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別の世界ではただの日常です

くしゃみ

作者: 茅野榛人

 ヘックション!!

 この季節になると、花粉症である僕は必ずしてしまう。

 今日は友達と公園で遊ぶ約束をしている。マスクをつけて、顔に花粉を防ぐスプレーをふんだんにかけてから外に出る。しかしマスクもスプレーも、少し症状を軽減するだけでさほど効果はない。僕の花粉症はそれぐらい酷いのだ。

 友達と合流して、早速遊ぼうかとした途端、鼻にむずむずが走った。

 エッキシ!!ヘェッキシ!!

 腕で口を抑えながら思いっきりくしゃみをした。友達の前では生理現象を遠慮する必要などないからだ。

 しかし少し鼻をすすりながら前を向くと、信じられない光景が広がっていた。

「……」

 友達を含め、公園にいたほとんどの人たちが僕をじっと見つめている。公園中に一瞬で沈黙が広がった。

 最初に口を開いたのは友達のMだった。

「おい、なんだよ今の」

「え、いや、ただくしゃみしただけだけど、なんか僕、変なことしました?」

 と、聞いた次の瞬間。

「え!くしゃみ!?」

 公園中の人たちが、気味悪いほど口をそろえてそう僕に叫んできた。

「お前、ちょっとさっきのもっかいできるか?」

 友達のEがそう言いながら、ポケットティッシュを取り出し紙縒りを作って僕に渡してきた。

「え、僕本当にくしゃみしただけだけど」

「いいからはよくしゃみせんか!」

 周りの視線に圧倒され仕方なく鼻に紙縒りを刺してくしゃみをした。

 エップス!!

 カシャカシャカシャピロン

 くしゃみをする僕の姿を、視線を向ける人たちが突然携帯電話で撮影、録画し始めた。そして拍手と歓声が始まった。

「え、ちょっと何だよ、ドッキリ?」

「いやドッキリじゃねぇって、お前、そんな能力持ってたんだな、知らなかった」

「いやだから僕はただ……」

 拍手は次第に力を増して行き、僕の声量が敗れた。

 やがて遊びを終えて家に帰ってきて、SNSを開くとなんとこんなトレンドが載っていた。

「恐竜のくしゃみをする男が話題」

 そこには僕が写っていた。ただくしゃみをしている映像なのにコメント欄にはこう書き込まれている。

「この人のくしゃみマジカバザウルスだわ」

「これはニュースコースだな」

「この学生のくしゃみどうなってんの」

 僕は、ただくしゃみをしているだけの映像なのに、バズっているという不思議さと、僕がSNSでバズっているという嬉しさが混じり、何とも言えない気持ちになった。

 次の日、僕は昨日の出来事を引きずりながら学校へ登校した。

(一体昨日は何だったんだ、街ぐるみで僕をはめたのか?でもなんで……)

 その時だった。

 グーーーーーーーー!

 突然牛のゲップのような音が教室中に響いた。

 その音の源は、Mだった。

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