第十八話 巨大獣アビンガー ブキミーダの暗躍 2
北原未来要塞ベースが実は大型宇宙船マグネコンドルだと知って、ガッダインチームの全員が驚いていた。
まあそれもそうだろう。
原作を見ていた俺でも、この北原未来要塞ベースが地響きを立てて空中に舞い上がるシーンは鳥肌ものだった。
北原未来要塞ベースが大型宇宙船マグネコンドルとして浮上するのは三十七話だ。
この話でシャールケン提督がグレートシャールケンでガッダイン5と最後の戦いに挑むが、その救援と、第三次要塞侵攻作戦阻止の形でマグネコンドルは浮上する。
だが今この時点でこの事を知っているのは、俺と三島防衛長官の姿のブキミーダくらいのものだろう。
計画としては聞いていても、剣崎隊長は実際にマグネコンドルが浮上するシーンを見たわけでは無い。
となると、三島の姿のアイツがまた何かいらない事をしてきそうではある。
おや、あれは防衛軍の輸送機?
今頃になって防衛軍が駆けつけても遅いっての、もう戦闘は終わった後だ。
だがどうも様子が違うようだ、防衛軍は北原未来要塞ベースのスタッフに向かって銃を突き付けている。
「皆様、申し訳ありませんが動かないで下さい。三島防衛長官からお話があるそうです。我々は戒厳令を伝える為にここに来ました」
何だ何だ? これは原作とは展開が違うぞ……。
指令室の大型モニターのテレビ電話に巨大な三島の姿のアイツの顔が映った。
「キサマら。ワシが防衛長官の三島だ。今からその基地は我々防衛軍の指揮下に入った。よいか、ワシの命令に従え。逆らう事は許さん」
「三島……防衛長官、一体どういう事じゃぞい?」
「キサマは……代々木博士か。言った通りだ、これより防衛軍がガッダイン5及び、北原未来要塞ベースを管理する。現状のガッダインチームはこれより無期限の自室待機、外出禁止だ!」
「オイ待て、ふざけんなよ! 誰の許可があってそんな事を決めやがった!?」
「ワシだ。ワシは地球防衛軍の極東支部司令官だ」
それを言われては実も蓋も無いだろう。
しかしおかしな流れになって来たもんだ。
本来のガッダイン5大百科に載っていた十八話は……。
シャールケン提督が北原未来要塞ベース侵入に失敗したと知ったブキミーダは、秘密裏に誰かと連絡を取った。
その相手はアクラデス指令とデスカンダル皇帝だった。
彼はもう見込みがないと思ったシャールケンを見限り、ダバール星の権力者に媚びて次の立ち位置を確保しようとしていたのだ。
デスカンダル皇帝はブキミーダに対し、アクラデス指令到着まではお前が陣頭指揮を取れと伝えた。
その間、シャールケンには専用ロボを与え、そのロボのテストと称して実質の指揮権を握らせないようにしろと言ったのだ。
ブキミーダはわざとグレートシャールケンに細工をし、完成したグレートシャールケンのテストをシャールケン本人にやらせて事故を起こさせる。
負傷で救護室に運び込まれたシャールケンは医療と称し、実質軟禁状態にされ、シャールケンを助け出そうとしたミザーリンもブキミーダの罠にはまり、奇岩島から追い出されてしまう。
邪魔者のいなくなったブキミーダはバルガル将軍への命令をシャールケンからと伝えて巨大獣アビンガーで出撃させた間に奇岩島基地のセキュリティ権限を全て自身のものとしてしまい、基地を掌握した上で次の基地の統治者になるアクラデス到着の下準備を始める。
といった感じの話だ。
この話、全体的に作画レベルが低く、さらに言うならば前半はほぼ総集編だったので、ストーリー自体はほぼ後半だけにまとまっていて話が薄かった。
だがそれも仕方ないかと、丁度この話から監督交代だったので引継ぎが上手く行かなかったのでこうなってしまったというわけ。
この話から監督が皆殺しの浜野からロマン路線の長富監督に交代したのだ。