第二十三話 巨大獣ミラミガ 反射攻撃の罠 3
キレーダは自らが父親に政略結婚の道具にされると思い、軍に志願した。
そして士官学校に入った彼女は優秀な成績を収め、宇宙軍所属になった。
宇宙軍はダバール星でもごく少数のエリートだと言える。
つまり、シャールケンやバルガル将軍はこの星でもトップクラスの実力者というわけだ。
そのエリート中のエリートがいくら頑張っても勝てないのがガッダイン5というわけだ。
ハッキリ言えば龍也とか玄太郎がそんなに成績や頭がいいとはとても思えない。
だが彼等には突出した運動神経や抜群の戦闘センスがあるのも事実だ。
そうでなければ二十二話までずっと巨大獣が勝てないわけが無い。
まあ、本編とは違い何話かは巨大獣がガッダイン5に倒されるわけでは無い話もあるのだが……。
「お父さま。何かありましたか?」
「い、いや。特に何でもない、単に考えごとをしていただけだ」
「そうなのですね」
さて、どうにか誤魔化さないと。
「そ、そうだ。キレーダ、何か食べたいものはあるか? ワシが用意してやろう」
「そうですわね、最近軍の宇宙食ばかりでしたから……新鮮な何かが食べたいですわ」
そう聞いた俺は海で採れた新鮮な魚をさばいて刺身にしてキレーダに出してやった。
「さあ、食ってくれ。海で採れた新鮮な魚だ」
「え!? これ、食べ物なの?? 生って、お腹壊さないかしら??」
しまった、どうやら本来のダバール星人に地球人の刺身やカルパッチョといった生魚の料理の概念は無かったらしい。
「だ、大丈夫だ。問題無い。これは今朝捕れたばかりのものだ」
「そうなのですわね、それでは……貰いますわ」
いただきます、という文化はダバール星には無いみたいだ。
ここで下手な行動をすれば俺は確実にキレーダに疑われる。
「ご主人様は凄いんですよ、最近は自分でも料理するんですから」
頼む、マーヤちゃん。これ以上俺のブキミーダとの別人要素をバラさないで……。
「え? これってお父さまが命令してそこのメイドロイドに作らせたものじゃないの?」
「いいえ、ご主人様は何でもできる方なんです。先程はテレビも直してくれましたし」
マーヤちゃん! マジでいらん事言わないでっ!!
ほら、キレーダが何か興味を示しちゃったじゃないの。
「テレビ? 何ですかそれ??」
「テレビはとっても楽しいものですー。ご主人様はそれをここで見れるようにしてくれたんですー」
そう言ってマーヤちゃん、勝手にテレビの電源を入れてしまった。
キレーダがテレビの画面を見てビックリしている。
「何なのですか? コレ。戦闘記録映像にしては随分と雑みたいですが……」
テレビ画面に映っていたのは再放送の海底大戦争スクイードだった。
そりゃあ海外製SF人形劇を戦闘記録映像だと思われても困る。
だがどうやらキレーダはその映像を食い入るように見ている。
どうも興味を持ってしまったらしい。
「お父さま、地球人ってあんな肌の色で手や足に何かの糸が付いて動いているんですか?」
そうか、キレーダはまだ地球人を見たことが無いのか。
それだとあんな変なものだと誤解してもおかしくない。
「い、いや。あれは人形だ。本物の地球人は捕虜収容所やロボット格納庫等で作業中だ」
「そうなのですね、アレは人形だったと、それだとあの人形が乗っていた地球人の乗り物、アレは宇宙船の一種なのですか?」
いや、アレは万能原子力潜水艦。
そうか、ダバール星本星には海はあっても潜水艦という概念の乗り物は存在しないか。
「そ、そうだ。アレは海にも潜れる万能宇宙船というヤツだ」
「そうなのですね、お父さま。わたし達の敵はそんな武器を持っているのですね」
何か誤解をさせてしまっているようだが、これをキレーダにわざわざ説明している時間は無さそうだ。