第二十四話 巨大獣グルルガ 超電磁プロペラ破れたり 1
キレーダは、北原未来要塞ベースに到着するとすぐに集中治療室に担ぎ込まれた。
このままでは命が危ない状態だ。
その後、彼女の手術は一日半にわたって医療班が全力を持って取り組んだ。
玄太郎はその間、何よりも大好きな三度の食事も忘れ、じっと集中治療室の入り口に座り続けていた。
手術中のランプが消えたのは、一日半後だった。
「代々木博士! 彼女は、キレーダさんはどうなっとるんですたい!」
「玄太郎君、落ち着いてくれ。まだ峠を越しただけじゃぞい」
「そんな……」
「じゃが安心していい、後は時間が経てば回復するじゃろうて、だからもう部屋に戻っても大丈夫じゃぞい」
だが、玄太郎はそれでもそこから動こうとしなかった。
千草がサンドイッチを差し入れしたが、それでも玄太郎は水一滴すら飲まずにキレーダの事を案じていたのだ。
「玄太郎君、中に入ってみるか?」
「代々木博士……本当に、良いんですか?」
「ああ、ただし絶対安静じゃからな。大声を出すんじゃないぞい」
玄太郎が集中治療室に入ると、ガラス越しの向こう側に目を閉じて寝ているキレーダの姿があった。
「打てる手は打った、後は彼女の意識次第じゃぞい。まあ不幸中の幸いと言えるのはあの洗脳ヘルメットが未完成品だった事じゃぞい。だから助かったが、アレが完成品だったらもう脳の修復は不可能じゃったじゃろうな」
「博士……」
代々木博士の隣にはケン坊が荷物持ちとしている。
「しかし三島のヤツ……あれほどの人でなしだったとは、まるで別人じゃぞい! 儂の見る目が無かったのかのう……」
「代々木博士、あの長官、ひょっとして本当に別人が成りすましているかもしれませんよ」
「ケン坊君、それは……どういう事じゃぞい?」
まさかここでこの展開になるとは!
「確か長官って護衛していた国連事務総長の飛行機事故から奇跡の生還を果たしたんですよね。その際に別人が入れ替わったとか……」
「ケン坊君! 一体どこでそんなトップシークレットを知ったんじゃぞい!?」
そりゃあ本人なら知っていても当然だろう。
実際国連事務総長の爆殺事件は歴史上で起きた事実だ。
「すみません、博士のデータベースを掃除している時に……」
「そうか、その話は一切他言無用じゃぞい!」
ケン坊の姿の三島長官はどうにか話をごまかしたようだ。
「じゃが、あの三島長官がニセモノだとは、整形にしてもあそこまで本人そっくりに作るテロリストがいたというのか……、まさか! ダバール星人はその時点から地球侵略を狙っていたのか!?」
――いや、そんな展開は原作でもあり得ないので……。
「まあいい、この事は儂の中だけに留めておこう。ケン坊君、キレーダさんの様子はどうじゃぞい」
「はい、もう後は目を覚ますまで時間の問題かと思います」
そして、実際彼女が目を覚ましたのはその一日後だった。
緊張の糸の切れた玄太郎はその場で三日間寝てしまったようだ。
そして、玄太郎が起きた後、ガッダインチームの全員がキレーダの病室に訪れた。
「あなた方がわたしを助けてくれたのですね」
「キレーダさんっ。貴女、これからどうするのっ?」
「軍に……いえ、もう戻れませんわね。わたし、これ以上あなた達地球人と戦いたくはありませんから」
キレーダはもうダバール星の軍には戻る気は無さそうだ。
そうだろうな、これだけ優しくしてくれた地球人とこれ以上戦うわけにもいかないのだろう。
「それならここにいればいいじゃんかよ! オレ達と一緒にいようぜ」
「おい、龍也。それじゃあいつまた奴さんがキレーダさんを連れ去ろうとするかわからないぞ」
「そうじゃのう……ここにいるとキレーダさんがまたいつ襲われるか」
キレーダが悲しそうな顔を見せた。
「良いんです。わたしはここを出ていきます。皆様にこれ以上ご迷惑をお掛けするわけにはいきません……わたしは一人でひっそりと暮らします。皆さん、本当にありがとうございました」
「待って下さい! キレーダさん! オイ、オイは……!」
玄太郎が真剣な表情でキレーダの目を見つめていた。




