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聖天海武  作者: 弌樹カリュ
第一部 西海殿の武神官
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5話 契約のおかげ


「分裂って、ねちゃねちゃあってゆっくりする物だと思っていたら、意外と一瞬で起きるもんなんだな」

「キラエラは、光の女神の眷属に一種に数えられる、のじゃ……」



 それが何を指すのかはよくわからない。 

 けど、光の女神には、早さとか俊敏さとかそういう能力もあるようだ。



「キラエラはね、受けた攻撃が多くなると、目があらわるんだよ」


「目……!? あの、木に目ん玉が出てくんのか!?」


「うん、めっちゃきもいでしょ?」


「きめぇな……」



 第六の賢者は、なんというか飄々としている。

 あいつに似て軽そうな静客をしているんだろうな。


 にしても、あの気持ち悪い動きをする木――キラエラに目が出てくるのか。

 想像するだけで気持ち悪い。


 いまにもまして気持ち悪くなるなんて、本当はキラエラは気持ち悪い神様の眷属か何かでは無かろうか。



「親族自体、あまり綺麗なものとは言えないんだけど、静客さん大丈夫なのかな?」


「え……親族って美人とか、かっこいい! とかそんなんじゃないの!?」


「まあ、勿論、神族の中にも、それなりに美しい方々はいるんだけど、きほんてきにしんぞくは異形の種族。

 到底、神とはおもえないような化け物のような見た目をしている神様だって珍しくありません」



……なんと。

それはあまり聞きたくなかったような気もする。



「キラエラは攻撃を受ければ、分裂をする、という性質情、戦う相手としては厄介な相手なのですが……どうやら、ジェスターニ様様も苦戦しているようですね……」



 賢者たちの説明に夢中になって気付かなかった。

 キラエラを相手取るジェスの顔は、少なくとも良いものとは思えなかった。


 ……あんな、偉そうなやつでも、苦戦したりするんだな……



「ジェスターニ様が負ける、とは到底思えませんが、このままでは苦しい戦いになってしまうのは、どうやら避けられないようです」



 第七の賢者の顔も苦しい。

 主人の苦戦に顔を歪めるなんて、飄々とした賢者なんていう認識は改めた方がいいかもしれない。



「静客様、よろしければですが、ジェスターニ様に応戦しませんか?」


「応!」



 ジェスからしてみれば、神官になりたての人間以上神官未満みたいなオレが戦場にいれば、役不足なのだろう。


 だから、態々召喚した賢者たちをオレの周りに置いたのだ。


 けれど、オレも観ているだけ、とはいかない。

 ジェスは目の前で戦ってくれているのだ。

 なのに、オレだけがここで見ているだけなんて後味が悪いだろう。――買ったとつぃても、負けたとしても。


 第四から第八の賢者たちを連れて、一気に降下していく。

 あっという間に、ジェスたちが戦っている標高? 高さ? にまで到着した。



「静客! 何をしてるんだ! さっさと上にのぼれ!」


「ジェス、そんなこと言ってる暇じゃないんだろ?

 そのまんまキラエラにオレが突っ込んだら、邪魔になることは分かってる! だから、法術ってやつでオレが攻撃すりゃあ、いんだろ!」


「……わかった。すっごくすっごく危険だから、絶対に近付かないんだよ!」



 やっぱり。

 ジェスの表情にも言葉にも余裕はない。


 キラエラを分裂させまいと戦っているジェスは、攻撃が溜まりすぎないようにしているのだろう。

 キラエラを攻撃する場所によっても、溜まりやすかったり溜まりにくかったりするのだろう。


 ジェスと賢者たちは場所を選んで戦っている気がする。



「こん中で、一番法術がうまいのは誰だ?」



 賢者たちに聞くと、第八の賢者に視線が向かった。



「オマエか……オレに、戦場で役に立つ法術を教えてくれ。

 あとの賢者は、全員、ジェスに役立つためにジェスの元へ行ってくれ」


「ですが!」


「だって、主人の窮地だぜ? 部下がいかなくてどうするよ!」


「は、御意に!」



 第八の賢者を残して、他の賢者はジェスのもとに駆けよる。

 ……なんだあ、やっぱり主人思いのいい部下じゃねえか。


 さっさと心を切り替えて、第八の賢者に向き直る。



「それで、戦場に役立つ法術にはどんなのがあるのか?」


「そうじゃの……主に三種類じゃの」



 三種類か……攻撃の法術と防御の法術ってのは、なんとなく分かるがもう一種類は?



