第三十話 巨大獣ボルゴガ 火山の爆発を食い止めろ 2
ガッダインチーム、ブルーマフラー隊、そして特殊部隊タイタン、それぞれが全員三人を残して帰還準備に入っていた。
無人島の灯台近くに残されたのは青木流、トニー隊長、そしてミザーリンの三人だけだ。
俺は昆虫型スパイドローンでこの様子を機動要塞ドグローンから見ている。
最初沈黙していた三人だったが、最初に流がミザーリンに話しかけた。
「アンタの持っているその人形、それはおれが間違いなく姉さんに渡した物だ、という事は本当にアンタが渚姉さんのフリをしていたんだな……」
「流、ごめんなさい。わたくしが貴方を傷つけてしまった……」
「姉さんは悪くないだろう!」
トニーがミザーリンをかばってる。
「そうか、アンタにとっておれは、生き別れのコイツの代わりだったんだな。まあいい、別にそこは怒っていない……それよりもおれの中の気持ちの整理がようやくついたからな」
「気持ちの整理……?」
「その前にオレに教えろ。お前、何故姉さんがお前の事をオレと照らし合わせたんだ、その理由を聞かせろ」
この内情の説明は本編でもトニーと流の会話であった事だ。
その時は反対に流がトニーに心情を伝えてもらう話だったが……。
「そうだな、おれはこの国の生まれではない。内戦の続く東南アジアの国で生まれた日本人だ。そしておれの両親は戦争の中、生き別れになってしまった。そしておれは渚姉さんと姉弟二人だけで戦地を生き延びたんだ……。だが、姉さんとは戦地で生き別れになってしまった。そしておれは戦地に救援に来ていた日本の軍人に助けられ、この国に保護されたわけだ……」
「そうか……お前、姉さんと生き別れになってしまったのか」
トニーは流の話を聞いてその境遇が似ている意味を理解した。
「ナガレ、オレも似たようなモンだ。オレはミザーリン姉さんと小さい頃から二人だけで生きてきた。だが、姉さんはいつかいきなり姿を消してしまった。そして誰も身内のいなくなったオレは街のチンピラになり果て、軍に捕まり……その後特殊訓練を受けて特殊部隊に配属される事になったんだ……」
「そうか、お前も苦労したんだな……」
そして姉と生き別れになった弟同士、流とトニーの二人はニコっと笑った。
「二人共……」
二人を見つめるミザーリンの目はまさに弟を見守る姉の優しい目だった。
「その上であえておれはアンタに言いたい。おれは……アンタが好きだ! だが、本当の姉さんだと思って遠慮していた。姉弟同士だと思っていたからだ。だが、アンタがおれの姉さんじゃないなら……一人の女性としてこの気持ちを伝えたいんだ!」
流のいきなりの告白にミザーリンが戸惑っている。
「ふざけんなっ! 姉さんは渡さないぞ!」
そしてトニーが流に鋭いパンチを入れた。
流はそれを避けようとせず受け止め、ニヤリと笑ってからトニーにパンチを打ち返した。
「二人共……」
「いいんだ、姉さん」
「そうだぜ、ミザーリンさん……」
お互いが笑いあった流とトニーは堅く握手を交わした。
「姉さんは絶対にお前には渡さないからな!」
「フッ、必ずおれに惚れさせてみせるぜ、兄弟……」
「ハハッ! 出来るもんならやってみろ」
これぞまさに男の友情というべきなのだろうか……。
まあ偶然と言えば偶然だが、あの三島長官の姿のアイツとウルフ博士がいらない事をしてくれたのが流とトニーの和解のきっかけになったようだ。
三人の様子を遠目に見守っていたガッダインチームやブルーマフラー隊、それに特殊部隊タイタンの面々が全員笑顔で戻ってきた。
「どうやら話は落ち着いたようだな、それでは各自帰還する! 青木大尉、貴女には引き続き平和活動の為の任務を遂行してもらいたい。貴女に指示を出している人物にもよろしく伝えてもらえるかな」
「了解です! 剣崎隊長! 青木大尉、引き続き任務続行致します!」
そしてガッダインチームとブルーマフラー隊は投降した特殊部隊タイタンの面々を連れ、北原未来要塞ベースに帰還した。




