第二十九話 巨大獣ギャンゴ 巨大な腕が襲う! 6
皇帝特殊部隊タイタンは初めての大浴場に驚いたようだ。
まあシャワーやメディカルカプセルに比べればこれほど大きな場所を使った大浴場なんてダバール星本星にも存在しない。
それはこの奇岩島が海底火山帯の中に存在するので地下の豊富な水源が使い放題だから作れたものだ。
特殊部隊タイタンとトニー隊長は風呂から上がり、服を着替えようとしていた。
どうやらすり替えたヘルメットには気が付いていないようだ。
「お待ちください、ヘルメットをかぶってしまってはせっかくのコーヒー牛乳が飲めませんぞ」
「キサマは何を言っているのだ??」
トニーが俺を馬鹿にした。
「いえいえ、風呂上りにこれを飲むと気分がスッキリするので、是非お試しいただきたく……」
「何だ、コレは? まさか毒なんて入っていないだろうな?」
「めめめ、滅相も御座いません。どうぞ、グイーっと一気に飲んでください」
特殊部隊タイタンの連中はトニー隊長がコーヒー牛乳を飲んだのでそれに合わせて全員が同じようにコーヒー牛乳を飲みほした。
「何だ! この冷たい飲み物は!? こんなものがあったのか!」
まあカルチャーギャップは感じるわな、まあ悪いイメージは無さそうだ。
「さあ、皆様……お風呂を出た後は部屋でゆっくりとおくつろぎください」
「な、何だ何だ。オレ達はこれから任務が……」
とにかく今の時点でヘルメットをかぶらせてしまうと違和感に気が付かれてしまう、もっと出撃前の焦った時くらいで無いとヘルメットが偽物と分かられたら後々ややこしくなってしまうからだ。
なので俺は強引に用意した野球用のヘルメットを人数分彼等に被らせた。
これですり替えたヘルメットと前のヘルメットの違いがわかりにくくなるはずだ。
俺は風呂上がりの特殊部隊タイタンの面々に野球のボールとグローブを手渡してみた。
もし彼等が元ネタ通りのキャラなら野球でも一流の能力を見せるだろう。
そして地球人の捕虜からも元野球選手やスポーツ選手にチームを作ってもらい、草野球対決をする事になった。
「行けー! サワムラー!」
どうやら捕虜達も見物を許されているようだ、あの捕虜の名前はサワムラらしい。
確か以前にそんなスポーツ選手いたような……。
「このボールをあの真ん中目掛けて投げれば良いんだな!」
トニーが思いっきりキャッチャーミット目掛けてボールを投げた。
「とぉあああー!」
サワムラはボールを思いっきり蹴り飛ばした、だがファールだ。
……というか、野球のボールをバットじゃなくてキックで蹴り飛ばすって!? アレが噂のキックの鬼なのか!???
どうやらサワムラはサワムラでもこの捕虜は別のサワムラだったようだ……。
だがどうもこの蹴り飛ばしにトニーの火が燃えたらしい、結果オーライか。
――結局草野球はド素人のはずの特殊部隊タイタンの圧勝に終わった。
そりゃあ身体能力をあの洗脳特殊ヘルメットでドーピングされていたら、いくらスポーツ選手でも普通の人間が勝てるわけが無い……。
だがこの余興、どうやら彼等は楽しめたようだ。
その後彼等は元スポーツ選手の捕虜達と共に食事をする流れになった。
一方のアクラデス執政官は拗ねて部屋から出てこない、また、ダンダル軍務卿は一日中自室でカラオケの練習をしてるようだ。
まあおかげで変な形とはいえ、俺の思ったような話の流れには落ち着いているようだな。
そして夕方頃、ミザーリンが基地に帰還した。
その直後、廊下でトニーとミザーリンがすれ違った。
先に気が付いたのは、ミザーリンだった。
「え!? トニーッ!? トニーなの??」
「その声は……姉さん! 姉さんなのか!!」
「トニー、アンタ……トニーなのね!」
よかったよかった、感動の再会だ。
俺はそう思っていた。
ピシャッ!!
……だが、いきなりトニーに対してミザーリンは平手打ちをした。
えっ!? 感動の姉弟の再会じゃないの??