「武器を作り出す法術じゃの! 恐らくこれが一番、使用頻度が高い法術じゃの!」



 なるほど。

 単純に攻撃したり防御したりするよりも武器を作ってしまった方が楽なのか。まあ、何回でも仕えるしな。



「早速法言を……」


「危ない!」



 誰かの賢者の怒号が聞こえた。

 そちらの方向を向くと、キラエラからツタが伸びている真っ最中だった。



「うわぁ!」


「集え火!」



 颯爽と現れたのは、第六の賢者。

 オレが飄々としてて軽いな、なんて評価をつけていた賢者だった。


 ツタは、第六の賢者が呼んだ火によって燃やされ、そしてキラエラは――

 さらに、分裂していた。



「すまないジェス! オレが不注意だったばかっりに分裂させてしまって……!」


「構わない。ぼくは、すっごくすっごく攻撃性の高い法術でさっさとつぶしてしまえばよかったんだ。早く、愛花から法術を学んで、参戦してくれるとすっごくすっごく助かる」



 どうやら、あまり楽観視出来る状況ではないようだ。

 初心者だから、と戦いに参加することは断られていたのに、今やオファーを受けているのだ。


 相当、ヤバイのだろう。



「第四の賢者、助けてくれてありがとう!」


「礼には及ばないよ」



 すぐに第八の賢者――愛花に、盾を召喚する法ゴンを教えてもらった。



「盾は、どんな攻撃からでも守ってくれる、というわけではない、のじゃ!

 闇の神の眷属と緑の神の眷属、あとは……そうじゃの、翡翠地方の神族からの攻撃には盾は全く効力がないのじゃ!」


「理解したぞ!」



 盾も万能、というわけではなさそうだ。

 そんな時に使うのは防御の法術らしく「風の御代」と呼ばれているらしい、法言を教えてくれた。


 ……微妙に紋章が複雑で、三階も間違えてしまった。


 その後も攻撃の法術や槍を出す法術を学んでいるうちに、キラエラは四体にまで分裂していた。



「愛花、オレはどこで戦えばジェスの役に立てると思う?」


「本体……は、ジェスターニ様が相手取っていますし、第二のキラエラは第一の賢者と第二の賢者が、第三のキラエラは第四から第6の賢者が。第四のキラエラをたった一人で第七の賢者が相手取っているから、第四のキラエラに向かえばいいのではないかの?」



愛花の助言通り、二人で第四のキラエラのもとに降り立った。

オレが近付くとすぐにニホンのツタが向かってきたが、法術出だした「風の槍」で薙ぎ払う。



「第七の賢者、キラエラってどうやって倒すんだ?」


「まず、キラエラは、光の女神の眷属の使者キーラシリーズの幻想獣たちが住処としている場所にございます。

 木の中にいる幻想獣たちを追い出さなければなんとも癒えませぬ」



ふう、第一の仕事は、ケモノを追い払うってことか。



「続いて、幻想獣たちがいなくなれば、火の法術や爆発の法術でキラエラ本体に打ち込み、分裂する前の一瞬で法力を流し込めばいいのですが……眷属のおられないジェスターニ様にそのようなことは今やできませぬ」



