第十七話 巨大獣ゾゲルル シャールケンの怒り! 7
巨大獣ゾゲルル。
全身ミサイルで武装した四脚移動型巨大獣。
何というか一番近い形は、以前ネットで見かけたようなキモい四足歩行輸送ロボットに近いというか、――太陽の戦士ザグザム――に出てきた多脚移動型戦車ウォーカーガンナーに近いというか、まあようは四角い身体にミサイル詰込みマックスキャパシティの四つ足移動型ロボットというところだろう。
ミサイルの詰込みはここではやらず、外に出してから詰め込んだ方が良さそうだな。
ここで作るのは開閉式ミサイルコンテナをハチの巣状に詰め込める穴開き状態の未実装型だろう。
ちなみに本編のブキミーダがこの巨大獣ゾゲルルを作った際には、自らは安全なシェルターの中から指示して地球人の奴隷達にミサイル詰込み作業をやらせていた。
何度も誤爆し、大勢の犠牲の上に成り立ったのが血塗られた巨大獣ゾゲルルだったのだ。
――だが、俺は絶対にそんなド外道な事はやらない。
むしろ協力させてほしいと言った兵士達に、――制作作業中は危ないからここに近寄るな!――と言ったくらいだ。
それならわざわざこんな危険極まりないミサイルの塊の巨大獣を作らなきゃいいじゃないか、と言われそうなところだが……下手に本編と違った行動をすると、それはそれでまたあの三島長官の中のブキミーダが本編以上にえげつない事をやらかしかねない。
それなら本編の動きをなぞりつつ、出来るだけ犠牲者を少なくするやり方が一番確実というべきだろう。
「ブキミーダ様、何かお手伝いする事ありませんか?」
「ミ、ミザーリン。いつの間にここに? ここは危険だから誰にも立ち入り禁止と言っておいたのに……」
「アナタって優しいのね。そんなとこが好きよ。でも、水臭いじゃない、わたくし達は素敵な仲間なんですから。困った時には助け合うものでしょ」
「そうだぞ、ブキミーダ殿、どうやらシャールケン様に怒られてしまったようだが、吾輩もこの体たらくで申し訳なかった」
この流れ、本編とは真逆だな。
本編ではこの三人、いがみ合うことはあっても決して助け合う事は無かった。
それが今は三人が力を合わせて地球征服の為に出来る事をしようとしている。
いや、地球征服は元々地球人の俺の本音としては実現させたくないんだけどな……。
だが今の立場上そうとも言ってられない。
だったら一日も早く戦争を終わらせてダバール星人と地球人の戦いを終わらせた上で、ダバール星の人工太陽の暴走を止めるのが一番最良のエンディングだと言えるだろう。
このエンディング、【ロボットシミュレーションゲーム】での――宇宙伝説ガルディオス――の三十年かけてようやく実現した地球救済エンディング並みの難しさだ。
宇宙伝説ガルディオスは最終回でガルデバーン星人のバックラー総統が放った超新星爆弾での地球マントル活性計画でマグマが噴出した地球が火山の爆発で滅亡するシーンで――終――の一文字で終わった伝説の怪作だ。
映画版ではその後生き残った人達の事を描いていたが、それでも結局地球が未来の侵略宇宙人ガルデバーン星人の母星であるG-1星だったという内容を伝えただけの救いの無いものだった。
それをようやく本編で救えなかった地球を救ったのが【ロボットシミュレーションゲーム】に参戦した宇宙伝説ガルディオスだった。
幻の必殺技、ガルディパルサーが日の目を見たのもこのゲームだった。
このゲームに出てきたガッダイン5ルートがシャールケン提督生存ルートのあるゲームだったのだ。
――つまり今の俺が実現しようとしているのがその、ガッダイン5グッドエンディングルートの再現というわけだ。
だからあまり下手な動きをすると本来の話がメチャクチャになってしまう。
その為俺は侵略者側として出来る事をするのみだ。
だが出来るだけ犠牲者は出したくない。
その際には改心したミザーリンは非常に役に立ってくれるので、彼女に頼むのも一つの手だな。