第十九話 巨大獣ゾンゾン 暗闇からの暗殺者 8
箱根に到着した俺達は巨大獣ゾンゾンをドグローンから降ろし、破壊活動を開始させた。
この時期はまだ旅行シーズンではないのでこの辺りは地元民くらいしかいない。
そして俺達はあえて、建設途中の建物を中心に破壊を開始した。
後々有名になるはずだった温泉ホテルが瓦礫の山になるが、仕方ない。
災害に遭ったとあきらめてもらおう。
そして今この建物が壊されれば、もう一度立てる際はスプリンクラーや耐震強度の見直しが必須になるのである意味のグレートリセットだ。
工事現場から作業員が逃げ出す。
まあ夜なので残っている人数は少なめだ。
だから犠牲者には怪我人は居ても死者は出ていないはず。
俺達がそうやって巨大獣ゾンゾンを暴れさせていると、ガッダインチームがダインマシンで到着した。
「やいやいやい、ふざけるな巨大獣! こんな夜に現れやがって!」
「夜更かしはお肌の天敵なのよっ」
「僕、眠いです……」
夜にいきなり出動命令の出たガッダインチームはかなり機嫌が悪そうだ。
まあ仕方ない、彼等もまだまだお子様だ。
俺みたいな何日も仕事現場から帰らない元会社員とはわけが違うからな。
「みんな、さっさと倒して帰って寝るぞ」
「「「「「レッツ……ガッダイン!」」」」」
何だかテンション低いな、まあ仕方ない。
今回はイチナナやブルーマフラー隊はここにいないようだ。
彼等は彼等で今どこかに出動中らしい。
多分巨大頭脳ブレイン総統の破壊ロボットでも出現したのだろう。
彼等は職業軍人だから夜中でも関係なく出動するだろう。
さて、ガッダイン5が合体完了して巨大獣ゾンゾンと戦っているが、これが本編でも見たシュールな光景だ。
見えない敵と戦うのが、どう見てもガッダイン5が独り相撲しているようにしか見えない。
ガッダイン5は見えない相手、巨大獣ゾンゾンの攻撃を一方的に喰らっていた。
「くっそー、姿を見せろ、卑怯者がー!」
「龍也さァん……どうやら、敵は……ふぁぁあ。ステルス機能を持って……いるようですぅ」
「すてるす? 竹千代、それどういう事だ?」
「……へ? ぼく、寝てました? ステルスとはぁ……相手に姿を見せなかったりぃ。レーダーに映らないようにぃ……するぅ、機能ですぅ……zzz」
ダメだ、お子様の竹千代が完全に寝ぼけている。
「つまりは忍者の隠れ身の術ってわけだな」
「もうっ、そんな相手にどうやって戦えっていうのよっ!?」
ガッダイン5は巨大獣ゾンゾンに一方的に攻撃されていた。
「うわぁああっ!」
「龍也どん、オイに任せてください! オイの柔道が役に立つかもしれんたい!」
「玄太郎、わかった。やってみてくれ!」
龍也が操縦の主導権を玄太郎に渡した。
すると玄太郎はガッダイン5の重心を低く構え、その場に立って目を閉じた。
「目に頼るな、相手を見極めろ……でごわす! そこですたいっ!」
ガシッ!!
ゾンゾンの刃物の腕をガッダイン5が掴んだ!
そして重心を低くしていたガッダイン5はゾンゾンをその場に投げ落とす!
バギィイインッ!
「グゲェエエエッ!」
投げ飛ばされたショックで巨大獣ゾンゾンのステルス機能が止まってしまった。
姿の見えた巨大獣ゾンゾンはヒョロ長の機体をガッダイン5に絞められ、身動きが取れない。
こうなっては強化骨格も意味がないだろう。
「いくですたい! これぞ古武術の奥義、地獄車ですたいっ!!」
玄太郎の操縦するガッダイン5が巨大獣ゾンゾンの両腕を抱え込み、足を挟んだ。
「うぅううううおおおおおっ!」
「ガギャギャゲェエエエッッ!」
地獄車は相手の腕を両腕で挟み込み、足を絡めて巨大な車輪状になって相手もろとも自身の身体を回転させる技だ。
下手すれば自身が自滅する可能性もある両刃の剣ともいえる奥義で、相手のみにダメージを与える回転が難しい。
だが玄太郎は確実に巨大獣ゾンゾンにダメージを与え、投げ飛ばしたゾンゾンの内部を粉々のボロボロにした。
そして瀕死のゾンゾン目掛け、玄太郎が叫んだ。
「超、電磁スマッシュですたいっ!」
「ゾォンゾォオオオンッ!」
玄太郎の超電磁スマッシュを受けた巨大獣ゾンゾンは箱根の上空で大爆発を起こした。