第十七話 巨大獣ゾゲルル シャールケンの怒り! 3
「エリーザ様、やりたい事とは……?」
「大丈夫です、そう時間はかかりませんから」
この流れ、ひょっとしてエリーザは龍也に告白しようというのか?
それだと一年後の番組の――獣将ダイノス――みたいなロミオとジュリエット展開になりそうだな……。
まあガッダイン5大百科によると、その話は長富監督が本来考えていた話の流れなので、それはそれでアリなのだろうけど……。
「わかりました、それでは一時間後ここに戻って来て下さい。わたくしとマーヤはここの岬で待っていますから」
「はいはーい、エリーザ様ー。行ってらっしゃーい」
コレ絶対マーヤちゃん話の流れ分かってないよね。
まあミザーリンがここで待てと言えば待ってるだろうけど。
俺の予想通り、エリーザ様は龍也の元に走った。
「龍也サン、少しお話が……」
「エ、エリさん? 話って……何だよ?」
「達也っ。私あっちの方に行ってるわねっ」
千草が空気を呼んで場所を離れた。
どうやらエリーザ様の気持ちを理解したのだろう。
だがその時の千草の表情は何とも複雑なものだった。
龍也とエリーザ様は少し離れた岩陰の自然の洞窟の入り口に来た。
どうやらここでエリーザ様は龍也に告白をしようと言うのだろうか……。
「龍也サマ。実は、わたし、どうしてもお伝えしたい事があるんです」
「エリさん、突然どうしたんだよ?」
「達也サマ。これから話す事……決して誰にも言わないでいただけますか?」
「あ、ああ。エリさんがそう言うなら誰にも言わないぜ」
エリーザ様は龍也に飛び掛かるように抱きついた。
これは間違いなく愛の告白だろうな……。
――だがそれをスパイドローンで見ている俺って、邪魔者なんだろうかなー。
「達也サマ……わたし、貴方をお慕い申しております。ですが……それは決して許されぬ事……」
「エリさん、一体どうしたんだよ!?」
「達也サマ……実は、実はわたし……兄がいるのです」
この流れ、やはり――獣将ダイノス――の話と同じだ、まあ脚本家が同じなのでこういう話の展開はあってもおかしくない。
という事は、エリーザ様は兄がシャールケン提督だと伝えるのだろうか?
「そうか、お兄ちゃんがいるのか。それでオレをお兄ちゃんみたいに思ってくれているってわけだな」
「そうではありませんっ!」
「え? 違ったのかよ。オレ、お兄ちゃんってキャラじゃないのか」
龍也よ、お前も空気読めないキャラだな。
この流れで兄がいるなんて言えば少し察しの良い人ならロミオとジュリエットを想像すると思うけど。
まあ少年院帰りで学の無い龍也にそれを求めても無理ってもんか。
「わかった、つまりエリさんはダバール星人のせいで生き別れてしまった兄さんをオレに当てはめてたってわけだな。安心しろ、オレがエリさんの兄さんを見つけ出してやるから!」
「違います。そうでは、そうではありません……」
ダメだなこりゃ。
どう考えてもロミオとジュリエット的な、――兄が敵だ。という告白も、エリーザ様本人が伝えたい龍也への思いもどちらも伝わらなそうだ。
「じゃあどういう事だよ、エリさん?」
「実はわたしの兄は……シャー……」
「おーい、誰かいるのかー? ここで花火をやろうと思ったんだけどよー」
ガンテツ、よりによってこのタイミングで現れるか? コイツ。
「おー、ガンテツさん達、いいとこに来たじゃん、花火か。楽しそうだな。どうだい、エリさんもやらないか?」
「っ……もう、もういいですっ!!」
「え、エリさーん?」
オイオイオイ、龍也よ、こりゃどう考えてもエリーザ様の心を傷つけるの当然だろうに……。
まあコイツは女心なんてわかるわけないからな。
走っていくエリーザ様とすれ違った千草が声をかけた。
「あっ。エリさんっ、どうしたのっ」
「何でも、何でもありません! 放っておいて下さい」
そう言い放ち、エリーザ様はミザーリン達の待つ岬まで泣きながら走った。