提督を更迭され、ガッダイン5との戦闘で行方不明になってからはアクラデスにすり寄って自分の居場所を確保していました」
「成程、それで勢力渡り鳥というわけですな……」
代々木博士は俺の説明でブキミーダの人となりを理解したようだ。
「確かに、そう言われれば飛行機事故の後の三島長官がまさにそんな性格になってましたな。儂の事も覚えていないようだったし、思い当たる事が多すぎるぞい」
「それで今あの三島長官の姿をしたブキミーダはブレイン軍団のウルフ博士と手を組んでいるというわけです。今や地球防衛軍にもダバール星にも彼のすり寄れる場所はありませんから」
代々木博士がため息をついていた。
「はあ、それだと本物の三島長官は一体どこにおるんじゃぞい……」
「代々木博士、驚かずに聞いてもらえますか? また、この話は他言無用でお願いします」
「何じゃぞい、いきなり藪から棒に……」
代々木博士は俺の態度が真剣なので真面目に話を聞いてくれた。
「本物の三島長官、それは今ケン坊と呼ばれている少年の中にいます、どうやらあの水難事故の後、本物のケン坊が仮死状態になった後に彼の肉体に飛行機事故で抜けてしまった三島長官の魂が入り込んだと考えて良いでしょう」
「何ともオカルトな話じゃが、確かにそう言われればそうじゃな。当てはまる事が多すぎて儂もビックリじゃぞい……」
この荒唐無稽な話、あまりにも合致点が多すぎて代々木博士もこの事実を認めざるを得なかった。
「ですが今はまだこの話はここだけにしておいてください。この話を知っているのは俺と代々木博士、それにミザーリンだけです」
「成程、それで今までの話が納得できたぞい。確かに北原未来要塞ベースに侵入してきたダバール星人を追い払ったのはケン坊君だった。それが三島長官の腕だというならそれも納得するしかなさそうじゃぞい」
代々木博士が今までの話をまとめ、俺に話した。
「つまり、貴方はこの世界の未来から来た人間で、そのブキミーダという人物の中に入っている。そして、最後に処刑された本物のブキミーダは飛行機事故で意識を失った三島の身体に入り、三島の魂は水難事故で仮死状態のケン坊に入った。これで間違いありませんな?」
「その通りです。そして今三島長官の中のブキミーダは千草さんを手土産にデスカンダル皇帝の所に向かおうとしているのです」
この事に代々木博士が疑問を持ったようだ。
どうやら彼はまだ彼女がダバール星人とのハーフだという事は知らないらしい。
「それは、彼女がダバール星の王子であるハリールの娘だからです。皇帝とはいえ妾腹だったデスカンダル皇帝は、正当な血筋のハリールの娘である千草さんを妻とする事で自他ともに認めるダバール星の皇帝の地位を盤石のものにしようとしているのです」
「なんと! まさか……ハリールとは、光一郎の事か!?」
今になってようやく代々木博士は親友の光一郎が言っていた事が事実だと知る事になった。
「はい、北原光一郎、彼はブキミーダの秘密警察に追われてダバール星を逃亡した王子だったのです。それを地球人の三島軍曹に助けられ、子供を戦死させてしまった北原少佐の息子として地球人、北原光一郎として生きたのです」
「そうか、貴方の言う事に噓は無さそうだ。まさか光一郎が本当にダバール星人だったとは……今でも信じられんぞい」
代々木博士と俺の話は、もう少しだけ続いた。




