第二十話 巨大獣ボボンガ 戦士の誇り 9
第二次世界大戦の骨董品爆撃機スーパーフォートレスに重粒子ミサイルが詰め込まれている。
流石に現役のストラトスフォートレスはいくら長官権限でも持って来られなかったのだろう。
アレはこの時代ではベトナム戦争で使われたばかりの新鋭機だからな。
もし重粒子ミサイルが不具合を起こしてもこの骨董品なら吹き飛んでも被害は大したことが無いと思われているのだろう。
その操縦席には俺の見覚えのある人物がいた。
アレは! ――ウルフ・ヘミングウェイ博士だ!――
鉄巨人イチナナと重粒子増幅炉を作った――ゲオルグ・ヘミングウェイ――教授の息子でフジ子の兄。
科学への探求の野心に憑りつかれた男で、父親を殺して重粒子増幅炉設計図を盗み、西ガリア連邦を脱出してテロ支援国家に逃げた。
そこで知り合った傭兵のパンサー・キッドと組み、日本に潜入して秩父の山奥にあった巨大頭脳ブレインの制作工場に入り込み、ブレインを自らの物としようとした。
だが、雷を受けたブレインは自我に目覚め、ウルフの予想とは反対に彼を自らの手足として、世界征服のコマとした。
どうやらそのウルフはあの三島防衛長官の姿のアイツと組んでガッダイン5もろとも鉄巨人イチナナを葬ろうとしているのだ!
「ハーハハハハー! これで、アインゼプトもおしまいデース!」
ウルフは三島長官の指示でパンサー・キッドと一緒にスーパーフォートレスに乗っているようだ。
いかにもインチキ外国人と言った風貌のウルフが笑っている。
重粒子ミサイルが放たれたのだ。
「ナンダアレ、オレノタタカイ、ジャマスルナ!」
重粒子ミサイルの接近を察知したボボンガは大盾を構え、受け止めようとしている。
原作ではそれで盾が重粒子ミサイルを受け止めきれずに瀕死の重傷を負ったが、今のボボンガの盾は俺が設計した小型重粒子増幅炉が仕込まれている。
重粒子ミサイルがボボンガの手前で爆発した!
これで重粒子が辺りに本来なら撒き散らされ、高エネルギーが周囲の全てを破壊する!
――だが、俺の予想通りだった。
「ナンダ、コレ? オドロイタ、タダノオドカシカ」
成功だ! ボボンガの大盾は重粒子をミニブラックホール発生で全部内部に吸収し、エネルギーはそのまま消滅した。
「バカなっ! ありえないっ、重粒子ミサイルが不発だと! 撃て、もう一本撃ってしまえ!」
三島長官の姿のアイツが狼狽えている。
「シット! 今度こそ吹き飛んでしまえデース!」
スーパーフォートレスからもう一本の重粒子ミサイルが放たれた。
ボボンガは再度それを大盾で受け止めようとしたが、盾に異常が発生した!
どうやら重粒子増幅炉の制御はまだ完全ではなかったらしい。
ボボンガは大盾ごと吹っ飛ばされた。
「龍也、あれをどうにかしないとこの辺り全部吹き飛ぶぞ!」
「わかってる、流! ビッグミサイルで迎え撃つぜ」
「ダメです! ビッグミサイルであれを迎撃すれば、この辺り一帯数十キロが焦土と化してしまいます!」
ガッダインが手を出せずにいて、頼りのボボンガの盾は壊れて使えない。
万事休すだ。
ここでフジ子が叫んだ!
「イチナナ、グラビトンブラストでアレを壊して!」
「ラージャー!」
その時、アインアハトが動いた。
「アレガ爆発スレバ、コノ辺リ一面ガ吹キ飛ブダケデナク、コノ地球ソノモノニ悪影響ダ。アインゼプト、僕モ力ヲ貸ソウ!」
なんと、これが呉越同舟というべきか……!
重粒子ミサイルの迎撃にイチナナだけではなくアインアハトが協力してくれるというのだ。
「ダガ、コノ戦イガ終ワッタ後、我々ハ敵同士、イズレ決着ハ付ケヨウ!」
「ラー……ジャー……」
鉄巨人イチナナの目が青く光った。
その直後、目を赤く点滅させた鉄巨人イチナナの胸が大きく開いた。
アインアハトも胸を開き、ダブルグラビトンブラストの構えだ。
「「グラービトン・ブラースト!」」
重粒子の塊が二つ放たれ、その一つの塊を受けた重粒子ミサイルは内部に収縮しながら爆発した。
その爆発をもう一つの重粒子の塊が吸い込み、ミニブラックホール化してから消滅。
重粒子ミサイルによる地球の危機は二体の巨大ロボによって救われたのだ。