第二十三話 巨大獣ミラミガ 反射攻撃の罠 8
「儂じゃ、代々木じゃ。三島長官、一体どうしたもんじゃぞい?」
「代々木博士、今そちらに敵のスパイをかくまっているはずだ。もう調べはついている、早急に防衛軍極東司令部に引き渡してもらおうか」
「オイオイ、何をいきなり言い出すんじゃ、そんなもんはおらんぞい」
どうやら原作の流れを知っている三島長官の中のアイツはキレーダが北原未来要塞ベースで保護されている事に気が付いているようだ。
「隠し立てすると後々大変な事になるぞ。防衛軍の隊員をそちらに向かわせた、速やかにダバール星人のスパイの女を引き渡してもらおう! これは長官命令だ」
「ま、待つんじゃぞい。まだあの娘は不時着のショックで動ける状態ではないのじゃぞい……」
「そんな事は知らん、医療班ごと連れて行けば良かろうが」
マジでコイツって人の事考えないよな。
「ま、待つんじゃぞい……無茶な事をしたら……」
「もう防衛軍の隊員をそちらに向かわせた、すぐに引き渡せ。これで通信を終わる!」
そう言うと三島長官の姿のアイツはさっさとテレビ電話を切ってしまった。
「ふう、困った事になってしまったぞい。とにかくあの娘を守ってやらんと」
代々木博士はすぐに医療室に向かった。
そこではリンゴの皮をむいてキレーダに食べさせようとしていた玄太郎の姿があった。
「これ、食べてほしいたい」
「お前、本当に良い奴だな。敵じゃ無ければよかったのに……」
「オイ、アンタの事を敵だとは思っとらんたい」
「キレーダ……」
キレーダが自分の名前を玄太郎に伝えた。
「え?」
「わたしの名前だ。アンタではなく、わたしの事はキレーダと呼んでほしい」
「キレーダさん。とても良い名前たい。オイは大岩玄太郎と申しますたい」
「ゲンタロー……」
いい雰囲気だな。
この二人が将来的にくっつけば、龍也とエリーザ様だけでなく、地球人とダバール星人の信頼関係を作ってもらえるかもしれない。
「キレーダさん、オイ……実はアンタに惚れてしまったみたいですたい……」
「え? ゲンタロー、お前……」
何だか恥ずかしそうにキレーダはシーツを深くかぶってうずくまって反対側を向いてしまった。
なんとも初々しい光景だ。
だが、そんないい雰囲気は一瞬でぶち壊されてしまった。
「大変じゃぞい! 玄太郎君、すぐにその子を連れてここを離れるんじゃぞい!」
「代々木博士、一体何があったですたい!?」
「話は後じゃぞい、とにかくその子を連れてすぐにここを離れろ」
これは原作に無い流れだ、むしろ原作では三島長官が――ダバール星人の女だと、きちんと傷が治るまで面倒を見てやれ。話はその後だ――と彼女の事を労っていたくらいだ。
「兄ちゃん、こっちだよ!」
「おおケン坊どん。かたじけないですたい!」
玄太郎はキレーダを背中におんぶし、普段おタケさんの使っている勝手口から外に出た。
だが、そこにはすでに防衛軍の隊員が待ち伏せしていて、彼等を取り囲んだ。
「長官のご命令だ。即刻そのスパイの女を捕まえろ!」
「そうはさせんですたい!」
「ワシも加勢してやる!」
玄太郎と鉄モップを持ったケン坊が防衛軍の隊員相手に大立ち回りを見せた。
だが、隊員の一人がキレーダを捕まえ、彼女に銃を突きつけた。
「動くな、動けばこの女の命はないぞ!」
「くっ、仕方ないですたい……」
「この卑怯者! ワシは防衛軍の隊員をそんな風に育てた覚えはないぞ!」
「うるさい奴らだ、大人しくしていろっ!」
大勢の隊員に押さえつけられた玄太郎とケン坊の目の前で、キレーダは防衛軍の輸送機に連行されて行った。
「ゲンタロー! ゲンタロォー!!」
そしてキレーダを乗せた輸送機は地球防衛軍極東司令部目掛けて飛んでいった。
俺はとりあえず一体の虫型スパイドローンを輸送機に乗せる事に成功し、様子を探る事にした。