第十四話 巨大獣バルバル 死の電撃作戦 1
巨大獣ゲゲルルを倒したガッダインチームがすぐに帰還したので、奇岩島の場所はバレないままだった。
これで当分は大人しくできるか。
それよりも千草の心臓疾患の方が気になる。
まああの巨大獣ゲゲルルの攻撃がまるでシェイカーのようにガッダイン5を激しく上下したので、普段ならどうにか薬で抑えている千草の心臓疾患が発症してしまったようだ。
早めに帰還した事で北原未来要塞ベースですぐに治療を受ける事が出来たらしく、千草は今ゆっくり休んでいるようだ。
少し休んでいるガッダインチームに望まぬ連絡が入った。
「ワシだ、三島だ!」
「これは三島長官、一体どうしたのじゃぞい」
「代々木博士、先日の失態はどうなっているのだ!」
先日の失態、それはまちがいなくあの幼稚園バスの件だろう。
「キサマらがボヤボヤしてたからバスが捕まってしまったのだろうが! ワシがあそこで身代わりにならなければあの卑劣なダバール星人はバスごと人質を爆破するところだったのだぞ! 恥を知れ!」
まったく言いたい放題だな、アイツは。
どう考えてもガッダインチームがいたから政府要人の子供達を助ける事が出来たのに、それをアイツは全部自分の手柄としてマスコミには伝えているようだ。
マジで上司にしたくない奴のナンバーワンというべきだな、アイツは。
ほらほら、後ろで掃除をしているケン坊がものすごくやるせない感じだ。
あんな奴に自身の身体を好き放題に使われた挙句、この暴言の数々……そりゃあ本物としては許せないだろう。
しかし今の彼が何を言ったところで、所詮代々木博士の助手見習のケン坊でしかない。
本編で死ぬはずだったキャラの中に入ってどうにか身体を手に入れただけまだマシといったところか。
そうでなければ彼はトコロテン現象で本来の身体から押し出された後、身体も無くどこにも行き場が無かったかもしれない。
今の彼は無力だが、俺はいずれ彼と会わなければいけないような気がした。
その為には下手にダバール星人と地球人の間に大きな亀裂を作るわけにはいかない。
とりあえずバルガル将軍が今は北原みどりさんと良い感じに話せているようだ。
バルガル将軍はみどりさんへのアピールの為に、地球人の捕虜に対して人道的な扱いをしている。
先日三島防衛長官の姿のアイツはダバール星人による地球人への対応が最悪だったとマスコミに伝えていた。
その虐待とも言える酷い待遇は……原作でブキミーダが地球人に行っていた内容そのものだった。
そりゃあそうだろう。
虐待をやっていた本人がやり方を伝えるんだ、その生々しさはひしひしと伝わるだろう。
アイツのせいでマスコミはそれをそのまま地球人に伝えている。
この話を聞いてダバール星人と地球人が仲良くできる未来を考えられる奴ははっきり言ってよほどのお花畑かテレビラジオを知らない世間知らずくらいだ。
このままではアイツの思惑通り、地球とダバールの泥沼の全面戦争が始まってしまってもおかしくない。
それを避ける為には一番確実な方法として、北原みどりさんを無傷で地球人に返す事だろう。
だがバルガル将軍がそれを快く引き受けるかどうかが問題だ。
正直言ってしまえば、今のバルガル将軍はみどりさんに惚れている。
彼女が地球人への待遇を良くしてほしいと言ったので、彼はそれに素直に従っているくらいだ。
だが、その彼女がもし基地から連れ去られたらバルガル将軍は激昂し、地球人へ苛烈な攻撃を仕掛けてもおかしくはない。
三島の姿のアイツならみどりさんを攫い、酷い目に合わせた挙句にバルガル将軍のせいに擦り付けた挙句マスコミを利用して地球人に伝えるような事をしてもおかしくはない。
そんな事をさせた日には、バルガル将軍が力尽きるまで戦い続けるやもしれない。
彼にはそれが出来るだけの彼専用の最強の巨大獣がある。
それが――巨大獣バルバル――だ。