第十五話 巨大獣ジャーゴン 海からの侵略者 2
「ご主人様ー。そんなに見たいならマーヤの見せちゃいますよ。おっぱい」
「わーっ! わーわーっ! やめろ、止めなさい!」
オイオイオイ、ガッダイン5は夕方六時半の健全な時間の作品だぞ。
そんな夜十時以降の――バトルガール9ノ1――みたいなお色気路線作品じゃないんだから、もう少し節度を持って……。
あ、後ろに凄い殺気を放ったミザーリンさんがいるんだけど……コレって修羅場?
しかもメチャクチャニコニコしてるし……これマジでヤバい奴だ。
「あら、ブキミーダ様。楽しそうですわね」
「ま、まてっ! ミザーリン。これは誤解だ」
「あ、おねー様。お帰りなさい」
マーヤちゃんはそう言うといきなりミザーリンにキスをした!
「!?!?!?!?!」
「あれ? おねー様。ミザーリン様はワタシのおねー様ですよね。どうですか、一緒に楽しみませんか??」
「ブキミーダ……様、……アンタ一体このポンコツアンドロイドにどういう教育してるのよぉぉー!!」
あ、これ原作で見たミザーリンの冷徹な顔だ。
溶解人間メイクは無いとはいえ、これはかなり激おこだ。
どうやらあの初期化再設定でのミザーリンのマスター登録はバグになって残ってしまっているらしい。
だからマーヤちゃんはオレの事をご主人様と言いながらもミザーリンもおねー様と言っているのだ。
「これは誤解だ、待って、待ってくれ!」
「誤解もへちまもないわよっ! せっかく人が良い情報手に入れたから戻ってきてあげたってのにぃぃー!」
「わ、わかったから。その手に持ったモノ下ろしてくれませんか??」
――だが説得は無理だった。
「問答無用!」
「ウギャアアアー!」
――俺がどうにか起きあがる事が出来たのは、その日の夕方だった。
どうやら一応マーヤちゃんが看病してくれたらしい。
「おねー様、やりすぎです。ご主人様が誤解だと言ってたじゃないですかー」
「アンタがいきなり胸を出してブキミーダ様に見せてたからでしょ! それよりもそのブキミーダ様の言ってたビキニだのってどういう事なの! 説明してもらえるかしらっ!」
仕方ない、こうなったら原作の流れを伝えるしか無さそうだ……。
「あのな、つまりガッダインチームがこの後しばらく動けないからとロボの修理をしている間に海水浴に来るかもしれないってわけだ。だから俺達もその海水浴場に行く際にビキニを用意しようと思ったんだが、おっぱいのサイズの合うビキニがあるかどうかって話だったんだ」
「あれ? ご主人様、そういう話でしたっけ?」
マーヤちゃん、キミ少し黙ってて……。
「なんだ、そういう事だったのね。でもそれならわたくしの水着も当然用意してもらえるのですね?」
「え? ミザーリン。キミも行くのか?」
「勿論ですわ。むしろわたくしが行かないとブルーマフラー隊の訓練合宿の話が出来ないじゃない?」
ブルーマフラー隊??
――何故その名前が今ここで出てくる?
ブルーマフラー隊は剣崎中佐の率いる防衛軍最強部隊の名前だ。
三島長官とは別グループの地球防衛軍所属部隊で、鉄巨人イチナナと大月フジ子――フジ子・ヘミングウェイ――を護衛する任務に就いている。
彼等の登場も後五話先のはずなのだが……俺がこの世界に入り込んだ事で時系列が色々と変化しているようだ。
まあこの後の流れを考えると原作そのままというわけにもいかないだろう。
「ご主人様ー、ワタシ足が欲しいですー。水着着るのに足無しってのはちょっとー」
「わかったわかった、少し調整するから待ってろ」
「ありがとうございますー、ご主人様ー」
マーヤちゃんが俺に嬉しそうに抱きついてきた。
その様子を見たミザーリンがなんとも複雑な困った表情を見せたが、もう俺は知らん。
さて、マーヤちゃんの足を取り付けてあげるかな。