第十六話 巨大獣アジャール 三つ首の魔竜を砕け 7
「やいやいやいやい、よくも好き放題やってくれたな巨大獣! この借りはノシを付けて返してやる!」
「達也、あまり馬鹿な事言ってるとまた隊長にどやされるぞ」
「うるせー、訓練が怖くてガッダインに乗れるかってんだ!」
龍也は巨大獣アジャール目掛けて思いっきり飛び上がった。
「喰らえ、きりもみドリルキック!」
ダインビークルの先端をドリル状にしてのキックを片足に重心を集めた飛び蹴りだ。
このキックは巨大獣アジャールのひび割れた甲羅を砕いた。
「なななな、何だとッ! コレがガッダインの本当の力だとでも言うのかッ!?」
ダンダル軍務卿が焦っている。
まあ俺達全員があれだけあーだこーだ頑張っても勝てないガッダイン5相手にぽっと出のヤツが勝ったら番組として終わってしまうし成り立たないんだけどな。
まあ今回のダンダルの敗因はガッダインの情報不足でいきなり攻め込んできた事だな。
これでアイツも懲りるだろう。
まあせいぜいデラヤ・ヴァイデスに戻ってアクラデスに怒られる事だな。
物語の流れ的にはそろそろシャールケン提督が地球に向かっている頃だろう。
……って、マジヤバくない?? シャールケン提督がここに来た時にエリーザ様いなければ烈火の如く大激怒確定だ。
――頼むから勝ってくれ、ガッダイン5。
さもなくば俺の死亡フラグが再び迫ってくるんだ。
「達也さん、あの首三つをどうにかしないと、このままじゃジリ貧ですよ!」
「達也さんっ、剣崎隊長さんがこのままじゃっ……」
「分かってる、とにかくあの首をやっつければいいんだろ!」
龍也は原作通りにアジャールの氷の首に向かって飛んだ。
そこから一気に時計回りに旋回を開始、首に攻撃をさせながらグルグル回り始めた。
「鬼さんこちら、手のなる方へ」
「ガギャアオオオオンッ!」
巨大獣アジャールは龍也の作戦通りに動かされ、首をグルグル回しながら炎、雷、吹雪を吐き続けた。
「あッ、アレはッ!? 巨大獣アジャール、よせッ、止まれッ! マズいッ、マズいぞッ!!」
ようやくダンダルにも事の重大さが理解できたようだ。
龍也達ガッダインチームの行動に振り回された巨大獣アジャールは三つの長い首が全部絡まり、解けなくなってしまった。
「プッ、カッコわるー。アハハハハ」
「達也、余裕見せてる場合じゃないぜ! 一気に決めてしまえ!」
「わかった、行くぞ! 超電磁ィ……ウェエエーブ!」
決まった! 超電磁ウェーブだ。
「アジャール、マズいッ、退避だッ、退却するぞッ!」
ダンダルが叫んだがもう遅い。
ホールドされ、身動きの取れなくなった巨大獣アジャールはそのまま超電磁ウェーブに押し流され、風穴の開いたままひっくり返って三角島の岩に刺さった。
「超! 電磁スマァアッーッシュ!!」
「アジャアアアールゥゥウッ!」
ドガァアアーン!
巨大獣アジャールは三角島の一部を吹き飛ばしながら大爆発を起こした。
「よし、お前らよくやった!」
「やったぜ、剣崎隊長」
「うむ、お前達は立派に戦った! 全員褒めてやろう」
この強化合宿中、一度も龍也達を褒める事の無かった剣崎隊長が龍也達ガッダインチーム全員を褒めていた。
だが、事態は少し深刻そうだ。
どうやら先程巨大獣相手に無茶をしてオトリを引き受けたヘリが故障し、飛べなくなってしまったようだ。
「ガッダイン5もエネルギーギリギリでヘリを運ぶだけの余裕は無いし……」
「仕方ない、ここにヘリを置いていくか。帰ろう、帰ればまた来れるから」
剣崎隊長とケン坊は三角島にヘリを残し、ガッダインの手に乗って帰ろうとした。
――その時!
「おーい、皆さん無事ですかー?」
「あ、アレは鉄巨人イチナナのフライトモード!」
そうか、イチナナの待機時間が終わったのか。
鉄巨人イチナナに乗ったフジ子・ヘミングウェイが三角島に到着した。