第二十五話 巨大獣ジャミジャミ シャールケンの出撃 4
「ブキミーダ、ブキミーダ、すぐに謁見の間に来るように」
おや、基地司令代行のエリーザ様が俺を名指しで呼び出しだ、一体何の用だろうか?
謁見の間に向かった俺は、エリーザ様に無茶ぶりをされる事になった。
「ブキミーダ、私を行方不明にしてもらえませんか?」
「えええええぇぇぇえ!?」
意味が分からないです、何か悪いモノでも食べましたか? エリーザ様。
「エ、エリーザ様……一体何を言っておられるのですか?」
「私、この地位にうんざりしたのです。お兄様が不在だから引き受けましたが何と言うか……退屈で」
あの、退屈だとかで指令の地位放り投げないで下さい……と言いたいところだが、本来彼女はシャールケンがいない間の代行で命令を出していただけで本来帝王学を学んでいたわけではない。
まあそう考えると確かに地位を離れたいがその方法として行方不明というのは使えるかもしれないが、ハッキリ言ってお勧めできない。
まずは、シャールケンが本編通りならあと数日で帰ってくる。
それにエリーザ様が一番会いたい龍也に会いに行くのに本編だったら理解者になってくれたかもしれない三島長官は中身がアイツになっている。
そう考えると絶対にエリーザ様を龍也に会わせるのは危険としか言えない。
まあだからといってエリーザ様と龍也の接点を作らなければ、地球人とダバール星人の友好関係を作るのには決定的な何かが足りない。
今実際に、バルガル将軍と北原みどりさん、玄太郎とキレーダという異星人同士の恋愛関係は成り立っている。
だが、これが王族に連なるエリーザ様と地球最強のロボットパイロット紅井龍也となるとイメージが全く違う。
上手く行けば二つの星の戦争を終わらせるだけのきっかけになるが、下手すれば王族であるエリーザ様を地球人が間違えても殺したりしてしまった日には星間戦争の泥沼化確定だ。
だから前回も三島の姿をしたアイツがエリーザ様を亡き者にしようとしたのだろう。
困ったもんだ、だがここでせめて息抜きくらいさせなければエリーザ様が本当に立場を放り出してどこかに行ってしまうかもしれない。
仕方ない、ミザーリンに協力してもらって龍也とエリーザ様を会わせるようにしよう。
もしシャールケンがそのタイミングで帰還してしまったなら、基地司令として前線に出る事も必要だとデスカンダル皇帝が言っていた事にすればいい。
実際腰ぎんちゃくのブキミーダが何か言えば思慮の浅いデスカンダル皇帝は考えもせず頷くだけだ。
それでデスカンダルの命令だという事にしておけば、シャールケンの怒りは俺よりもデスカンダル皇帝に向かう事になる。
――シャールケンがデスカンダル皇帝を裏切る理由。
そう、それが本編の七話でエリーザ様を死に追いやった事、それを画策したのはブキミーダ、彼の入れ知恵だったのだ。
――つまり……デスカンダル皇帝の妻になれという命令を拒否したエリーザ様は、ブキミーダに言葉巧みに兄のいる地球の前線に慰問の為訪れるように言われ、疑いもせずそのままデラヤ・ヴァイデスに向かった。
そして地球とダバール星の戦争を悪化させて地球を征服したいデスカンダル皇帝は、プロポーズを拒否したエリーザ様をブキミーダに始末させようとした。
その犠牲になったのが何も知らずに踊らされたエリーザ様だったわけだ。
本編の三十七話でブキミーダを締め上げたシャールケンは妹を誅殺したのがデスカンダル皇帝だと知り、また……自身の父を殺したのも彼だと知り、デスカンダル皇帝に反旗を翻す。
本編ではブキミーダはデスカンダル皇帝の言いなりに動くだけの小物だった。
だからブキミーダの悪事は、デスカンダル皇帝が命令していると思われても間違いではないのだ。
そういう風にしておいてエリーザ様を龍也と早く会わせてしまおう。
急がないと時間があまり無いのだ。




