第二十六話 巨大獣アゴゴン 新幹部アクラデス登場! 9
結局オレは昨日一睡も出来なかった。
横ではマーヤちゃんが充電から起動している。
マーヤはメイドロイドだ。
内燃機関で有機物からでも無機物からでもエネルギーを得る事は出来る。
だが一週間に一度くらいはこうやって充電する必要がある。
むしろそうしてやらないと熱暴走する可能性が有ったりするからだ。
さて、昨日のマーヤの行動パターンを思い出してみよう。
朝、掃除が三十分。
その後はごきげん子どもショーを見る。
朝のワイドショーを見る。
再放送のドラマを見る。
お昼、俺の昼食の用意。
午後のワイドショーを見る。
再放送の海外ドラマを見る
スペースエイリアンで遊ぶ。
夕方のアニメを見る。
夜、俺の夕食の用意、片付け。
アニメを見る。
三十分ドラマを見る。
クイズ番組を見る。
ニュースを見る。
バラエティー番組を見る。
掃除が三十分。
時代劇を見る。
俺の寝る前の準備。
バッテリー充電の為に電源オフ。
――一日の半分以上テレビ見ていない? この子。――
まあ掃除や片づけをする時には常人だと一時間二時間かかる部分を三十分以内で終わらせるので優秀といえば優秀なんだが、まあ本来がマーダーロイドとして作られているので身体能力の高さはお墨付きだからなぁ。
昨日はこの奇岩島基地自体が休みだったわけで……。
まあそうなった理由はダンダル軍務卿の恐怖のリサイタルのせいなんだが。
さて、それじゃあ俺もそろそろ起きて作業を開始するか。
今回は特にオレが巨大獣を作る事もないので北原未来要塞ベースのガッダインチームの様子を確認するとしよう。
俺は昆虫型スパイドローンで様子を探ることにした。
どうやらガッダイン5の大幅修理、改造が終了したようだ。
「みんな、集まるんじゃぞい」
代々木博士が作戦指令室にガッダインチームの全員を集合させた。
「おっちゃん、どうしたんだよ」
「誰がおっちゃんじゃぞい! 龍也、三島長官が今どこにいるか青木大尉から連絡があったぞい」
どうやらミザーリンが今三島長官の姿のアイツがどこにいるのかを調べてくれたようだ。
「アイツは今どこにいるんだ! エリさんは無事なのか」
「ワシはその為に世界防衛会議の開催の準備で出かけておったんじゃぞい、最近の三島は防衛軍本部としてもあまりにも蛮行が見過ごせんという結論が出てのう。長官更迭も視野に入れた話し合いを今度行う事になったんじゃぞい」
これは想定外の話だ。
本編でこんな流れはあり得なかったのでよほど防衛軍や世界連合が三島の姿のアイツをそのままにしておけないという事になったのだろう。
「それでその会場となるのは……熱海の温泉ホテルじゃ。お前達には護衛として付いて来てもらうぞい」
あらららら、原作の話がこうなりましたか。
熱海の温泉回、原作ではインターバルというか息抜きのギャグ回といった雰囲気で……本来仲の悪いはずのバルガル将軍、ミザーリン諜報官、ブキミーダ参謀長の三人組に実験的にアクラデス執政官が与えた変な薬が人格に影響を与え、三人が仲良くなって息抜きに温泉に行く話だ。
この話のブキミーダが善人過ぎて違和感どころか普段以上の嫌悪感を感じた。
原作屈指のカオス回で脚本はシュール特撮に定評の大和沢暁雄が担当した怪作だ。
この大和沢脚本といえば、宇宙に車が家出をしたり、居候宇宙人がラーメンになったりといった不条理特撮と呼ばれるトンデモ脚本で有名だが、ガッダイン5でもそれは健在で、スリッパで卓球勝負をするバルガルと三島長官等のシーンがとてもシュールな話だった。
まあ極端に本編からキャラが逸脱したわけでは無いが、ここで初めてダンダル軍務卿がカラオケによる殺人リサイタルを行ったので壊滅的音痴の騒音兵器という事が知れ渡ったわけだ。
さて、それはそれとして……そろそろ行動を開始するか。




