第二十四話 巨大獣グルルガ 超電磁プロペラ破れたり 3
俺はスパイドローンを九州の田舎に残し、キレーダと巴の二人の会話を見ていた。
「ゲンタローさん……」
「玄太郎、玄界灘のように強く、父ちゃんのように立派な男になれ。オラが付けた名前じゃ」
「お母さま……」
「レイちゃん。アンタ幸せだね、玄太郎は立派な男になったよ、父ちゃんが今のアイツを見たら喜んでくれるだろうね」
巴さんは遠くを見ながら話を続けた。
「オラは昔東北の方におったんじゃ。そしてオラは柔道の武者修行として花の都東京に出た。そこで父ちゃんに会ったんじゃ。オラ、それまで自分は無敵だと思っておった、じゃが父ちゃんはそんなオラを投げ飛ばし、実力の差を見せつけたんじゃ」
これはガッダイン5大百科でもかなり後半の部分に載っていた話なので本編を見ていても知らない人は多いだろう。
流石はスポ根作品に定評のある長富監督だと言える。
「その後オラは何度も何度も父ちゃんに戦いを挑んだ、そしていつしか父ちゃんの事を好きになっておったんじゃ。そしてオラは教師の仕事を辞めて父ちゃんの実家のあったここ熊本に移り住んだんじゃ」
「お母さま。昔……強かったんですね」
「オラ、今でも現役で通用するくらいは強いぞ。ほら! ア、あイタタタタッ こ、腰が……」
どうやら巴さんは腰をいわせてしまったらしい。
それをキレーダが支え、どうにか立ち上がったようだ。
「ふう、年は取りたくないものじゃな。でも、年を取って良かったこともあるわい」
「え? それは……?」
「オラの孫、思ったより早く見れそうじゃ。レイちゃん、オラのせがれの事、よろしく頼みます」
巴さんがキレーダに深々と礼をしていた。
それを見たキレーダが顔を真っ赤にして手をバタバタさせている。
「そ、そんな……孫だなんて、わ、わたし……」
「なんね、今すぐじゃないわい。レイちゃんには今からやってもらう事があるからな」
「え? わたしが……何を?」
巴さんは鍬をキレーダに手渡した。
「ほれ、野良仕事を手伝うんじゃ。コレも花嫁修業じゃからな」
「お母さま……はい! 喜んで!」
キレーダがニッコリと微笑んだ。
「本当にええ子じゃ。玄太郎、立派になって戻って来いよ……」
「ゲンタロー……さん」
「オラの花嫁修業は厳しいぞ。レイちゃん、覚悟するんじゃな」
「はいっ! お母さまっ」
そして巴さんが何か呟いた。
「健太」
「え?」
「亡くなった玄太郎の父ちゃんの名前じゃ。もし男の子が産まれたら、この名前を付けてやりたいんじゃ」
「……はい! お母さま、わたし、頑張ります!」
二人がニッコリと良い表情で笑いあっている。
さて、これでもうキレーダの事は安心して良さそうだな。
俺は一旦スパイドローンの映像を切った。
まあ当面九州の方は問題無さそうだ。
さて、これでようやく次の作戦に取り掛かる事が出来る。
しかしまた原作と大きくずれ込んだものだなー。
本来のガッダイン5の二十四話は……。
落ち込んだ玄太郎はしばらく食事が出来ず、十キロ近く痩せてしまった。
それは先日倒した巨大獣ミラミガに乗っていたのがキレーダだったと分かってしまったからだ。
三島長官はそんな彼に、――ワシは知覧の寮で隣の部屋の戦友が一人二人と笑って旅立って逝ったのを何度も見た、そしていつかは会おうと約束しておった。だが、いざワシの順番が来るという時に、戦争は終わりを告げたのじゃ。ワシは悔やんだ。旅立って逝った仲間との約束を果たせないまま生き恥をさらす事になってしまったからだ――
と昔話をした。
――生きる事は戦う事、生き残った者は死んでいったものの為に生きなければならんのだ。お前があの娘、キレーダさんを思うなら生きろ、それが彼女への手向けになるのだ。――
三島長官は本当の特攻隊上がりだからこそ、この重い言葉を言えたのだろう。
そして玄太郎はキレーダの事を吹っ切る為、一層修行に取り組むようになった。
だが、精神的に弱っていたのに無茶をした玄太郎が風邪で身体を壊してしまったのがこの話だ。