第十七話 巨大獣ゾゲルル シャールケンの怒り! 5
さて、そろそろ俺も――ラゲンツォ(仮)――の設計図を作っている場合じゃないな。
こちらも本格的に動かないと、まあシャールケンを助けてやりつつ、後任のアクラデスにも下手にすり寄るのではなく中立的なイメージでありつつも有能で信頼できるキャラを演出するべきだな。
まあシャールケンが今後ロボットで出撃するためのグレートシャールケンの調整をしてやるか。
しかし、まだ宇宙ポッドも宇宙船も到着していないので、出来るとしたら、ラゲンツォ(仮)に付けるつもりだった高周波ブレードをシャールケンソードに追加パーツでくっつけられるようにしておくくらいか。
この高周波ブレード、ダバール星人の技術なら製作可能……というか、マジでブラックホール重粒子以外はこのダバール星人の技術を使えばラゲンツォ(仮)が作れてしまうかもしれない。
ブラックホール重粒子は俺の考えた架空の粒子だが、鉄巨人イチナナの必殺技、グラビトンブラストが実際に重粒子を使った必殺技なので、イチナナの設計図やブラックボックスも確認する事が出来れば、ラゲンツォ(仮)の重粒子問題は解決する。
ってマジですごくね!? 子供の頃の夢だったロボット技術者に形は違えど本当になる事が出来た上、厨二病で作った黒歴史ロボを本当に作る事が出来る可能性があるんだから!
まあそうは言っていても、今のオレは技術職の幹部って立ち位置なので、組織の仕事の方が優先だ。
だがそれが後々の自分のやりたいモノ制作につながるんだから文句は言うまい。
さて、グレートシャールケン到着後にすぐに高周波ブレードが実装できるように下準備しておくか。
……というより早くエリーザ様達帰ってきてくれませんか?
このままだとエリーザ様達より先にシャールケン提督の方が到着してしまうよ……。
――世の中、物語は悪い方に悪い方に進むものである……。
結局エリーザ様達の帰還より先に、シャールケンの方が奇岩島基地に到着してしまった。
「皆の者! 余が到着したというのに、なぜ出迎えがおらんのだ!?」
「シャールケン様、ご到着お待ちしておりました」
「うむ、ブキミーダよ、最初に出迎えたのはそちだけのようだな……、バルガル将軍はどうなっておる?」
「バルガル将軍は、巨大獣バルバルで出撃した際に負傷してしまい、現在は治療中で御座います」
まあバルガル将軍の件はこれで問題無いだろう。
「うむ、わかった。だが、ミザーリンはともかく、何故余のおらぬ間に基地司令代理を任せたエリーザまでもがここに居らぬのだ!?」
――うわー、一番言われたくない事言われてしまった!
「エ、エリーザ様は……統治後の後学の為に、地球人の文化を調べる為に……今、お忍びで出かけておりまして……もうすぐ帰ってくると思われるのです」
「ブキミーダよ! お前がいながら何勝手な事をやらせておるのだ! もしエリーザに何かあればキサマ、ただで済むと思うなっ!」
あーあーあ、シャールケン提督激おこだよ……。
だから早く帰ってきて欲しかったのに……。
「聞いておるのか! ブキミーダ!!」
「は、はいぃー! 聞いて、聞いておりますっ!!」
頼む、早く戻って来てくれー。
さもないとマジで四十三話までどころか今のこの状態でシャールケンにオレが処刑されてしまうー。
「ブキミーダよ、余は最近のお前の事を見直しておったのだぞ、それが何だこのザマは! 余はお前に対する見方をもう少し変える必要がありそうだな! オイッ!」
「も。申し訳ございません……シャールケン提督」
「もうよい、キサマの顔など見たくも無い、さっさと失せろ!」
「ひいいいいぃぃー!」
俺がもうどうしようも無いピンチだった時、ようやく助け船が入った。
「お兄様、ご到着なされたのですね」
「お、おおおー、エリーザではないか、無事だったのだな」
「はい、ブキミーダがわたしに後学の為と言いながらお兄様が来るまでの間自由に出来る時間を作ってくれたのです。護衛はミザーリンがいましたので問題ありませんでした」
「おおそうか、ブキミーダよ、怒鳴って悪かった。部屋に戻ってしばし羽を伸ばすがよい。ご苦労だった」
――ほっ、これでどうにかようやく、首の皮一枚つながったか……。