第二十八話 巨大獣ズベベガ 宇宙からの襲撃者 3
「龍也どん、ダバール星人はやはり悪いヤツばかりじゃなかったですたい」
「そうだな、エリさんもそうだったんだな」
「キレーダさんもダバール星人だったですたい、でも今は平和に暮らしているですたい」
キレーダの名前を聞いたエリーザ様は驚いていた。
「キレーダがいるの!? どこに、死んだとばかり思っていたのに……」
「エリさん、キレーダさんの事を知っているのか?」
「ええ、彼女は私の親友ですわ。そうですのね……彼女は、無事だったんですね」
エリーザ様はキレーダが無事だと知り、安堵している。
「何ですと!? キレーダが生きているですと!?」
「バルガル、落ち着いて下さい。彼女の事はまだ全部分かっているわけでは無いのです」
「失礼しました……エリーザ様」
バルガル将軍はあまりの展開に驚いているだけだ。
「それで、キレーダはどこに居るのですか?」
「残念だけどそれは伝えられないわっ。私達もダバール星人には人質が捕らえられたままですからっ。お母さんは、お母さんは無事なのっ!?」
千草がバルガル将軍に詰め寄った。
「貴女は、ひょっとしてみどりさんの娘さんなのですか?」
「みどりさんって……馴れ馴れしく呼ばないで下さいっ、私は北原みどりの娘、千草ですっ」
「みどりさんの……確かに貴女はみどりさんそっくりだ」
バルガル将軍が感心していた。
「安心してください、千草……さん。地球人の捕虜はみどりさんをはじめ、誰一人傷つけてはおりません!」
「信用できないわっ、お母さんを返してっ!」
あらあら、今度は龍也ではなく千草がダバール星人に噛みついてしまったようだ……。
「わ、わかりました。アクラデス指令にお伝えして……みます」
「アクラデス? アンタらのボスはシャールケンじゃなかったのかよ?」
「シャールケン様は更迭されました。今の司令官はアクラデス執政官という男です」
「エリさん、アンタはそのアクラデスってヤツ知ってるのかよ?」
今度は龍也がエリーザ様にアクラデスについて質問してきた。
「アクラデスは……兄上と違い冷酷な男です。彼はデスカンダル皇帝の命令で何でもやります。そう、彼は自分以外の命を何とも思っていない冷血漢なのです!」
――いや、実は少女趣味の女の子で大の可愛いもの好きなんだけどね……。
でもそんな事を言っても誰も信じないだろう。
「アクラデス、ソイツが敵のボスかよ。それで……デスカンダル皇帝って誰だよ!?」
「デスカンダル皇帝は、ダバール星の最高権力者、恐ろしい男の皇帝です」
「へっソイツが敵の親玉ってわけかよ!」
本来ガッダインチームがデスカンダル皇帝の名前を知るのはもっと後半の話だ。
だがこの時間軸ではエリーザ様が生きているので彼女の知る限りの情報は得る事が出来るだろう。
だが下手にその情報を今知られてしまうわけにはいかない。
その情報を知ってしまえば話の流れが大きく変わってしまい、更なる不幸が訪れるやもしれないのだ。
「エリーザ様、そろそろ出発します。最後に一言ご挨拶をなされたらいかがですか?」
「わかりました、ブキミーダ。すぐ出発します」
バルガル将軍とエリーザ様は機動要塞ドグローンに乗り、館山の海を飛び立った。
「龍也サーン、私達、また会えますよねー!」
「エリさーん! オレ、絶対この戦いを終わらせて平和にしてやるよー、その時はー……」
「――龍也ー。何か言いましたかー?」
だがもう声は聞こえなかった。
龍也がエリーザ様に何を言いたかったのかは何となくは分かるが、今はまだその時ではない。
ガッダインチームは館山の海岸から俺達の乗る機動要塞ドグローンが南方に消えていくのをずっと見続けていた。
さて、奇岩島基地に帰ったらアクラデス執政官に帰還の報告をしなくては。




