第十九話 巨大獣ゾンゾン 暗闇からの暗殺者 4
「何だい何だい。玄太郎、お前本当に腑抜けてるねぇ。普段なら五杯食べてもお代わりしていたアンタはどうしたいんだい?」
「いや、おばさん。普段なら五杯おかわりしてますよ」
玄太郎はまださっきの事を引きずっていて、まだようやく丼一杯分食べただけだ。
普通の人ならこれでお腹いっぱいといったところだろうが、玄太郎は本来ならここからご飯をおかずにさらにご飯を食べるくらいの食欲だ。
「もう情けないねぇ。オラの野菜が食べたくないのか?」
「そ、そんな事ないばい、オイはかーちゃんの野菜大好きですたい」
玄太郎は無理して一気にご飯を食べようとし、むせてしまっていた。
「もう、汚いねぇ。もう少し落ち着いて食べるばい」
「かーちゃん、すまねえ」
その様子を見て千草が笑っている。
「お母さんか……無事だと良いけどな」
「そうだった、千草、オレ達が絶対におふくろさんをダバール星人から取り返してやるからな」
原作の第二話と違い、今は千草の母、みどりさんはダバール星人の捕虜として今は奇岩島基地にいる。
あのバルガル将軍が彼女にゾッコンで、彼女の為に地球人に手荒な事をしないくらいだ。
まあいずれは話の流れで良いタイミングを狙ってみどりさんを地球人側に返せる時を考えよう。
その際にネックになるとすれば、あの三島防衛長官の姿のアイツだ。
アイツは地球人とダバール星人を何が何でも争わせて双方を破滅させようと考えている。
その展開は何が何でも阻止しなくては。
どうやら食事が終わったようだ。
代々木博士と巴が話をしている。
「お母さん、玄太郎君は地球の為によく頑張ってくれていますよ。彼はチームの要になっています」
「だどもアイツ、日々の稽古ちゃんと出来とるんですか? 熊本にいた時よりよほど鈍っとるように見えてオラ心配ですだ」
代々木博士が彼女の顔を見て何かを思い出していた。
「巴さんって、あの柔道オリンピック代表の大岩選手の奥さんでしたか?」
「はい、オラの旦那がミュンヘンオリンピックの金メダル候補でした。だども旦那は事故で帰らぬ人になっちまい、オラはその願いをせがれに託してモントリオールを目指して日々稽古を科したのです」
確かにこの時代のオリンピックと言えばモントリオールだ。
その次のモスクワというよりは時事的にモントリオールオリンピックを目指すという話ならスポ根で有ってもおかしくない展開。
流石は長富監督というべきか。
「玄太郎君は朝早くから起き、稽古をしてから学校に行き、そして緊急事態にはガッダイン5のダインパンツァーのパイロットしても日々努力してくれていますぞい。お母さん、安心してください」
だが巴はどうも納得できないといった表情だった。
「オラ、もう帰ります。せがれによろしく言っておいてください」
「と、巴さん。もう少しだけここにいてくれませんか? 帰るなら玄太郎君の成長ぶりを見てからでも遅くは無いかと……」
代々木博士が巴を説得している。
まあこれも原作通りの展開だ。
そして、その日の午後、畳の用意された北原未来要塞ベースのホールで柔道の練習が行われた。
本編と違い、今回はブルーマフラー隊も参加だ。
剣崎隊長やガンテツ、フジ子達も柔道着に着替え、巴が柔道の基礎を伝えていた。
「いいかい、アンタ達。柔道ってのは力で投げ飛ばすもんじゃないんだよ。相手の力をいかに使って少ない力で相手の重心を崩すか、それが大事ばい」
そう言って巴は玄太郎を自分の相手に決め、一気にその巨体を投げ飛ばした。
「ぐへぇぇ!」
玄太郎は成すすべも無く巴に投げ飛ばされ、反撃も出来なかった。
「巴さん、是非俺と勝負していただけますか?」
「おや、アンタは?」
「俺はブルーマフラー隊隊長、剣崎です。よろしく頼みます」
これはかなり面白い対決になりそうだ。
剣崎隊長は剣道柔道合気道の有段者、武道の達人とも言える人物だ。
この二人の勝負は原作に無かったものなので、俺も決着が想像つかない。