第十八話 巨大獣アビンガー ブキミーダの暗躍 4
ケン坊の中の三島長官と、ミザーリンが変装した地球防衛軍の青木大尉。
本編では直接会話の無かった二人が二人きりで応接間で話があるとの事だ。
まあこの二人の会話、そんなに問題は無さそうだが……一応念の為確認しておこう。
俺は昆虫型スパイドローンを応接室に潜り込ませ、本棚の本の間に隠れさせた。
少し待っていると、ケン坊が現れ、掃除を始めた。
マズい、本棚に居る事がバレると叩き潰されかねない。
こうなったらこの手だ!
俺は昆虫型スパイドローンを本の中に潜り込ませた。
何故それが出来るか、実はこの応接室の本棚、スイッチを押すと宇宙船マグネファルコンのコントロールルームへの入り口が開くようになっていて、スイッチの内側の部分は空洞になっているのだ。
これはガッダイン5大百科に載っていた図解宇宙船マグネファルコンで知った情報だ。
この情報のおかげでこのスパイドローン、ケン坊に見つからずに済んだ。
ほっ、助かった。
ケン坊はお茶を用意し、自分は下座に立ち、ミザーリン(青木大尉)の到着を待った。
「失礼します、青木大尉……入ります!」
「こんにちは、青木大尉殿」
「こんにちは、ケン坊くん」
ミザーリンは応接間のソファーに座り、ケン坊の用意したお茶を飲んだ。
「美味しいわ、アナタ……才能あるのね」
「いいえ、それほどでもないです」
二人の表情が真剣になった。
これはひょっとすると、いきなり本題に入るつもりか?
「ケン坊くん、入口のドアのカギ、閉めてもらえるかしら。それと窓のカーテンも」
「わかりました」
さて、通常の人ならこんな所で綺麗なお姉さんと可愛い男の子、あまり人に言えない展開でも想像するかもしれないが……この作品は健全なお子様向けロボットアニメだ。
間違ってもそんな同人誌的展開にはならない。
これから始まるのは、この時系列における違和感への質問だろう。
「それで、ケン坊くんの知りたいことって……何かしら?」
「青木大尉殿。貴女は一体誰だ? ワシの知る限り、防衛軍に青木大尉という女の士官はいない。実際にいるのは男の青木曹長だ」
「あら、坊や。何故防衛軍に青木大尉がいないと言い切れるのかしら? 一般人が防衛軍の隊員の名前を全部把握しているというのかしら?」
ケン坊は愛用の鉄モップの柄をミザーリンに向けた。
「お前がそれを知る必要は無い。答えろ、お前は何者だ? ワシのこの槍術、敵司令官も追い払った腕だ。出来るだけ女性に傷はつけたくない。正直に答えてもらえるかな?」
「どうやらアンタ、ただの子供じゃなさそうね。アンタこそ誰なの?」
ミザーリンはミザーリンで懐から銃を取り出し、ケン坊の姿の三島長官に向けている。
「本当は弟みたいな子供に銃を向けたくないけど、アンタがわたくしの敵なら……撃つしかないわね」
「ほう、撃てるものなら撃ってみろ。お前にその覚悟があるならな!」
パァンッ!
ミザーリンが銃を撃つと同時に、ケン坊は鉄モップの柄を正面に立ててしゃがみ、銃を受け止めた。
「もらった!」
「えっ!?」
ケン坊の鉄モップはミザーリンの足元をすくい、彼女は転倒し、その上にケン坊の姿の三島長官が覆いかぶさる形になった。
「くっ!」
「話してもらおうか、お前は一体何者だ?」
「ふ、わたくしの負けのようですわね。アナタこそ、何者なの? とても普通の子供とは思えないわ」
二人の対決は、ケン坊の中の三島防衛長官の勝利に終わった。
「お前が本当のことを言えば、ワシも教えよう。だが、とても信じられん話だと思うだろうがな」
「こんな子供に軍人のわたくしが負ける事の方がよほど信じられませんわ」
まあ勝てるわけがないのも仕方ない、三島防衛長官は本編で何度も前線に立ってダバール兵を返り討ちにした凄腕の達人だ。
「一つだけ言える事がありますわ、わたくしは貴方がたの敵ではありません」
「ほう、ワシらの敵では無いと?」
ミザーリンの話が始まった。