第二十九話 巨大獣ギャンゴ 巨大な腕が襲う! 9
次の日、特殊部隊タイタンとトニーは起きてすぐに野球をやっていた。
どうやら俺が皇帝の声を再現して今日は自由行動で良いと言う風に伝えたら本気にしてしまったらしい……。
本当の皇帝の命令はヘルメットから出ている内容で、――地球で一番攻撃力の高いと思われる軍隊の施設を殲滅しろ――だったんだけどね。
今は彼等の被っているヘルメットは俺の作った偽物、本物は一つだけ残して全部鉄クズのスクラップにしてしまった。
いや、しかし……一度野球をやらせてみたらマジでハマったみたいだな、あのタイタン部隊の連中。
「オラー、しまっていくぞー!」
朝食の直後から元スポーツ選手の捕虜達と一緒に筋トレしている彼等はどう見てもただのさわやかスポーツ団だ。
まあそのおかげで俺は作戦に取り掛かれるんだけどね。
さあそろそろ突貫作業の徹夜作業で作った巨大獣の最終調整を済ませるか。
ガッダイン5大百科の巨大獣図鑑によると……。
――巨大獣ギャンゴ――
全長50メートル、重量1100トン
巨大な両腕を持ち、全体的にマッチョな姿の巨大獣。
右腕からのエネルギー攻撃を得意とする。
本来は特殊部隊タイタンのトニーが乗るはずだったのだが、作戦上トニー達が基地侵攻を進めたので代わりにミザーリンが乗る事になった。
右腕のエネルギー球を投げつけてガッダイン5を翻弄したが、龍也にマグネティックランサーでエネルギー球を打ち返されてコクピットに直撃。
その衝撃でコクピットからミザーリンがはじき出される。
――実は本編中、その後ギャンゴがどうなったのかは触れられてなかったような気がする。
破壊されたのか鹵獲されたのか回収されたのか……。
まあこの話がロボットプロレスメインでは無く、むしろミザーリンとトニーの姉弟の悲劇の演出がメインだったからな。
まあガッダイン5大百科を見るときちんと結末は載っていたんだが。
どうやら巨大獣ギャンゴはミザーリンに撃たれたトニーにガッダインチームが気を取られている間に、彼女が自爆させて証拠隠滅した上で奇岩島基地に帰還していたという事だ。
まあ鹵獲されるくらいなら証拠隠滅の自爆ってのは納得ではある。
だが今回のこの流れだとどういった感じになるのやら。
とにかく俺は巨大獣ギャンゴの最終調整を進め、出撃可能な状態にした。
「これが巨大獣か、オレに乗らせろ」
「え? トニー様??」
いきなり本編と流れが変わってきた、巨大獣に乗るのがミザーリンでは無くトニーになってしまったのだ。
しかしここで拒否する権限はオレには無い、その上この特殊部隊タイタンに関してはアクラデス執政官は一切関与しないと言って部屋から出てこない始末だ。
アクラデスが出てこない=彼女の命令で動くダンダル軍務卿も表に出てこない。
だからここは皇帝直属特殊部隊タイタンに好きに動かさせるしかないのだ。
「タイタン部隊に告ぐ、これよりオレ達は地球最強の防衛力を持つ北原未来要塞ベースを襲撃、殲滅する!」
皇帝の命令でタイタン部隊が出撃する事になった。
――実はこれ、俺の偽音声で作った命令なんだけどね――
タイタン部隊は俺の作った偽ヘルメットを被っている。
その為、皇帝の命令だと思っている物は俺がでっち上げた嘘だ。
だからもし仮にここで野球をしろとか言ったらそれを命令として実際に実行するくらいだ。
まあそんなアホな事はやらせないけど……。
「ミザーリン、貴女は彼等よりも先に日本に向かって特殊部隊が来る事を北原未来要塞ベースに伝えてほしい、こちらはどうにか出撃を遅らせるようにして時間稼ぎしておくから」
「わかりましたわ、お任せくださいませ!」
さて、出撃準備に取り掛かっている彼等だが、皇帝の命令ならどんな変なことも疑わずに聞くんだよな。
それじゃあ時間稼ぎの為にやってみるか……。




