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世界最強の暗殺者にとって、学園無双なんて簡単過ぎる仕事だろう?  作者: 座闇 びゃく
第二章

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三十話 特訓

「っ……!」


 身体を傾けた紅舞の頭上を、銀色に輝く刃が通り抜ける。

 シュッ、と数本の赤い毛が剣技の餌食(えじき)となり宙を舞う。


「『生命焔典(フレイム・エイター)』ッ!」


 敵との距離をバックステップで取った紅舞は、虚空から一振りの刃を顕現。

 まさに生命の根源とも言える火を(まと)った剣が振り下ろされる。

 

「ぐっ……ッ」


 剣先から出現した炎は、地を巡り標的を捉え。

 避けようとした敵を飲み込み、全身を炙っていく。

 

「個人戦の三回戦目にしては、余裕そうだな」


「紅舞さんは、元からランク五寄りの性能をした【ギフト】でして」


「そんな話もしていたな」


 目下で繰り広げられる攻防戦に、会場は熱を帯びたように湧き上がる。

 暗翔と夜雪は、取り巻く生徒たち同様に二階席で観戦していた。

 ただし、二人の肌はベッタリとくっ付いているが。

 暗翔は、先程から呆れたように眉根を寄せている。

 

「兄様に近付く女性は、一切容赦しませんこと」


「それがこの公開羞恥プレイか?」


 わざとらしく夜雪が手を当てた頬には、薄く赤色が広がっていた。


「意外と悪くはありませんでして」


「……あぁ、そうか……」


 言葉を失う暗翔。

 しばらくこの状態で観戦を続けていると、会場内が揃えたように叫び声が重なる。 

 暗翔からすれば、耳障りで仕方がない。

 【ギフト】を解除した紅舞は、こちらの姿に気付き手を振ってきた。


「圧勝ですこと」


「なにか不満そうだな?」


「それはもう。兄様との時間が終わりを迎えている知らせでしてよ」


「……質問した俺がアホだったか?」


 ゴホンッ、と咳払いをする夜雪。

 

「兄様も感じていらっしゃることでして」


「紅舞のなにも変わっていない戦い方が気になるのか?」


「……わたくしたちが真に目指すことは、【ヴラーク】の撃退。しかし、【ギフト】に頼り切った形では」


「今後、命を落とす危険性も考えられるってことか」


 夜雪は、黙って首肯する。

 今の話には一理あると暗翔も考えていた。

 例えば、【ギフト】が効かない【ヴラーク】との戦闘ならば?

 紅舞には仕事の件もある。

 下手に死んでは俺が頭を抱えてしまう。

 ある程度、こちらから手を加えるのも考慮するべきか。


「また難しいことをお考えのようでして」


「どうだろうな」


 紅舞に手を振り返した暗翔は、夜雪に背を向けて足早に去っていった。

  



■□■□




 個人ランク戦結果。

 ランク一 

 準決勝進出――『黒城暗翔』

 ランク四

 第三回戦突破――『一ノ瀬紅舞』


「……」


 暗翔は表示された情報に目を通すと、デバイスごとポケットに入れる。

 朝の日差しも差し込まないドーム状の施設。

 昨日に引き続いて、暗翔は二日連続で競技場へと身を運んでいた。


「それで、今日はどうするのかしら?」


 左右に首を回しながら、紅舞があとを追うように歩んでくる。

 周囲には、生徒たちの談笑声や作戦会議のようなものまで。

 この日行われるランク戦の会場は、また別。

 現在足を着けているこの競技場は、自由に使用を許可された空間である。


「紅舞を鍛え上げる計画の第一段階ってところだな」


「なによそれ……」


 肩を上下にすくめる紅舞に、暗翔は気にする様子なく続ける。


「これから一週間に一度程度、俺と紅舞で【模擬戦闘(ゲーム)】を行う」


 ただし、と付け加える暗翔。


「【ギフト】の使用は不可能とする。これがルールだ」


「そしたら、暗翔の圧勝になるわよ」


「あぁ、当然だな」


「自信ありげに言うところなのかしら?」


「【ギフト】を使わない勝負で、紅舞に負けるわけがないだろ。我ながら」


 軽く言葉を飛ばしながらも、挑発の意味合いを含ませる。

 結果として、紅舞はピンッと額に筋を作っていた。

  

「……言ってくれるじゃないの。もしもあたしが勝ったら?」


「それが紅舞強化計画の終わりとする」


 言いながら、暗翔は既に【模擬戦闘(ゲーム)】の申請を紅舞に送っていた。

 すぐに受諾の表示が浮かぶ。


「それじゃ、いつでもいいぞ?」


「えぇ……先手はもらったわよッ」


 開始の合図が鳴ると同時に、紅舞は赤い髪を後ろになびかせながら低い姿勢で接近してきた。

 訓練を受けていない大人では、目にも止まらぬ動作で。

 

「はぁぁっ……!!」


 紅舞の腰から打ち出された拳を受け流し。

 次いで、鋭い蹴りを片足で防御するように上げ、攻撃を防ぐ。

 暗翔は手を伸ばし紅舞の腕を捉えると、完全に握力頼りの馬鹿力で握り潰す。

 グギッ、と骨の折れる音とともに、紅舞の顔色は苦悶(くもん)の表情を示した。


「この程度か?」


「あっ……」


 抵抗するように向かってきた片腕を払い除けた暗翔。

 紅舞の心臓部分に狙いを定めると、指先一本で突きを繰り出す。

 確実に死を捉えた一手。

 喉から空気が漏れ出た紅舞は、その場に力なく倒れ込んだ。


「手加減もなにもないな……これは」


 【模擬戦闘(ゲーム)】終了の知らせがデバイスから知らされる。

 暗翔は一度苦笑いをこぼすと、恐らく気絶してるであろう紅舞に声を掛けた。


「おーい、大丈夫か?」


「……っ」


 幸い、紅舞は一分も経たずに目を開いた。

 身体の器官を無理矢理破壊する攻撃法だったため、一応心配したのだが。

 それも起き上がれる様子からして、問題なさそうである。

 紅舞は、伸ばされた腕に引っ張られ身を起こした。


「これが【ヴラーク】との戦闘だったのなら、死んでいたぞ?」


「……そう、ね」


 なにか思ったところがあったのか、顔に影を落とす。

 これで自らの実力を再確認できれば紅舞にとって、良い機会だったと言えるだろう。

 一転、暗翔は真剣さからトーンを上げると口元に笑みを浮かべた。

 

「今はまだ未完成でいいんだ。これから実力を付けていく。その前段階が今回の一件だからな?」


 気を落とすことはないぞ、と一声付け足して言う。


「……なら、これからお願いしてもいいのかしら?」


「任せてくれ。最低限、夜雪と戦える程度には鍛え上げてやるからな」


「夜雪さんと……」


「【ギフト】の性能では紅舞が一つ上手だ。ならば、あとはその外堀りを埋めていくことが重要だからな」

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