第二十一話 巨大獣ダングル バルガル将軍の怒り 9
「龍也、どうするんだ? どうやら罠とかではなさそうだが」
「流、オレはバルガル将軍を信用する。アイツは卑怯な事をやるタイプには見えないんだ。あのブキミーダとかいう奴は信用できないけどよ」
あの、その中身のヤツ、今は三島防衛長官の中に入り込んでるんですが……。
俺、ただの善良な元地球人のエンジニアよ。
「龍也さんっ、それじゃああのバルガルさんって人の話を聞くのねっ」
「ああ、千草。オレ達は正義の味方だからな。地球を守るのがオレ達の使命なんだろ」
ガッダインチームはどうやらバルガル将軍の提案を受け入れたようだ。
「かたじけない、協力……感謝する」
「ああ、一時休戦だな、それで……一体どうするつもりなんだよ」
「アレを見て欲しい」
バルガル将軍がバルソードを空に向けると、そこに見えたのはウルフ要塞だった。
――ウルフ要塞――
鉄巨人イチナナに登場した――ウルフ・ヘミングウェイ博士――の作った巨大要塞。
巨大頭脳ブレイン総統の超生産能力で作られた巨大要塞で、鉄巨人イチナナのグラビトンブラストですら倒せない強敵だった。
何故なら重粒子バリアで包まれているため、グラビトンブラストを使っても出来るのは重粒子バリアを剥がすだけ。
しかし一度バリアを剥がしてもその都度バリアを再度発生させる為、鉄巨人イチナナだけでは倒せない。
中盤以降でデビル回路に不具合が出て味方になったアインアハトこと鉄巨人イチハチとの協力攻撃、ダブルグラビトンブラストでようやく重粒子バリアを剥がした後に重粒子バリア発生装置をグラビトンブラストで収縮爆発させ、ようやくダメージを与えられた。
だがそれで倒せたわけでは無く、あくまでもバリア装置を潰せただけだった。
それで、確か本編ではこのウルフ要塞の最後はウルフ博士が巨大頭脳ブレイン総統に逆らった事でエネルギー供給を断たれ、空中に浮いていたウルフ要塞は制御を失い墜落して内部から崩壊し、ウルフ博士は要塞もろとも残骸に押しつぶされて圧死した。
俺は本編を見ていて悪党の最後としてはあっけない退場に唖然としたものだ。
「バルガル将軍殿、あの要塞を倒すには鉄巨人イチナナとアインアハトの力を借りないと無理だ!」
「何!? ブキミーダ殿、それは本当か」
バルガル将軍が俺の話を聞いて驚いていた。
「――わかった、吾輩が彼奴らを説得してみよう。鉄巨人イチナナ殿、そしてアインアハト殿よ、吾輩達に力を貸してもらえるか!」
「……フジ子、聞イテクレ……」
「ワカッタ、僕ノ力ヲ貸ス、地球ヲ守ル為ダ。ウルフヲ倒サナケレバ!」
アインアハトは説得に応じ、鉄巨人イチナナはフジ子次第だと言ってる。
「イチナナ、皆に協力してくれる?」
「ラー……ジャー」
鉄巨人イチナナの目が青く光った。
「これで協力体制が出来上がったようだな。それでは吾輩は巨大獣バルバルでウルフ要塞を引き付ける。イチナナ殿とアインアハト殿はグラビトンとやらであの要塞に穴をあけてくれ。そしてガッダイン、お前の必殺技であの巨大ミサイルを破壊してもらえるか!」
「ラージャー……」
「ワカッタ、僕ガアノ要塞ノシステムヲ止メル!」
巨大獣バルバルは攻撃を引き付け、ガッダイン5は要塞の下に移動し、ビッグミサイルを発射できる体制に入った。
「ちょっと待ってくれ! バルガル将軍殿!」
「おや、ブキミーダ殿、どうしたのだ?」
「無理だ、ガッダイン5のビッグミサイルだけではあの要塞を破壊する事は出来ない」
「何だと!? それではあの巨大ミサイルを地球に撃たれるのをみすみす見ていろという事なのか!?」
まあバルガル将軍がそういうのも想定はしていた。
「いや、違う。少し勿体ないが、巨大獣ダングルをビッグミサイルで吹き飛ばし、その勢いであの巨大要塞に搭載された破滅ミサイル水爆砲を破壊するんだ」
「なるほど、そういう事か。わかった、それでは吾輩がガッダインに伝える!」
バルガル将軍がガッダインチームに語りかけた。