第十八話 巨大獣アビンガー ブキミーダの暗躍 9
俺は今大型コンピューターに映っている二つの映像を同時に見ている。
どちらもスパイドローンからの映像で、片方は機動要塞ドグローンから見た巨大獣アビンガー対鉄巨人イチナナの戦いと、もう一つは北原未来要塞ベースでのケン坊(三島長官)によるガッダインチーム脱出劇だ。
巨大獣アビンガーが両肩のソーサーシールドをイチナナに向けて投げた。
「イチナナ、受け止めるんだ!」
「ラージャー……」
イチナナが両手でソーサーシールドを受け止めた。
アビンガーはそれを必死で鎖を引っ張って取り戻そうとしている。
「アビンガー! どうした、そんな相手弾き飛ばしてやれ!」
バルガル将軍は自らが出撃出来ず巨大獣に命令をするだけの今の状態が歯がゆいようだ。
まあ今は巨大獣バルバルは大規模修理中なので仕方ない。
――さて、一方の北原未来要塞ベースはどうなっているだろうか……。
ケン坊は愛用の鉄モップを持ち、まずは龍也の部屋に向かった。
「坊主、まだ食事の時間じゃないだろう、ここは立ち入り禁止だ」
「立川軍曹、ここを開けさせてもらうぞ!」
「何!?」
「悪く思うなよ!」
ケン坊の鋭い槍(?)さばきが防衛隊員の後頭部を直撃した。
「みね打ちじゃ、安心しろ。命に別状はない」
いや、モップでみね打ちって……。
隊員を気絶させたケン坊はマスターキーで軟禁されていた龍也の部屋に入った。
「お、ケン坊じゃないかよ。どうしたんだ?」
「話は後だ、急いでここを出るぞ!」
「お、おいっ、ちょっと待てよ!」
龍也は私服のままケン坊に連れられて外に出た。
その後、龍也とケン坊は玄太郎の部屋に行き、彼を連れて部屋の外に、その次に流、千草、竹千代の順に助け出した。
「いたぞっ! 全員捕らえろ!」
「ここはワシに任せてお前らはすぐに表に行け、青木大尉が待っている!」
「え? 姉さんが!?」
「話は後だ! 急げ、時間が無い」
ガッダインチームが外に向かうと、そこには青木大尉の姿のミザーリンが待っていた。
「話は後よ、早く乗り込んで!」
「わかったよ、渚さん」
「姉さん、頼む」
ミザーリンの操縦する輸送機は戦闘中の横浜目掛けて北原未来要塞ベースから飛び立った。
「ふう、いくらこの身体が若いとはいえ、この数は結構こたえるわい」
「一体どういうつもりだ! ケン坊隊員」
「お前は……剣崎隊長!」
「ケン坊隊員、お前は上官に逆らった……よって俺がお前を懲らしめる!」
「ほう、ワシと戦うか。相手になってやる!」
剣崎隊長とケン坊(三島長官)は一対一で戦った。
お互いの力は五分と五分、どちらもが譲らず戦い続け、最後は鉄モップが折れ、銃剣が欠け、素手の殴り合いになっていた。
「隊長!」
「手を出すな、これは男と男の戦いだ!」
バギッ!
最後はお互いが倒れる形でのクロスカウンターで決着がついた。
廊下に寝そべった剣崎隊長とケン坊はお互いがもう動けなくなっていた。
「ケン坊……隊員、お前は上官に、逆らったので……隊員を……除隊…………する」
「剣崎……隊長。ありがとう」
寝転がった二人はお互いのボロボロの顔を見てニッコリと笑った。
「ガッダインチーム、そろそろ到着したか」
「おそらくは……」
そして二人共完全にその場で倒れ、救護室に連れて行かれた。
――一方、イチナナが奮戦していると、遠方から何か迫ってきた。
「あれは、ガッダインチーム? いや、違うわ! イチナナ、気を付けて!」
「ラージャー……」
『ブレインサマ・イチナナハッケン、イチナナハッケン。コウゲキ、カイシ』
アレは!? 鉄巨人イチナナの敵ロボット、ハリケーンマシンだ!
巨大な空飛ぶ扇風機みたいなロボットで偵察用兼全体攻撃ロボット、ハリケーンミサイルで周囲を巻き込むミサイルを乱発するヤツだ。
「イチナナ、ハリケーンマシンより目の前の巨大獣を優先して」
「ラージャー……」
イチナナがガッダインの代わりに巨大獣アビンガーと戦っている。
そこに現れたのは――巨大頭脳・ブレイン総統――の作り出した破壊ロボットハリケーンマシンだった。