第二十一話 巨大獣ダングル バルガル将軍の怒り 3
とにかくまあ、本来の二十話で死ぬはずだった戦士ボボンガは俺が強制的に巨大獣の首を脱出装置にした事で傷ついては居るものの命に別条はない。
今はメディカルポッドで治療中だがそれが終われば普通に動けるようになるだろう。
そうなると、本来の二十一話で戦士ボボンガの敵討ちをするはずだったバルガル将軍だが、別に敵討ちにはならないので率先して攻撃に出る事も、巨大頭脳ブレイン総統を敵だと認識して攻撃する事も無いだろう。
そう思って安心していた俺のコンピューターに巨大頭脳ブレイン総統からのメッセージが届いていた。
――親愛なるブキミーダくん、御機嫌よう。先日は残念だったね。まさかアインゼプトが現れるとは、だがおかげでわたしはある事に気が付いたよ――
巨大頭脳ブレイン総統が言っているある事とは一体?
――そう、それは……わたしの敵はキミ達ダバール星人では無く地球防衛軍だという事だ。そこでキミにはダバール星人を代表してわたしに協力をしてもらいたい。その為のプレゼントは用意してある――
プレゼント、間違いなくデビル回路の事だな。
――わたしの作ったデビル回路の設計図だ。これはアインアハトに使われている物と同じで、ロボットの性能を一時的に1.5倍に増幅する事が出来るのだよ。コレを使えばキミのロボットは飛躍的にパワーアップできる。――
これで喜んで飛びついたのが原作のブキミーダだ。
このデビル回路に巨大頭脳ブレイン総統への絶対服従プログラムが備え付けられてい有る事も知らないままアイツは喜んで巨大獣ダングルにこれを取り付けた。
それが後々に自らを苦しめ、ダバール星人の裏切者扱いされる事も気づかないまま……。
だが俺は鉄巨人イチナナの最終回まで見ているので、このデビル回路の弱点を知っている。
それは、――エンゼルの笛――と呼ばれるメロディーだ。
アインアハトは破壊ロボットして何度となく鉄巨人イチナナと戦ったが、ある時、一人の少年を偶然救う事になってしまった。
彼はサブロウ。
サブロウはアインアハトと会話をし、ボクも人間は嫌いだけどこの地球は好きだという言葉で彼の友達になった。
そのサブロウが吹いたオカリナの笛の音、それが何故かアインアハトを苦しめる事になった。
それは、その笛の音の音階がデビル回路に不具合を生じさせ、作動不能にさせたからだ。
デビル回路の焼き切れたアインアハトはサブロウを助け、鉄巨人イチナナの説得に応じ鉄巨人イチハチとして生まれ変わった。
――このようにデビル回路を無効化する笛の音、俺はそれを覚えている。
だから巨大獣ダングルに取り付けたデビル回路の横にこの笛の音を出すオルゴールを設置した。
もし万が一巨大獣ダングルが巨大頭脳ブレイン総統に操られた際にコントロールを取り戻す為だ。
「ご主人様ー。この曲、何だか良いですね。聞いていると何だかポカポカしてきますー」
「あら、マーヤちゃん、この曲気に入ったの?」
「はい、何だか歌いたくなってきましたー」
え? 勘弁してくれ。
確かマーヤの歌声って原作でもあったけど超絶怪音波になって窓ガラスが割れ、更にコンピューターに異常を生じさせたはず。
「せいぎのいかりがおーれーをよーぶーー♪」
「やめてくれー!」
マーヤちゃんの超絶怪音波が俺の部屋に鳴り響く。
――ブキミーダくん! 一体何かね!? この不協和音は……わ、わたしの演算が……バグを起こしてしまう! これはたまらんっ!!――
あまりの酷さに巨大頭脳ブレイン総統は俺との通信を断ち切り、自らへのダメージを軽減させたようだ。
しかしこのマーヤちゃんの超絶怪音波、下手すれば何かに使えるかもしれない。
俺は耳栓を用意して録音機をセットした。
それを見てノリノリのマーヤちゃんはまだ全然歌い足りないようだ。