第十八話 巨大獣アビンガー ブキミーダの暗躍 3
「くっそー、あのヘタクソども、オレのダインジェットに傷を付けたら許さねえぞ!」
龍也が窓から外を見て防衛軍の兵士達によるガッダイン5の合体テストを見ている。
「こちら草津中尉、ダインジェット、問題無し!」
「こちら熱海中尉、同じくダインボンバー、問題無し!」
「こちら、別府大尉、ダインビークル、異常なし」
どうやら防衛軍の兵士達が押収したダインマシンのテストをしているようだが、アイツらそんな名前だったのか。
原作ではほんのモブで一瞬の出番でしかなかった防衛軍の軍人、この名前……ひょっとして監督、温泉行きたかったんですか?
「こちら道後大尉、ダインパンツァー、問題無し」
「こちら鬼怒川少尉、ダインクルーザー、燃料タンク異常あり」
本来このテスト、問題無し、で終わるはずだったのにどうやらあの軍人達は慣れていない操縦で何処かをぶつけてしまったらしい。
「鬼怒川少尉、合体に問題はあるか?」
「いいえ、特に問題はありません!」
防衛軍の軍人達は全員が統率されたタイミングで全員が叫んだ。
ガッダイン5の合体コードは五人同時の音声入力と脳波の一致でロックが解除されるのだ。
「「「「「レッツ、ガッダイン!」」」」」
防衛軍の軍人達による合体練習が始まった。
ダインボンバーとダインパンツァーが合体する。
だが、シャフトが出たところでタイミングがずれ、ダインボンバーとダインパンツァーの結合部分がぶつかってしまった。
「ウワァ! こちら、熱海中尉、実験は失敗です!」
合体するタイミングを間違えてしまったダインマシンは、その後もダインビークルとダインクルーザーのニアミス、ダインジェットの不具合で頭部が変形したまま合体しようとして、全機合体失敗で海に落ちてしまった。
「あーあ、何たるザマかね。アレでよくおれ達の代わりが務まると思ったもんだな」
「あー、見ていて歯がゆいですたい!」
「やめてーっ、お父さんのダインマシンッ、そんなに乱暴に扱わないでーっ」
ガッダインチーム全員が窓の外の合体失敗を見て、それぞれの思いを叫んでいる。
だが、軟禁されている以上、ガッダインチームは防衛軍の兵士に見張られていて、外に出る事が出来ないのだ。
おや、誰か来た……アレはケン坊だ。
どうやら軟禁された各部屋の入り口から食事を提供する為に来たらしい。
「兵士の皆様、ご苦労様であります!」
「おう、代々木博士の見習い小僧か。そこから入れ」
ケン坊の姿の三島長官は、仕事をしている兵士の顔を一瞬見た上で部屋に入って食事の提供をした。
どうやらケン坊が食事当番を引き受けたのは、防衛軍の兵士の誰が誰かを見極める為だろう。
三島防衛長官は彼が現場指令だった時、部下だった兵士達の全員の顔を覚えていたという。
だから彼は食事の配給係を率先して出てきたのか。
「おや、ご苦労様。どう? 状況は」
「はっ、青木大尉殿、特に異常はありません!」
「青木……大尉? はて、ワシの覚えておる限り……青木という男の隊員はおっても防衛隊の士官に青木という女士官はおらんかったはず……」
俺はケン坊の独り言をスパイドローンで拾った。
このスパイドローンの収音能力の高さは口笛や独り言でも拾えるレベルだ。
「あら、坊や。ご苦労様」
「は、はいっ。青木大尉……殿でありますね、ご苦労様です」
「可愛い坊やね。頑張ってね」
「は、はいっ! あの、青木大尉殿に……お聞きしたい事がございます。後程、時間を頂けますでしょうか?」
おや、何か話が急転してきたぞ。
「わたくしに聞きたい事? いいわよ、後で応接間に来ていただいていいかしら。一人で来てね」
「は、はいっ。よろしくお願い致します!」
ケン坊の姿の三島長官と地球防衛軍の大尉に変装したミザーリン、これが初のコンタクトというべきなのだろうか。
さて、この二人だけの話し合い、一体どうなるやら。