第十八話 巨大獣アビンガー ブキミーダの暗躍 7
巨大獣アビンガーが完成した。
両肩の巨大ソーサーもいい感じに仕上がっている。
「おお、ブキミーダ殿、これは良い巨大獣ではないか!」
「これはこれは、バルガル将軍殿、もうお身体はよろしいんですか?」
「うむ、いつまでも吾輩が休んでおっては兵士達に示しがつかん。これくらい骨にひびが入った程度で休んでられぬわ」
バルガル将軍が俺に質問をしてきた。
「なあ、ブキミーダ殿よ。笑わないで聞いてもらえるか?」
「おや、バルガル将軍殿、一体どうしましたかな?」
「実は……恥ずかしい話なんだが、吾輩は子供に負けてしまったのだ」
まあ、あのケン坊の中身の三島防衛長官に勝てる奴なんてこの世界に誰がいるのだろう。
「それだけならまだしも、なんと……あのシャールケン様もその子供に負けたのだ……地球人にまさかあんな強いヤツがいるとは……とてもではないがこんな話、誰にも報告できんからな」
そりゃあ報告のしようが無いだろう。
ダバール星人最強の軍人二人が地球人の子供相手に二人共負けてしまったなんてお笑い種にすらならない。
「悪かったな、ただのボヤキだ。吾輩もたまにはこんな事を言いたくもなるもんだ。だが流石にこの話はみどりさんにもするわけにはいかんからな。信頼できるブキミーダ殿にだけ話させてもらって気分が楽になったわい」
マジで原作とは大きく流れが変わっているもんだ。
ブキミーダ相手に――吾輩が一番宇宙で信用できないのがキサマだ!――と言っていたはずのバルガル将軍が俺に悩みの相談をしてくるくらいなんだから。
そしてそのブキミーダは防衛軍の三島防衛長官の中に入ってガッダインチームを私物化しようとしている。
その計画を阻止するための方法としてはスパイドローンで聞いたミザーリンとケン坊(三島長官)の作戦を成功させる必要がある。
バルガル将軍はもう出撃準備が出来ているようだ。
シャールケン提督は本星のデスカンダル皇帝に何かを言われているらしく、今は謁見の間には誰も立ち入り禁止だ。
多分今後の基地司令降格の話が進んでいるのだろう。
だが、本来の十八話のように俺がわざわざグレートシャールケンに細工をして出撃不能にするつもりはない。
さて、シャールケンはこの後どう動くのだろうか。
「ブキミーダ殿、それでは吾輩はドグローンで日本に向かう。後の事は頼んだぞ!」
「バルガル将軍、ご武運をお祈りしております」
バルガル将軍は機動要塞ドグローンに巨大獣アビンガーを載せ、日本を目指した。
その直後、入れ替わるようにミザーリンが小型艇で戻ってきた。
どうやら変装は解いていないらしく、彼女は青木大尉の姿のままだ。
「ブキミーダ様! 大変なことが分かりましたっ! わたくしの手に入れた情報によると――なんと、あの地球防衛軍の三島防衛長官は真っ赤なニセモノだそうです!」
「えぇ!? それは本当かぃ!!」
俺はわざと今知ったようなふりをした。
「三島防衛長官がニセモノだって……それじゃあ本物はどこにいるんだ?」
当然俺は先程のケン坊とミザーリンの会話を聞いているので内容は全部知っている。
「本物は……別の場所に居ます。ですが、今はそれをお伝えすることは出来ません。ただ、本物の三島防衛庁長官は地球とダバール星の戦いを一日も早く終わらせたいと言っておりました」
「そうなのか。それでは俺達も一日も早く戦いを終わらせるようにしなくてはいけないな」
「はい、ブキミーダ様。それではわたくし、ガッダインチームを助け出す為にまた日本に戻りますので、これで失礼します」
ミザーリンは俺に報告を終わらせると、再び日本に向かうと言った。
「ちょっと待ってくれ、これを持って行って欲しい」
「ブキミーダ様、これは??」
俺がミザーリンに渡したのは、超小型の通信機搭載コンピューター付きカメラ……つまり今でいう簡易式タブレットだった。