第十七話 巨大獣ゾゲルル シャールケンの怒り! 1
「大月隊員、どうしてここに?」
「代々木博士に聞いたら、剣崎隊長たちがこの三角島にいると言ってくれたんです。だからボクは動けるようになったイチナナに頼んでここに来たんです」
なるほど、確かにイチナナの待機時間はグラビトンブラストを撃って十七時間後だ。
昨日の巨大獣バルバルとの戦いから換算すれば今は大体十八時間といったところか。
「大月隊員、助かった。俺達を拾ってもらえるか」
「はい、剣崎隊長、ちょっと待って下さい」
そう言うとフジ子は手を伸ばして不時着したヘリをイチナナに命令して掴んでもらった。
彼女の持っている腕時計、あれがイチナナとの通話をする装置だ。
俺も昔、親父の時計を手に付けて――イチナナ、イチナナ。応答してくれ!――ってやったもんだ。
剣崎隊長とケン坊はヘリに乗ったままイチナナの手の上に乗せられた。
「さあ、皆さん。帰りますよ」
「ちょっと待ってくれ、大月隊員。一度下ろしてくれないか?」
「え? どうしたんですか??」
「ちょっと……やる事があるからな」
フジ子が何だかよく分からないまま、ヘリを地面に降ろす。
すると剣崎隊長がニッコリと笑い、ヘリの奥から何かを取り出した。
「さあ、お前達。これがやりたかったんだろう。持っていけ」
「これって……! ひょぉー! やるじゃん、剣崎隊長」
「コラコラ、あまり無駄口叩くとさらに訓練を増やすぞ」
なんと、剣崎隊長がヘリの奥から取り出したのは数名分の釣竿だった。
「この三角島近辺は良い魚が取れる場所なんだ。お前達もやってみるといい」
なんともシュールな光景だ。
海の中に立ったガッダイン5の腕の上に座ったガッダインチームが釣竿で魚を釣っている。
そんな横にフジ子が現れ、ジュースを配った。
「皆さん、お疲れさまです。ジュースをどうぞ」
「え? ジュース?? こんなのどこに??」
「イチナナの中にあったんです。以前買っておいたジュース、冷蔵庫の中にあったからよく冷えてますよ」
ロボットの中にジュース? まあ鉄巨人イチナナ本編でもあったシーンだ。
イチナナの中には自動キッチンがあり、フジ子が頼むとケーキやお菓子、ジュースを用意してくれる。
どうやって作っているのか、そこまで考えるとキリが無いのでやめよう……。
昔の作品の謎の一つだ。
まあ、ガッダインチームはどうにか魚を釣ろうとしたが、全然釣れないようだ。
それに対し、剣崎隊長は次々と魚を釣り上げている。
「ちぇっ、隊長は良いよな、何でそんなに釣れるんだよ?」
「でもこっちのケン坊くんも凄いよ、さっきからずっと釣れて大量だよ!」
「竹千代くん、魚釣りはフナ釣りに始まり、フナ釣りに終わると言われている奥の深いものなんだよ」
「何だかケン坊くん、お爺ちゃんみたいなこと言ってるね」
結局ガッダインチームで魚の釣れたのは流一人だけで、それも小さなの一匹だった。
「あーもーやってらんねェ! 流、超電磁ワイヤーを出してくれ!」
「え? 龍也、お前一体何をするつもりなんだ!?」
流はわけもわからず、龍也に頼まれて電源を切った超電磁ワイヤーを用意した。
「みんな、ガッダイン5に乗ってくれ。隊長達は少し離れてくれますか」
「お前、一体何をするつもりなんだ……? まさか!?」
龍也が電撃を止めた超電磁ワイヤーを何重にも張り巡らせた。
その形は大型の網のようになっている。
「あーらよっと! 超電磁アミでござーい」
「お前! 何考えるんだー!?」
「ほらよっ、こんなに捕れたぜ。マグロに小さなクジラまでいるぜ」
龍也のとんでもない行動に対し、剣崎隊長だけでなくガッダインチームの全員が呆れていた。
この様子を笑っていたのは離れた場所で通信を聞いていたエリーザ様とマーヤちゃんだったみたいだ。
そしてガッダイン5と鉄巨人イチナナは大漁の魚を抱えて北原未来要塞ベースに帰還した。