第十六話 巨大獣アジャール 三つ首の魔竜を砕け 2
本来の十六話は……。
ケン坊の父親が漁の最中にとんでもない怪物を見た。
それは、三つ首の魔竜だった。
船の乗組員達が全員アレは三つ首の怪物だったというが、漁村の人達は見間違いだろうと言ってまともに相手をしなかった。
だが、これは何かあると思った代々木博士はガッダインチームに出撃させ、三つ首の魔竜がいたという海域を調べた。
そこに居たのは三つ首の竜ではなく三つの首を持つ巨大獣アジャールだった。
アジャールを指揮していたのはバルガルでもミザーリンでもブキミーダでもなかった。
果たして、この人物は一体誰なのか?
謎の人物によって指揮される巨大獣アジャールはガッダイン5を苦しめるが、苦戦の末、ガッダイン5は超電磁ウェーブを使いアジャールを動けなくし、超電磁スマッシュを海底掛けて叩き込み倒した。
ケン坊の父親達の言っていた事が嘘でなかったと分かり、ケン坊の父親達は安心して再び漁に出れるようになった。
そしてケン坊の父親は、今は亡き息子の事を海の上で思い返していた……。
――といった感じの話だ。
まあこの謎の人物が誰なのか、俺は知っているけど。
だが今の話、何故か鉄巨人イチナナの話に組み込まれたようにガッダインチームが鬼の剣崎隊長の強化訓練合宿に参加する流れになっている。
流石に女子にまで鬼の強化合宿をやらせるつもりは剣崎隊長には無かったが、ミザーリンが青木渚大尉として女子部の強化合宿の鬼コーチ役をやっている。
流石にアチャコは参加していないが、フジ子、エリーザ様、マーヤちゃん、そして千草の四人が地球防衛軍の迷彩軍服に着替えて銃を持って走り込みだ。
一番最年少のはずのケン坊が一番元気がいい。
まあそれもそうだろう、あの中身は最強の軍人三島守人長官なんだから……。
この三日間でどれだけの事をする事になるのやら……。
まあ俺はその間、俺用の最強ロボット、――ラゲンツォ(仮)――の設計図でも描いてますか。
しかしこのロボット、マジでデザインの厨二病っぷりもかなりのモンだが、設定の盛り込み過ぎのぶっ飛び具合が……。
――ベテルス星系で見つかった重金属ベテルニウムを装甲に使い、半永久的なエネルギーを供給可能。
ブラックホールエネルギーを使用する事で収縮砲なる相手を内側から破壊する重力子の塊を撃ち出す。
近接攻撃においても高周波ブレードでどんな敵でも分子ごと断ち切る事で斬れない物体は無し。
――こんな設定を考えた当時の俺を殴ってやりたい。
まあメモ書きとしては残しておくか。
誰もこんな面白可笑しい設定実現できるわけないんだから。
何だよ!? ベテルス星系って……。
当時俺はオリオン座のベテルギウスって名前がカッコよかったので、それで付けた名前なんだが、今見るとこっ恥ずかしいとしか言えない……。
良かった、この時代にオンラインネットワークが存在しなくて。
もしそんなもんが存在したら、俺のこの黒歴史ロボが晒し者になってしまう。
こういうものは一人で作ってるから楽しいんだ。
流石に人に見られたくないので、マーヤちゃんもミザーリンも強化訓練合宿の今ならロボット描きたい放題だ。
「ブキミーダ殿、ブキミーダ殿はおられるか!?」
「こ、これはバルガル将軍殿……何故ここに??」
このタイミングで来室って、ちょっとタイミング悪すぎませんか? バルガル将軍。
「いや、流石にいくら負傷したとはいえずっと寝ているわけにはいかんのでな。そう言えば、先程本星から連絡があって、こちらにダンダル殿が向かっていると聞いたのだ。ブキミーダ殿はその話を知っておるのかと思ってな」
「い、いや。初耳ですわ。ダンダル殿と言えば……確かアクラデス指令の弟君だったかと」
そう、先程の話に出てきた謎の人物、それが番組後半の敵――ダンダル軍務卿――だった。
どうやら彼はもう地球に到着するらしい。