第十九話 巨大獣ゾンゾン 暗闇からの暗殺者 7
何故巨大獣が出てきたか?
そりゃそうだろう、俺が真面目に作っていたんだから。
別に俺はここ数日ずっと玄太郎やガッダインチームを見続けていただけではない。
玄太郎が特訓しているシーンとかはわざわざ見る必要も無かったので、その間にちょこちょこと巨大獣ゾンゾンを仕上げていたのだ。
さて、ガッダイン5大百科の巨大獣図鑑によると……。
――巨大獣ゾンゾン――
全長56メートル、重量1150トン
全身ヒョロ長い形の巨大獣で、あまり強そうな外見ではない。
だがこのゾンゾンにはとんでもない能力があり、姿を消す事が出来る。
煙幕とかに隠れるわけでは無く、文字通り周りに溶け込み透明化する能力だ。
ただですら昼間に出てきてもこの能力が使えるのに、夜の暗闇の中で出現しては腕と足の鋭利な刃物を使ってガッダイン5を苦しめた。
だが暗闇の中で戦う技術を身に付けた玄太郎が闇の中の気配を見つけ出し、捕らえて必殺巴投げでぶん投げて玄太郎が超電磁スマッシュでとどめを刺した。
ステルス機能を持っているのは強かったが、全体的に虚弱で打たれ弱く、巴投げで簡単に腕がポッキリ折れてしまった。
まあ改善点としては強化骨格で折れにくくする事だな。
軽量化での俊敏さを犠牲にするわけにはいかない。
ちょこちょこと玄太郎の様子を見ながら作っていたので完成までは少し時間がかかったが、彼等の修業が終わる前に完成してよかった。
「ブキミーダ様。これが今回の巨大獣ですか?」
「ああ、そうだ。これは巨大獣ゾンゾン、姿を透明化する事の出来る巨大獣だ」
「それではわたくしはこれで出撃すれば良いのですわね」
最近ミザーリンの立ち位置がよく分からなくなっている。
流の為には地球防衛軍に味方をし、俺のためと言ってはダバール星人の侵略作戦を進める。
どっちつかずというわけでは無いが、まあ彼女には彼女でやるべき事があるのだろう。
今の彼女は本編の時のミザーリンとは違い、他人を踏みにじる行動は見られない。
むしろ犠牲者を一人でも少なくする事を考えて動いているようだ。
「ああ、頼む。ただし民間人にはできるだけ犠牲者を出さないように頼む」
「かしこまりましたわ。この戦いに意味があるとすれば、それはブキミーダ様が一番理解していらっしゃいますのよね」
ミザーリンは俺が本気で地球征服に取り組んでいない事を薄々と感じている。
むしろ地球とダバール星人の双方の犠牲を最低限にしつつ、どこかで交渉できる落としどころを探っている事まで気が付いているかもしれない。
「ブキミーダ様、それで私はどちらに向かえばよろしいですか?」
「そうだな、箱根に向かってくれ。そこである程度に暴れてくれればそれでいい」
本来は別の場所でも良いのだが、本編で破壊した場所、侵略作戦で侵攻した場所を変更すると三島防衛長官の姿のアイツに色々と裏をかかれかねない。
だからアイツも知っている原作の流れを再現するのが、一番アイツを出し抜く事になるのだ。
あえて原作の展開を再現しつつ、犠牲者を最低限に。
俺はこれで、あの三島防衛長官を無駄に働かせない事により、新たな犠牲者を増やさないようにしているのだ。
「今回は俺もドグローンで向かう。ミザーリン、頼むぞ」
「はい! 喜んで」
「あーん、おねー様ー。ワタシも行きますー」
ミザーリンがマーヤちゃんを見て明らかに顔を引きつらせていた。
まあマーヤちゃんは無意識に意図しないトラブルメーカーと言えてしまうからな。
俺とマーヤちゃんとミザーリンが乗り込み、巨大獣ゾンゾンを載せた機動要塞ドグローンは日本の箱根を目指して奇岩島基地を離れ、空に飛び上がった。
「よし、日本に向かうぞ!」
俺達が箱根に着いた時、辺りはすっかり夜になっていた。