第二十一話 巨大獣ダングル バルガル将軍の怒り 1
鉄巨人イチナナとアインアハト、本来敵同士の二体の兄弟ロボットの協力により、三島長官の姿のアイツの企んだ重粒子ミサイルによる一網打尽作戦は水泡に帰した。
「オオウ。ナンテコッタ! イチナナとアインアハトが協力しただと! ガッデム!」
ウルフ博士は想定外の結果にブチ切れていた。
あまりのブチ切れぶりに愛用のパイプを地面に叩きつけたくらいだ。
「ウルフ博士、このままではオレ達が裏切者扱いされます! 早く何か手を打たないと」
「分かってイル、パンサー・キッド。とりあえずココハ撤退ダ!」
パンサー・キッドの操縦するスーパーフォートレスはどことなく撤退した。
その場に残されたのは鉄巨人イチナナ、アインアハト、ガッダイン5、それに……重症の巨大獣ボボンガだった。
「ガッダイン……オレ、マダタタカウ。ショウブ」
だが巨大獣ボボンガはもう既に満身創痍だ。
流石にこのまま戦わせるという選択肢はバルガル将軍も選ぶまい。
「もういい。ボボンガ、帰還しろ。その身体では戦えん」
「バルガルサマ、オレ、マケル、シヌヨリイヤ……」
だがボボンガは戦って死ぬと言ってその場を離れようとはしない。
ガッダインチームもとてもではないがこのまま戦うというわけにはいかないし、一方的に倒すのは正義の味方的に彼等の信条に反する。
仕方ない、ここは俺が付けたあのシステムで強引に戦闘を終わらせるか。
俺は巨大獣ボボンガの遠隔操作装置で頭部を強引に切り離した。
「何だアレ!? 首チョンパかよっ!」
「オレ、イッタイドウナッタ!?」
巨大獣ボボンガの首が外れ、そのまま小型飛行機のように飛んで機動要塞ドグローンに辿り着いた。
「ボボンガ! 無事か!」
「オレ、マケタノカ?」
「いいや、お前は勝った、その上で戻ってきたのだ」
ボボンガが戦闘が終わったと気が付いた時、その場にはガッダイン5の姿はどこにもなかった。
「そうだ、お前がガッダインを追い払ったのだ!」
「オレ、カッタ! ガッダインニ、カッタ!!」
ボボンガはそう言うと気を失ってしまった。
でも良かった、これで巨大獣ボボンガも爆発しなかったのでラゲンツォ(仮)の材料に使えそうだ……。
「ブキミーダよ、あの無事だった巨大獣の胴体、このドグローンで持って帰るので修復を頼むぞ!」
トホホ、世の中そんなに甘くはないな。
機動要塞ドグローンの口が大きく開き、巨大獣ボボンガを咥えた。
そしてドグローンは品川を離れ、奇岩島基地に帰還した。
品川にいた巨大ロボット達は全てが姿を消し、そこに残ったのは新都市開発計画の残骸だけだった。
だが幸いにして死者はいなかったようだ。
原作に比べれば被害は最小限にとどめられたというべきか。
本来の原作だとこの品川は重粒子ミサイルで焦土と化し、数千数万の被害が出ているはずだった。
浜野監督が降板したとはいえ、この時代のアニメのモブへの厳しさはやはりかなりのものだと言える。
だが俺のおかげと言えばそうなのかもしれないが、品川は壊滅的被害は受けても人的被害は無かった。
防衛軍の大尉としてミザーリンが前もって防衛軍本部に品川の人達に緊急避難を指示したおかげだ。
マジでこの世界線のミザーリンは物語に居なくてはならない存在になっている。
彼女がいなければ大勢の罪も無い一般人の住人が犠牲になるところだった。
ボボンガが生き残ったのも嬉しい想定外だと言えるだろう。
何故なら本来の二十一話はボボンガを誅殺したのが巨大頭脳ブレイン総統だと誤認したバルガル将軍による弔い合戦の話だったからだ。
二十一話の見どころは不完全な修理の巨大獣バルバルでバルガル将軍がアインアハトと戦うシーンだ。
だが今回のこの流れではそういう事はならなそうだが、アインアハトは再び現れるだろう。
何故なら鉄巨人イチナナがガッダイン5と共にいるからだ。