第二十話 巨大獣ボボンガ 戦士の誇り 7
――重粒子増幅炉――
鉄巨人イチナナは重粒子エンジンで動いている。
彼の兄弟ロボットであるアインアハトもそうだ。
この重粒子、別名はバリオンとも呼ばれていて現実社会ではまだ発見実用化には至っていない。
だがあくまでもこのフィクションの世界では天才科学者ヘミングウェイ教授によって発見された高エネルギー粒子という事になっていて、その力は核融合すら上回る設定だ。
巨大頭脳ブレイン総統が俺に提供してくれた重粒子増幅炉はその重粒子を増幅させ、ミニブラックホールとも呼ばれる力を生み出すシステムだ。
俺はこれをあえて攻撃などには使わず、ボボンガのシールドに組み込む事にした。
原作では重粒子ミサイルをどうにか受け止めた巨大獣ボボンガのビッグシールドだが、この中央部分に超小型重粒子発生装置を付ける事で、重粒子ミサイルのエネルギーを奪い取ってしまおうという事だ。
それとボボンガの槍、これももう少し改造して両サイドに刃のついたナギナタに変更した。
戦闘センスの高い戦士ボボンガならコレを使いこなす事も出来るだろう。
そして、これが最大の改造点、頭部の脱出装置だ。
この巨大獣ボボンガ、人工知能では無く操縦席のあるタイプだがその操縦席をあえて胸部から頭部に変更した。
これならもし超電磁スマッシュを受けても頭部を外部から遠隔操作で切り離して脱出させる事も可能だ。
なんだかんだで巨大獣ボボンガの魔改造が終了したのは二日後の事だった。
「お疲れ様でーす」
ミザーリンとマーヤちゃんが作業の終わった俺に差し入れを持って来てくれた。
コレってハンバーガーか?
「テレビのコマーシャルを見て真似して二人で作ってみたんですわ、どうせなら今度一緒に本物の店に行きたいですわね」
マジでミザーリンが原作と違ってものすごく良い女性になっている。
むしろ本来はこんな彼女だったのが環境と過酷な訓練で心を失くす程に追い詰められていたのかもしれないな。
「おお、ブキミーダ殿。遂に完成したか。ボボンガも早く出撃したいと待ちくたびれておったぞ」
「これはこれはバルガル将軍殿、ご覧ください、これが巨大獣ボボンガです」
巨大獣ボボンガの出来を見たバルガル将軍は満足そうな顔をしていた。
「よし、では吾輩はドグローンでボボンガと共に出撃する。ブキミーダ殿よ、後は吾輩に任せるがよい!」
「はい、バルガル殿のご武運をお祈りしております」
「オレ、ガッダイン……タオス!」
バルガル将軍と戦士ボボンガはガッダイン5を倒すべく、機動要塞ドグローンで二本を目掛け奇岩島基地を飛び立った。
さて、そういえば巨大獣バルバルの修復も進めないとな。
しかし今のところはそれよりも三島長官の姿のアイツがいらない事をしないか確認する方が重要だ。
どうせバルバルを修理しても出番はもう少し先だしな。
機動要塞ドグローンは品川近辺の新都市開発計画地区に降り立った。
この頃の品川はまだ埋立地くらいしかない建設予定地ばかりだ。
後の巨大ホテルやテレビ局も無ければ新幹線の駅も無い、そんな場所だった。
「巨大獣ボボンガ、行けっ!」
「ウオオオオ、オレ、オオアバレスル!」
巨大獣ボボンガが暴れ出した。
そこに完成したガッダイン5が到着したのはそのすぐ後だった。
「出たな巨大獣、何だ何だその変な姿はよー! テメーどこかの土人の酋長か?」
「オレ、ボボンガ! イダイナルセンシ」
今じゃ酋長だの土人だのってのは放送禁止用語だが、この時代はまだそういう規制はあまりなかったので龍也の口の悪さは本放送のままだな。
ガッダイン5と巨大獣ボボンガが戦っている時、空の彼方から飛来する銀色のロボットが出現した。
「アレガブレイン様ノオッシャルガッダイン5カ、敵目標……前方ノ巨大ロボ、ガッダイン5、攻撃開始!」
銀色のロボットがガッダイン5目掛け、空からミサイルを発射してきた。