 それなんだよなあ……コイツらは、ジェスの眷属ではないのだろうか? じゃあ、何なんだろうか。



「我らは、従順なるシモベにございます。

 あくまでも、ジェスターニ様がご自身の法力で召喚された使い魔であって、その性質はけんぞくとは似て非なるものにございます」



驚くことに第七の賢者は、そうやって説明している間も攻撃の手を休めることはない。

第八の賢者とナイスコンビネーションを見せつけて、キラエラに何度も何度もだけ議を喰らわせている。



「眷属には自分の意思があって、主人というか、上司というかそういう存在から離れられるけど、使い魔にはそれがない、みたいな?」


「その通りにございまする。

 使い魔は主人の法力によって生きながらえる、幻想とも言えぬケモノにございまする」



ふう……使い魔は、主人のもとを離れたら死んでしまうのか。

なるほどな。



「静客様、申し訳ないのでごじゃるが、このような場所でこれ以上の追及は避けていただきたいのじゃ! ここはあくまでも戦場。キラエラは、よそ見をしていても勝てるような相手ではないのじゃ!」



最もな意見だ。

第八の賢者の攻撃に合わせて、俺も攻撃を繰り出してみるが、どうも威力はイマイチだ。


第七のけんじゃが攻撃を仕掛けたとたん――キラエラの動きが止まった。



「もしかして、キラエラに勝った!?」


「いえ――――――これは、海岸の瞬間にございまする」



 開眼。

 ああ――目が開くのか。


 その様子を眺めていると、だいななのけんじゃも題はいtの賢者も攻撃を止めていた。

 今、攻撃したら反撃が強い、とかなのか?


 ざざ、と何かが破裂するような音がして、一瞬、視界が光に包まれると、キラエラの中央に大きな紫の一つ目が生まれていた。



「気持ち悪い、とかじゃなくて、不気味だな……」



 到底、幻想のケモノとは思えないような、神のケモノとも思えないような、おぞましい化け物の姿に言葉が漏れてしまった。


 開眼後のキラエラの攻撃力は増していた。

 そして、これまでの攻撃が効かない、と言う事はなかったが、効きにくくなっていた。



 オレはひたすらにツタを薙ぎ払い、第七の賢者は攻撃をぶっ放す。そして、第八の賢者が七を守る、という形でどんどん、戦況は変化していった。


 分裂するよりも先に法力をぶっこむ。

 そう、第七の賢者が教えてくれたので、それを実践しよう、というわけである。


 最も、この賢者たちとジェス、オレの中で、法力が余っているのはオレぐらいだろう。法力の環には、まだまだ法力が残っている。

 武器の作成や攻撃に法力が使われたと言っても、それはほんの一部で、全く目減りしていないのが現状だった。



「第七っ、今からぶち込むぞ!」


「了解にございまする」



 キラエラが灰色がかって来たころが勝負の瞬間。

 そう教わった通りの色になって来た。


 第七の賢者、第八の賢者両者がキラエラから離れていったのを確認して、キラエラに近付いていく。


 このキラエラには、幻想獣が少ない――と思っていたが、実際は、第七や第八がキラエラ内部で倒していてくれたのだろう。キラエラの穴の部分には、ケモノの死骸が詰め込まれていた。


 オレは右手をキラエラにつけ、法力を流し込む。

 灰色の瞬間になったキラエラは、攻撃力が鈍り、分裂に力を咲くために、攻撃をほとんどしてこなくなる。


 ―――――と言っても、ものの十秒ほどの間だけだ。


 法言を唱えるわけでもなく、ただただ法力をぶち込んでいく。



「おらっ!」



 法力の環が淡い青色に光輝いたとき、キラエラが――爆散した。



「うぉおおおおおおおおおお! さすがにございまする、静客殿(さま)!」


「おつかれなのじゃ!」



 第七、第八の賢者にねぎらわれて、無事にオレのキラエラ討伐一回目は終了した。

 ―――いや、そういうわけでもないか。

ぬぉおおおお!

快進撃? を見せた静客とジェス次は西海殿へ行きます。

七夕に関連して星っぽいワードいれようとか思っていたのに昼ですし。出てきませんし。


次回は、戦利品と西海殿へ、です!おたのしみに~

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