第三十二話 巨大獣ゴマゴガ 狙われた千草! 12
ガッダイン5は五人乗り、一人でも欠けると合体出来ないはず。
だがガッダイン5は合体した状態で新横浜上空を目掛けて飛んできた。
この短時間で溶接したりして合体機構無視で持ってきたわけが無いし……一体誰が乗っているのだ??
「ケン坊! 本当に大丈夫か?」
「ど、どうにか……ようやく操縦に慣れてきた……よ」
――そうか! 本編では三島長官が乗っていた。
しかし今の三島長官はブキミーダに入り込まれていて完全に敵になっている。
一方の本物の三島長官は事故死したはずのケン坊の身体に入り、代々木博士の助手や剣崎隊長の見習い隊員のような立場だ。
確かにケン坊の姿の三島長官ならダインクルーザーを扱えても何もおかしくはない。
「ガッダインチーム、ワシはブキミーダだ。残念ながら千草さんはブレイン軍団に攫われた。だがアクラデス様はどうにか助け出す事が出来たので、今あのブレイン軍団の破壊ロボット、殺人ビル型マシーンは無人だ、遠慮なく破壊してくれ!」
「何だって!? 千草が攫われた! くっそー……アイツら、絶対に許さねえ」
龍也が怒っている。
他のガッダインチームのメンバーも同じ気持ちだろう。
「龍也、どうやら敵はあの穴の開いた場所が弱点のようだぞ」
「あそこはミザーリンとマーヤが脱出した穴だ、そこなら装甲がむき出しになっているはず」
「姉さん……いや、ミザーリンさんが? わかった、ありがとうよ!」
流がマグネティックアローを一極集中で殺人ビル型マシーンに叩き込んだ。
炸裂したアローがビル内部で爆発したらしく、殺人ビル型マシーンはフラフラしている。
「今だ! 龍也……トドメだ!」
「わかったぜ、超電磁……ストォーム!!」
ガッダイン5の右腕の灼熱のストームと左手の氷のストームが殺人ビル型マシーンを包み込んだ!
「超! 電磁ぃ……クロォースフィニィィッシュ!!」
「ガガクオオオオッッ!」
超電磁クロスフィニッシュを叩き込まれた殺人ビル型マシーンは大爆発した。
俺達はガッダインチームと一緒に北原未来要塞ベースに戻った。
するとダンダル軍務卿と元タイタン部隊が野球をしていた。
まあアクラデスが無事戻ってきたのでダンダルが怒る事は無いだろう。
「おお、姉者ではないかッ。買い物は楽しめたのかッ?」
「ダンダル、我はバカなのだ……」
「えッ? 姉者ッ??」
本編では決して彼女が言わなかったような台詞だ。
天才を自負するアクラデスは自身の否定を決してするようなキャラでは無かった。
だが今の彼女は千草が攫われてしまったのが自身の責任だと考えている。
まあそう言っても普通、あんなビルの形に偽装した敵ロボットが存在するなんて考えつくわけもない。
決してアクラデスが馬鹿だったとは俺はとても言えない。
「そんな事無いですよ、アクラデスさんが悪いんじゃない。悪いのはあの三島長官です!」
「お前は……熱海のゲームコーナーにいた、子供……?」
「僕は徳川竹千代です、アクラデスさん」
「タケチヨ……そうか、あの宇宙反射衛星砲を破壊した……、そうか。お前だったのか」
アクラデスは目の前にいる少年が彼女の作戦を次々と破ってきた天才少年だとすぐに見抜いた。
「頼むのだ、タケチヨ。知恵を貸してほしいのだ! 我のせいでチグサが攫われてしまった。我は何としても彼女を助け出さないと……お願いなのだ」
「わかりました、アクラデスさん、みんなで千草さんを助け出しましょう!」
どうやらアクラデスは竹千代に淡い好意を持ってしまったようだな。
本編では弟以外に愛情を持つことの無かった彼女にとってこれは変化だと言えるだろう。
とにかく千草を助け出さないと!
俺は三島長官の姿をしたアイツの居場所に心当たりがある。
アイツがウルフ博士と組んでいるとして、巨大頭脳ブレイン総統に従っていないとすれば、間違いなくアイツらがいるのは……狭山貯水池だ!




