第二十九話 巨大獣ギャンゴ 巨大な腕が襲う! 3
さて、この特殊部隊タイタンの面々、どうやってもてなせばいいのやら……。
「ご主人様ー。料理の用意が出来ましたー」
「あ、ありがとうマーヤちゃん」
「はい、ワタシ、ご主人様に褒めてもらえるのがとても嬉しいです」
マジでマーヤちゃんの笑顔は天使だ。
しかしこの半年少しでマーヤちゃんは今の俺こそがご主人様といった感じに上書きされたようだなー。
前のブキミーダが命令を出していた時なんて、どのような理不尽で辛辣な仕打ちでも耐え続けてパワハラセクハラされまくっていたわけだから。
それに比べれば俺なんてやった事は大抵褒めてやるし、大ミスをしたとしても命に関わるレベルでなければ滅多に怒る事も無い。
だからいつもマーヤちゃんはニコニコしているし、外でも綺麗で可愛いメイドロイドとして兵士達の人気も高い。
――まあ俺のこんなマーヤちゃん自慢はさておき、それよりも皇帝特殊部隊タイタンをどうもてなすか、それが問題だ。
各自にそれぞれ部屋を用意するのは当然としながら、リーダーのトニーには出来るだけミザーリンと接点を作れるようにしてやりたい。
……それは原作であまりにもあの二人の境遇が泣くに泣けない程辛いものだったからだ。
そういえば、長富監督はロマン路線で貧乏人の姉弟の弟が野球選手として大成するスポ根の金字塔とも言える――巨人軍の侍――の演出を手掛けていたな。
そうか! 思い出した!! 皇帝特殊部隊のメンバーの名前、アレはV9を達成した東京ティターンズの往年の名選手の名前だ!!
なるほどなるほど、確かにロマン路線とスポ根に定評の長富監督らしい元ネタだ。
という事は、おもてなしの内容を野球選手団みたいに考えてみれば良いのかも。
とりあえずは料理を肉料理メインに高カロリーで身体をよく使うスポーツ選手向けなメニューに変更、そしてトレーニングジムを彼等の部屋に併設して、野球道具を置いておくのもありかもな。
まあテレビは各部屋一台ずつ置いておいて、興味を持てば見るようにしておけばいいだろう。
それと、米国国防省へのデモンストレーション的な殲滅行動は止めさせるようにしよう、それよりも何かスポーツに興味でも持てば彼等の気持ちも変わるかもしれない。
さて、忙しくなってきたな。
それと、そろそろミザーリンが奇岩島基地に帰還する頃だ。
彼女とトニーをどうにか鉢合わせて会話できる流れを作れるようにしよう。
原作じゃこの姉弟があまりにも可哀そうすぎる。
この話で幼い頃のミザーリンとトニーの二人の回想シーンがあったが、名作劇場かこれは?? といいたくなるくらいの貧乏さと周りの冷たい態度で見ていて切なくなったくらいだ。
その後姉のミザーリンは軍に入り、諜報活動の専門家としての訓練を受け、弟のトニーは街のチンピラになっていた。
その街のチンピラ連中が逮捕され、刑務所に入れられたのだが、その中でも身体能力に優れた者達が集められ、軍に入隊させられた。
そしていくつもの戦争を乗り越えた軍人の中からデスカンダル皇帝の為に選りすぐりの兵士達が集められた、それが特殊部隊タイタンだ。
世界の全てを憎んだトニーは特殊部隊で優れた力を発揮し、数多くの罪も無い人達を皇帝の命令で殲滅していった。
そうして原作のミザーリンとトニーはどちらもが過酷な環境の中、人としての優しさや心を失っていったのだ。
こんな悲しい二人だからこそ、今のこの時間軸では無駄に自分を苦しめないでほしいと思うんだ。
それくらいこの話に出てきた過去の回想シーンが見ていて切なくなるような重く、暗くて悲しい演出だったのだ。
さあ、それでは皇帝特殊部隊タイタンの面々をもてなす準備に入るとしよう。
まずは料理の確認からだな……美味しくて栄養のある料理を用意してもらおう。




