第三十話 巨大獣ボルゴガ 火山の爆発を食い止めろ 4
青木流は東南アジアの内戦の国で生まれた。
エリート商社マンだった父親は東南アジアの発展を支援する為にその国に居たが、軍部独裁政権のクーデターによる内戦に巻き込まれ、家族はバラバラになってしまった。
流は姉の渚と戦地の国の中を生き抜く為、逃亡の日々を送った。
その際に彼が身に付けたのが人並外れた動体視力だったのだ。
それは銃口を見た瞬間すぐに避けるだけの野性的直観と生まれながらの彼の運動神経やセンスと相まって……もし時代が時代なら彼は間違いなく超一流のアスリートに成れていたのかもしれない。
その彼が今皇帝特殊部隊タイタンの隊長だったトニーと野球勝負をしている。
「行くぞ、ナガレ! オレのボールを受けてみろ!」
「来い! トニー!」
トニーの投げた剛速球は唸りを上げ、ミットに吸い込まれた。
「ストラーイク!」
流は全く手が出なかったのではない、むしろこの一球でトニーの球を見極めていたのだ。
「どうやら手も足も出なかったようだな! それではもう一度行くぞ!」
トニーの剛速球が再び放たれた。
それを流は鋭いスイングで振りかぶり、打たれた球は基地の外に消えた。
「クソッ! ファールか!」
「やるな、ナガレ! 次の一球で勝負だ!」
「望むところだ!」
トニーが鋭いフォークボールを投げてきた!
「!」
いきなりのフォークに少し戸惑った流だったが、流石は動体視力の天才だ。
彼はバットを少し長く持ち直し、落ちたフォークボールを真っ芯で捉えてジャストミートした!
カキィイイイン!
トニーのフォークボールは流に打たれ、見事なホームランになった。
「負けた……流石だな、ナガレ」
「まだ勝負は始まったばかりだろう」
結果、この後の勝負はこのホームラン以外一点もお互いが譲らず1対0で防衛軍側の勝利になった。
流とトニーはお互いの健闘を称え、肩を組んで笑っていた。
「やるな、ナガレ」
「お前こそな、トニー……後は全部空振りにさせられたぜ」
「楽しかったぜ、ナガレ。もう思い残す事は無い」
「オイオイ、何だよそれ! まるで今生の別れみたいな言い方してよ」
トニーは負けた軍人の末路を覚悟しているようだ。
流はそんなトニーを叱り飛ばした。
「ふざけるな! おれ達がそんな事をさせるかよ!」
「姉さんを……頼んだぜ」
「おう、お前の姉さん……誰か言い寄るヤツがいたら、お前の代わりにぶっとばしてやるぜ!」
あの、それって俺がぶっとばされる事前提な話なのでしょうか……。
「大丈夫だ、おれ達がお前達の事を助けてやる」
「ナガレ……ありがとう」
代々木博士の働きかけで特殊部隊タイタンは北原未来要塞ベース及びブルーマフラー隊の預かりという事で話が落ち着いた。
ふー、これでようやく話がまとまったか。
しかし本来の二十九話と違って悲しい末路にならなくて本当に良かった。
だが問題はこの後の三十話だ……。
原作では熱海での防衛軍関係者及び、国連関係者の平和対策会議が行われてたが、今回の話では三島防衛長官の処遇についての話し合いという事になっている。
さあ、タイタン部隊は北原未来要塞ベース預かりという事になったので、当面処刑だ何だと言う話は無さそうだ。
ミザーリンには一旦奇岩島基地に戻ってもらい、アクラデス執政官に今回の作戦結果を報告してもらわないと……さあ、彼女を連れて奇岩島に帰還しよう。
――だが、この後、原作以上にカオスな展開になるとは……俺もマーヤちゃんもミザーリンも、そしてアクラデスも誰も知る由も無かった。
あんな結果、誰が想像つくというんだ!
原作以上のカオス展開、その内容についてはこの後話す事にしよう……。
って俺、一体誰に向かって話をしているんだ!?
ダメだ、俺、少し働き過ぎかも、アー、残業のし過ぎかなー。
アー、うまいコーヒーが飲みたいなー。




