24話 神殿からの使者
ルルメヌォットの堪忍袋の緒が切れた。
明らかに前怒ったときよりも更に進化していて、怖い。
(オレを捕まえてくれているシンの手が動いた気がするんだけど、きのせいだよな……)
そこからのルルメヌォットの快進撃はすごかった。
一発法術で火を放てば、黒いもやはたちまち姿を消す。
かと思えば直ぐに体を取り戻し、ルルメヌォット相手にこわしていく「もや」を吐き出していく。
ルルメヌォットは華麗にそれを避けていたが、対象物を失ったもやは街中にあたり、周囲の被害はそれは目も当てられないほどのものだった。
がれきが、道が壊れていた。
けれど幸いなことに、負傷者も逃げ遅れた人も誰一人もなく、黒いもやの討伐は終了した。
神殿から神官が来ることになっており、それまでの間、がれきの撤去を手伝うことになった。
「あいつ、苦しんでた――」
静客が切り出した。
人影の黒いもやは終始、叫んでいた。
不幸が降りかかって来た現実に耐えきれない、と言わんばかりのその様子に胸が痛くなっていた。
「黒いもやの人間なんて、って思っていたけれど、何よあんなの。アタシとロロちゃんの二人がかりでも倒すのに時間がかかちゃった。法具に慣れているアタシたちなら、って過信したわけでもないのに……」
「それだけ相手が強かったってことであろう? シン殿も静客殿も逃げ遅れた人々の支援、感謝する。機会を狙って術を放っていたことにも気付いていたぞ」
「そうか……」
呆然としていて気返事だ。
三十分もしないうちに神官を引きつれて住人が返って来た。
「ここに事態を知っている者はいないか。話を聞こう。って、なんでここに神官が――ああ。この前来たばかりの新人か? 神殿のいざこざで中に入ることが許されていなかったのか」
「そんなオレたちの話はいいからよ。なんで三十分も時間がかかるんだよ! 神殿のいざこざなんて街の住人にとってはどうでもいいことだろうが! 優先されるべきは、信徒たちの命じゃねえのかよ!」
「これはこれは匂って仕方がない」
下人神のにおいがして叶わない。




