第二十三話 巨大獣ミラミガ 反射攻撃の罠 4
「お父さま、そういえばコレを預かって来ましたわ」
「こ、これは!?」
キレーダが俺に渡したのは、超弾性金属、――超金属ミラニウム――の設計図だった。
これは本編でも彼女が奇岩島基地に持ってきたもので、ダバール星宇宙軍技術部長のレイザム主任が作ったモノだ。
本編でのブキミーダはその設計図を使い、巨大獣ミラミガを作った。
その際にわざわざデスカンダル皇帝に――この金属を作ったのはワシです。――とアピールしていたくらいだ。
流石のキレーダもこの父親の態度に眉をひそめていた。
まあそれで呆れていたのは、普段からブキミーダがそんな性格の奴だと分かっていたからの事だろう。
娘にすら呆れられる程の性格、本物のブキミーダがどれ程人間性腐っているかがよく分かる話だ。
だが俺は姿こそブキミーダだが、中身は善良な地球人のロボットエンジニアだ。
本来エンジニアは他の技術者に敬意を表するものだ。
「素晴らしい! これは一体誰が作ったのだ?」
「お父さま、これは宇宙軍の技術部長、レイザム主任が作ったものですわ」
一応もう知ってるんだけどね。
ここはあえて知らなかったふりをしてあげるのも、優しさってモノだ。
レイザム主任はこの超弾性金属ミラニウム制作に命を懸けていた。
彼は病弱で余命いくばくも無かったが、親友であるシャールケンの地球征服の手伝いをしたいと自らの身体に鞭打ってこの超弾性金属ミラニウムを作り上げたのだ。
だが、無理の祟ったレイザム主任はこのミラニウムを完成させた後、帰らぬ人となってしまう。
これはいくら俺が物語を改変しようとしても無理だろう、ここからダバール星まで行っている間に物語が終わるし、あの三島防衛長官の姿のアイツが何をしでかすかわからない。
「そうか、それで……レイザム主任は?」
「それが……」
そうか、やはり亡くなってしまったのか……。
「この超弾性金属の研究途中に食中毒でお腹を壊してしまい、入院してしまいまして、実はまだこれ未完成なんです」
なんじゃそりゃー!?
「どうやら研究途中で数日食事するのを忘れていて、思い出したかのように食べたらそのものが腐っていたらしく、すぐに病院に担ぎ込まれてしまったみたいですわ」
……なんでこうなるかな?
まあ死ななかったなら問題無いが、それでも何だか情けない話だ。
――という事は、この超弾性金属ミラニウムは未完成品か!
仕方ない、俺が続きを研究してどうにか完成させなくては……。
俺は超弾性金属ミラニウムの設計図を見て生成機に入れた。
この万能生成機、今でいう3Dプリンターみたいなもので、これに設計図を入れる事で実際に金属を生成できるわけだ。
そして完成した超金属ミラニウム、これはちょっとした反動を跳ね返し、また、鏡面加工の表側は光学系兵器すらも反射するモノだった。
「やった、成功だ!」
「お父さま、凄いですわ!」
「そうだな、レイザム主任に完成した事を超亜空間通信で伝えてやろう」
あれ? キレーダがきょとんとした顔をしている。
「お父さま。変わりましたわね。前はもっと人の事なんて考えた事無かったのに」
しまった! つい俺のお人好しの本心が出てしまった。
まあ何だ言っても技術者は技術者をリスペクトするもんなんだよな。
「そうですー。ご主人様はとーっても良い人なんです。これまでもミザーリンおねー様やエリーザ様を助けたり、バルガル将軍の部下の人を助けたり、ご主人様がいなければみんな死んでたかもしれないんです」
まあ間違っちゃいないけど、でもどう考えてもそれって本物のブキミーダの行動じゃないよね。
でもそのマーヤちゃんの言葉を聞いてキレーダが俺を見て目をキラキラと輝かせていた。
何だか俺、彼女の変なスイッチ入れてしまったかな……。